こんにちは!こうちゃです。
第8話になります。 注意事項は第1話をご覧下さい!
とんでもなく🇬🇧が可哀想なことになってしまいました…🫠面倒みの良い🇯🇵と🇨🇳がいます。この2人は寮生で同室の友人設定です。色々ツッコミどころ満載ですがそこは大目に見てください…笑
初夏とは言えど、11時を過ぎると流石に肌寒い。着ていたパーカーのチャックを締めながら夜道を歩く。
「ん〜!やっぱ肉まんは美味いある!」
「こんな夜中にそんなカロリーの高いもの、太りますよ」
「なんでそういう意地悪言うあるか!」
耀さんが拗ねたように頬を膨らませるが、肉まんを食べる手は止まらない。いつも「菊は食い意地が張りすぎある!」とか言われるが、まったく人のことが言えない。若干呆れつつ適当にあしらっていると、前から走ってくる人影が見えた。
「…えっ…アーサーさん…!?」
驚いて声をかけると、アーサーさんは疲れたような顔をしてきく、と私の名前を呼んだ。
「……!その頬…どうされたのですか!?」
最初は暗くて気づけなかったが、近くで見ると右頬が酷く腫れているのが見えた。
「……っ…これは…なんでも、ない…」
いつもの彼なら上手く言い訳をするのに、それもできないとは…かなり重傷みたいだ。耀さんの顔をちらりと見ると、こくりと頷いてくれた。私は彼を刺激しないようにゆっくりと言葉を紡ぐ。
「アーサーさん、実はアイスを買いすぎてしまって、困ってるんです」
コンビニの袋を掲げて、できる限り優しく微笑む。
「良ければ食べるの、手伝って貰えませんか?」
「…お邪魔、します…」
「どうぞ、お入りください」
まるで借りてきた猫のように大人しいアーサーさんを小さなローテーブルの前に座らせる。なにか飲み物をと冷蔵庫を漁っていると、あの、と控え目に声をかけられた。
「……寮生以外が寮に入ったのがバレたら、2人が怒られないか…?」
「ガキがそんなこと気にすんじゃねーある。そもそも、11時以降に外出禁止なのにアイス買ってきてる時点で校則なんて守ってねーあるよ」
心の中で耀さんナイスです!と賞賛しつつアーサーさんの前にティーカップを置く。
「すみません、インスタントですが…」
アーサーさんは小さく首を横に振ったあと、そっと1口飲み込む。ほんの少しだけ強ばっていた目の力が抜けたのを確認した後に、救急箱から消毒液とガーゼを取り出した。
「アーサーさん、その頬、手当しましょう」
「や…これは、本当に大丈夫、だから…」
「わたしが見ていて痛々しいある。早く隠すよろし」
しっしっとジェスチャーをする耀さんにまたしてもナイスですと心の中で呟きながら手当を始める。
「……っ…」
「すみません、少ししみますよね」
できるだけ手早く消毒液で濡らしたあと、ガーゼを程よい大きさにカットしてテープで止める。
「はい、終わりましたよ」
「…あ…ありがとう…すまない」
「いえいえ…さあ、アーサーさん!お楽しみと行きましょうか!」
ローテーブルの上にコンビニで買ってきたアイス4種を並べる。
「どれにしますか?お好きなのどうぞ!」
「……アーサーはともかく、菊も食べるあるか?この時間めっちゃふt…」
「さあさあ!選びましょう!」
都合の悪いことは聞こえないふりをしてアーサーさんに勧める。
「……じゃあ、これ…」
「カリッポ!いいですね…お好きなんですか?」
「よく…わからない。小さい頃に分けてもらって…初めて食べたアイスだから」
懐かしそうに、けれど寂しそうに笑うアーサーさんにそっとカリッポを差し出す。
「私もカリッポにします。一緒に食べましょう…耀さんも食べますよね?」
「……あー、わたしもなんかお腹減ってきたある。1本貰うあるよ」
「ふふ、なんだか背徳感がありますね」
そう言ってアーサーさんに笑いかけると、少しだけ微笑んだあとに
「……菊、耀…ありがとう」
と、呟いた。
「なんあるか、あれ」
アーサーさんがお風呂に入ったあと、耀さんが小声でトントンと右頬を指して尋ねる。
「私だって知りたいですよ…でも、聞くのはまずいでしょう」
「まったく…あの保護者はどうしたあるか!まさか…あいつがやったんじゃ…」
「そんな訳ないでしょう…そんなこと、天地がひっくりかえっても起きませんよ」
「言ってみただけあるよ」
「……今日は、私のベッドをお貸しします。遠慮なさるでしょうが…」
「そこは任せるよろし…でも、菊はどうするあるか」
「耀さんのベッドを借ります」
「いやある」
「言ってみただけですよ。私は床で良いです。そういう文化圏で生きておりましたので」
耀さんは呆れた顔で私を見つめたあと、シャワールームを見てため息をつく。
「菊より不器用な男、初めて見たある」
「耀さん、それ私にも失礼ですよ」
「お早いですね、おはようございます」
「…菊、こそ…早いな」
まだ朝の4時半で、誰も起きていないだろうと思って起きたのに菊がいて面食らう。
「私はいつもこの時間ですよ…よく眠れましたか?」
「……あぁ」
本当は全然寝れなかったけど、緩く微笑んで頷く。
「…俺、もう帰る、から…」
「あら、もうですか?朝食くらい食べていかれてはどうですか?」
「…いや、家に帰って…学校の支度、しなきゃだから…」
我ながら無理のある言い訳だが、菊は何も言わずに頷いてくれた。
「またアイス、食べましょうね」
そう言って優しく微笑む菊にこくんと頷いて靴を履く。
「…きく、迷惑かけて、ごめん…今度、お金返しに来るから」
「迷惑だなんて、そんなっ…」
菊は困ったように眉根を下げる。菊は優しい。だから、その優しさに甘えてはいけない。
「ありがとう、きく」
そのまま言い逃げのようにして、急いで寮を後にした。
そっと、静かに扉を開ける。予想通りあいつはまだ寝ているようでほっと息をついて忍び足で部屋に向かう。授業に必要なものを急いでリュックに詰めて、制服に着替える。
「……はぁ…」
菊にはお金を返すと言ってしまったが、どう工面しようか。昨日だって食費をくれと言っただけでこのザマだ。兄達に頼むかとも一瞬頭をよぎったが、さすがにないなと頭の中で却下する。もう一度だけ、機嫌が良さそうな時に聞いてみるか…そう結論づけて荷物を持って部屋を出た。
「おい、てめぇ、どこほっつき歩いてんだ」
強いアルコールの匂いと、酒焼けで掠れた声。脳みそがガンガン警笛を鳴らすが、俺の身体は固まってしまって全く使い物にならない。
「なんだぁ…?そのガーゼは…!」
ああ、もう、最近はつくづくついてない。
「一丁前に手当なんかしやがって…不愉快なんだよ!!てめぇは!!」
菊につけてもらったガーゼを乱暴にむしり取られる。きっと傷が増えていたら菊は心配するだろうなぁとか、学校で良くない噂が立つかもとか、そんなくだらないことばかりが頭に浮かぶ。
「てめぇは、生まれてこなきゃ良かったんだよ!!」
ただひたすらに痛みに耐えながら、結局最後に頭に浮かぶのはあの腐れ縁で、ああもう、本当に嫌になる。あいつは、お人好しだから。だからしたくもない世話を、嫌だと思いながらずっと続けてきたんだろう。俺は鈍いから、それにずっと気づけずに甘えてしまっていた。
「……ぅ…けほっ…」
だから、もう、甘えるのはやめにしなきゃ。
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