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こんにちは!こうちゃです。
第7話になります。 注意事項は第1話をご覧下さい!
今回平和なドヴァは居ません!結構バチバチしてるかも…1部暴力表現もあります。苦手な方注意です⚠️書いている間胸が痛かったのですが、ハピエン予定なのでそこはご心配なく…!安心してご覧下さい🎶
「い…いくらなんでもおかしい…!」
「なんや、また例の弟の話なん?」
呆れ顔で焼きそばパンを頬張るトーニョの肩を掴んで揺さぶる。
「だって…!先週だけならまだしも今週も無理とか…そんなことある!?」
「俺様トイレから帰還だぜ〜!!…って、まだ弟と喧嘩してんのか?」
ギルが突っ伏す俺を見て瞬時に理解したあと憐れむような目をしながら肩を組まれる。余計に惨めになるからその目はやめて欲しい。
「別に…喧嘩してる訳じゃないけどぉ…」
「じゃあ嫌われたのか!!」
「ギル、そんなはっきり言ったら可哀想やで」
「もうお前らきらい……」
ズルズルと机に突っ伏すと、アントーニョがコロッケパンの袋を開けながら口を開いた。
「弟、もう中3やろ?そろそろ独り立ちの季節ちゃう?」
「うちの弟は中2だけどもう独り立ちしすぎてて悲しすぎるぜ!」
「別に…アーサーは独り立ちしてると思うけど…」
アーサーは生徒会の仕事だって責任もってやるし、頭も良いし、家事だって料理以外は全て自分でこなせる。独り立ちという点に関しては心配するところはほとんどない。
「ほんならそんなに心配する必要あらへんよ」
アントーニョがへらりと笑ってコロッケパンの最後の一口を放り込んだ。
「…そうかなぁ…そうだといいんだけど…」
「あ、思い出したぜ!昨日めっちゃ美味そうなラーメン屋見つけたんだ!フランも来るだろ?」
「…あぁ…うーん……」
「今日都合悪いん?」
「いや…全然大丈夫」
「ほなええやん!行こうや!」
にこにこと楽しそうに笑うトーニョとギルを見て俺も自然と顔がほころぶ。この2人と馬鹿みたいにはしゃいで遊ぶのは本当に楽しい。最近は自分の食費しかかからないせいか、いつもより少し重い財布を持って学校を後にした。
「じゃあまた明日な!」
「またな〜!」
「じゃーねー!」
それぞれ別れの言葉を告げて帰路に着く。ギルが七味唐辛子をひっくり返して全部ラーメンに入ったこととか、トーニョがめんまを追加しまくってめんまだらけのラーメンが出てきた事とか、今日の面白かったことを思い出して笑う。
「…あ〜…楽しかった…」
こんなに自由に放課後の時間を使えたのは初めてだった。スマホを開いてもアーサーからは何も来ておらず、もしかしたら本当に大丈夫なのかもしれないと思う。逆に今まで干渉しすぎていたのかもしれない。
「ふーんふふーん〜♪」
なんだか気分が良くてスキップしながら鼻歌を歌う。我ながら大分浮かれているが、夜道だからきっと誰にも見えない。そう思ってもっと大きな声で歌おうと息を大きく吸い込むと、前の方に人影が見えて慌ててスキップを止める。もう11時近い時間なのに人がいるなんて、と目を凝らすとその特徴的なペリドットが現れた。
「…アーサー…?」
そう声をかけると人影はビクリと跳ねてその場で止まった。やっぱり、と思いつつ近づこうとかけ出すとアーサーはくるりと方向転換して走り出した。
「えっ、ちょ!アーサー!?」
あからさまに避けられてギルの嫌われたんじゃね?という言葉が頭をよぎる。いやいや、そんな訳ないと頭を振ってアーサーを追いかけるために俺も走り出した。
「ちょっとアーサー!!待ってよ!!」
いつもなら既に追いついている頃のはずなのに、今日は距離が縮まらない。そのくらいアーサーが死にものぐるいで走っているのだろう。そんなに嫌われてしまったのかと心当たりを探すが、なんにも思いつかなかった。
「…っはぁ…も、アーサー!止まれって!」
静かな住宅街に俺の叫び声が響き渡る。それでもあいつは止まらなくて、何をそんなに意地になってるんだと怒りが湧いてきた。もう一度叫ぼうと口を大きく開いたところでアーサーの身体が前にぐらつく。
「あ〜!もう!!ばかっ!」
大急ぎで足を動かしてなんとかアーサーの身体が地面に着く前に支えることが出来た。
「…っ離せよ…!!」
「はぁ!?なんなのその言い方!助けてやったのに!」
「助けてくれなんて頼んでねぇ!!」
手を勢いよく振り払われて、そんなのいつもの事なのに、なんだか今日はだめだった。
「……ああそう、そんなに俺が嫌なんだ」
アーサーの背中がビクリと震えてそのライトグリーンの瞳が揺れる。止めなきゃと思うのに、怒りと悲しみが増幅して、酷い言葉が止められなかった。
「俺はっ…お前の世話なんて本当はしたくなかった!お前の世話なんか、しなきゃ良かった!!」
そう言ってしまった後に、はっと我に返る。違う、違うんだ。こんな、こんなことが言いたかったわけじゃ…
「……フラン、シス」
泣かせてしまうと思った。泣き虫なアーサーなら、きっと俺が酷いこと言ったら泣くだろうと思ってた。でも、違った。
「…ごめん」
いつもは滅多に謝らないくせに、アーサーは諦めたような目をして、謝罪の言葉を口にした。ガツンっと鈍器で頭を殴られたような衝撃が走る。
「…っアーサー!ごめん、そうじゃなくてっ…」
何か言葉を発さなきゃと口を開くが、口の中が乾いて声がかすれる。バクバクと心臓が暴れてうるさい。口ごもっていると、アーサーがゆっくりと顔を上げて、今日初めて目が合った。そこで出会った頃と同じように、右頬が赤く腫れ上がっているのに気づく。
「アーサー、それっ…」
「もう、お前には頼らないから」
優しく、でも強い拒絶の言葉にふっと血の気が引く。アーサーに乾いた、貼り付けたような笑みを向けられるのなんて初めてで…身体が動かなかった。アーサーはもう一度微笑んだ後に俺の横を通り過ぎて走って行く。追いかけることなんて、当然できなかった。