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もう、、最高ですね‼️ 続き待ってます!
恋人になって
・・・・・・・・・・
無一郎は茉鈴のほうを向き、月の光に照らされた彼女をじっと見つめた。
どくん、どくん、どくん……
心臓が大きく速く脈打つ。
深呼吸をひとつし、意を決して口を開いた。
「茉鈴。聞いて。…僕ね、茉鈴のことが好き」
『……えっ…と…』
「もちろん今までも大好きだったよ。でも今は“好き”の種類が違うんだ」
再度深呼吸をして、息を整える。
「僕、茉鈴のことを1人の女の子として好きになったんだ」
『!』
茉鈴が目を見開いた。 じわじわと頬が紅く染まっていく。
「…告白するか迷った。痣が出てる僕は25歳までしか生きられないし、何より鬼殺隊の剣士だから。いつ死ぬか分からない身でしょ。でも、誰かをこんなに好きになったの、生まれて初めてなんだ。伝えずにいたら死ぬまで後悔しそうで。だったら、自分の気持ちを誤魔化すのはやめようって思ったんだ」
『無一郎くん……』
顔が熱い。身体も熱い。指先まで拍動を感じる。
「茉鈴はこんなに綺麗で可愛くて、ものすごく優しくて、料理もお裁縫も上手で。君のことを好きになる男はきっとたくさんいるんだろうなって、いつも考えてた。だけど、それと同時に嫉妬しちゃった。茉鈴には、僕だけを見てて欲しい……」
無一郎がそっと茉鈴の手を握った。
「茉鈴が好き。大好き。どうしようもないくらい、僕は君のことが大好きなんだ」
握った手に少し力を込める。
『無一郎くん、ありがとう。すごくすごく嬉しい。…私もね、いつからかなんて分からないし自覚したのはつい最近なんだけど、無一郎くんのことが1人の男の子として好きだよ』
「えっ!?」
今度は無一郎が目を見開いた。
ますます頬に熱が集まる。
『初めはほんとに家族みたいに思ってた。大好きな幼馴染みで、大事な仲間で、守るべき相手で。……でも、いつの間にか違う好きになってた。無一郎くんはね、私の特別な人なの』
茉鈴が無一郎の手をきゅ、と握り返す。
『…同じ気持ちでいてくれてほんとに嬉しい。伝えてくれてありがとう。大好きよ』
茉鈴が頬を薔薇色に染めて笑った。
それを見て無一郎の胸も熱くなる。
「嬉しい……。夢みたいだ…」
『私も』
顔を見合わせて笑う。
「……茉鈴。もし、今度の戦いで無惨を倒して生き延びることができたら、その時は、僕の恋人になってくれる?…25の歳までしか生きられないけど、残された時間全てを君に捧げるから。僕の命がある限り、君を守ると誓うから」
『…それは嫌』
「えっ…!」
一瞬で全身の熱が引いていく。
『無一郎くんは柱で、きっと最前線で戦うことになる。私も隠だけど、限界を超えるまで戦うことを覚悟してる。今度の戦いで2人共生きていられるとは限らないんだよ』
「う、うん……」
『だから、“戦いの後で生きていられたら”じゃ嫌。無一郎くんさえよければ、今この時から、私をあなたの恋人にしてください』
今度は茉鈴が無一郎の手を強く握った。
先程の“嫌”は自分に対する拒絶ではなかったと分かり、安心したと同時に、無一郎は再び全身が熱を帯びていくのを感じた。
『私だって、無一郎くんのことが好き。心の底から大好きよ。これからもずっと一緒にいたい。無惨を倒して鬼のいない平和な世界になってからもずっと。…早くにお別れしなくちゃいけないのは悲しいし寂しいけど、無一郎くんの命の灯が燃え尽きるその最期の瞬間まで、私に傍にいさせて』
言いながら、茉鈴の目から涙が零れ落ちた。
片方の手を離し、濡れた頬を拭う。
無一郎もつられて泣きそうになる。
「本当に、僕でいいの?」
『私は無一郎くんがいいの。無一郎くんじゃなきゃ嫌』
まだ涙の残る瞳で真っ直ぐにこちらを見つめてくる茉鈴。
無一郎は堪らず茉鈴を抱き締めた。
「茉鈴っ…!ありがとう。大大大好きだよ…!」
『うん…、私も…!』
茉鈴もぎゅっと無一郎の身体に腕を回した。
しばらく抱擁して、ゆっくりと身体を離す。
「…改めてちゃんと言うね。茉鈴、僕の恋人になってください」
『はい…!よろしくお願いします』
もう一度、お互いを強く抱き締め合った。
ああ…茉鈴……、あったかい……。
彼女を好きだと伝えたら、茉鈴も僕を好きだと言ってくれた。同じ気持ちでいてくれたのがこんなに嬉しくて幸せなんて。
愛おしくて堪らなくなり、無一郎はそっと茉鈴の頭に手をやり、撫でた。
すると指先に茉鈴が着けている簪の蜻蛉玉の飾りが触れた。
「………」
髪を引っ張らないように注意しながら簪を抜き取る。
スル……
ふわり
簪に巻きつけて留めてられていた為、髪が地毛よりももっとカールした状態で、茉鈴の背中まで下りてきた。
「……!」
髪型が変わるだけでこんなにも印象が変わるものだろうか。
無一郎の胸がまた大きく脈打つ。
『…無一郎くん…?』
「茉鈴……、すごく綺麗……」
ふわ……
無一郎の指が茉鈴の髪を絡め、そして離した。
『…えへへ。ありがとう』
無一郎の言葉や仕草にドキドキしながら茉鈴が微笑む。
「……これ。この簪、今でも着けてくれてたんだね」
『うん。宝物だって言ったでしょ?』
「言ってた。まだ記憶がなかった時にそれを聞いてさ。“大切な人からもらったもの”って茉鈴が言うから、それはいったいどんな相手なんだろうって悶々としたことがあったよ」
『あ、そうなんだ。…13歳の誕生日に無一郎くんと有一郎くんがくれたこの簪…、すごく気に入ってるのよ。私のお守りなの』
あの時のように、茉鈴が愛おしそうに簪を見つめて言った。
「大事にしてくれてありがとう。…向日葵は僕たちにとって特別な花だからさ。どうしてもこの簪を茉鈴にあげたくて」
『うん。すごく嬉しかった。私にとっても向日葵は特別な思い入れのあるお花よ』
向日葵の柄が入った蜻蛉玉を、そっと親指で撫でる。
「……今年の誕生日はまだ記憶がなかったから…。茉鈴の16のお祝い、何もできなかったね。ごめんね。記憶がない頃も僕の誕生日は欠かさず祝ってくれたのに…」
『いいの。自分の誕生日に、無一郎くんの傍にいられるだけでよかったの。だから気にしないで』
そういうわけにはいかない。
「17歳の誕生日はちゃんとお祝いするからね。間が空いた3年の分も一緒に。約束」
『ありがとう。楽しみにしてる。私にも無一郎くんの15歳のお誕生日…、とは言わず、来年も再来年その先もずーっと、いちばん近くでお祝いさせてね』
「……っ…。ありがとう…!」
茉鈴の言葉に、無一郎の胸が熱くなった。
次の誕生日を生きて迎えられるかなんて分からない。でも、茉鈴にはこの先もずっとお互いの誕生日を祝う未来が見えているかのようだった。
「……ね、茉鈴。…口づけ…、してもいい……?」
『う…うんっ…!』
壊れ物を扱うかのように、茉鈴の柔らかな頬にそっと触れる無一郎。
顔が上がる。茉鈴の琥珀色の瞳に、無一郎の真っ赤な顔が映っている。無一郎の浅葱色の瞳にも、頬を紅潮させた茉鈴の顔が映っていた。
ゆっくりと顔を近付けていく。
ドッ…ドッ…ドッ…ドッ…
お互いの鼓動が聞こえてきそうなくらい、心臓が激しく脈打つ。
2人の間隔が次第に短くなっていく。
茉鈴が静かに目を閉じた。無一郎も口づけるその寸前に瞼を閉じた。
……ちゅ………
触れるか触れないかの接吻。でも、そんな微かな口づけでさえ、僕の唇には茉鈴の熱が伝わってきた。
柔らかくて、あったかくて。ほんの少しだけ震えていた。
ゆっくりと顔を離した。それと同時にそっと目を開けると、茉鈴と目が合った。
ほっぺたがお化粧している以上に紅く染まっている。潤んだ琥珀色の瞳が月の光にきらきらと輝いて、いつもよりもっと綺麗に見えた。
「…嫌じゃなかった……?」
『全然。すごく嬉しかった』
恐る恐る聞くと、茉鈴は本当に嬉しそうに笑ってくれた。
『…ね、無一郎くん。もう1回ちゅーして……』
「!!」
“ちゅーして”だって。言葉の破壊力が半端ないよ。
『……あのね、少し前、ここでの稽古を終えた隊士の人から告白されてね。丁重に断ったんだけど、去り際に覆面越しに口づけみたいなことされちゃって』
あ、あいつか。
「…ごめん、その現場…、僕見ちゃったんだ……」
『えっ、そうなの?…あ、でもね、実際その人の口が当たったのは鼻と人中辺りだったんだよね。だから口づけされたうちに入らないだろうと思って』
え、そうだったの?僕がいた角度からは口と口に見えていたから茉鈴の言葉を聞いて驚いた。…あの後部屋で1人で流した僕の涙は一体……。
『“よかった”って思ったのね。…それで、その時ふと、無一郎くんに口づけされたいって思っちゃったの…… 』
「!」
『その人にはね、自分たちは鬼殺隊だから無惨を倒すまでは普通の人みたいな幸せを夢見ることはできない、だなんて当たり障りのないことを言ったんだけど。…でも、その時既に、こうやってぎゅってするのも口づけするのも、無一郎くんとがいいって思っちゃったんだ』
そうだったんだ……。あの時は悲しくて悔しくて仕方なかったけれど、茉鈴はそんなふうに考えていたなんて。“僕とがいい”…、か……。
嬉しくて胸が高鳴る。
『だから…ね、もっとちゅーして…?』
「……っ…」
僕は堪らなくなって茉鈴をぎゅっと抱き締めた。そして、胸から下は密着したまま、もう一度彼女に口づける。
さっきはドキドキし過ぎてほんのちょっとしか触れられなかった唇同士がしっかりくっついて、その柔らかさとしっとりした質感に驚いた。ぷるぷるでふっくらしていて。なんだかものすごく甘い香りがした。
唇を離す。そしてまた茉鈴を強く抱き締める。
大好きで、大切で、愛おしくて、幸せで。
『…もっと』
彼女の言うまま、何度も口づけを繰り返す。
『……もっとして…』
柔らかくてほんのり甘い、茉鈴の唇。
ああ、足りない。もっと、もっと茉鈴と近付きたい。ひとつになりたい。
ちゅっ……、ちゅ、……ちゅぅ……
接吻なんてこれが初めてなのに、次どうしたいか不思議と分かる。
角度を変えて。茉鈴の唇を自分の唇で挟んで。軽く吸って。緩急をつけて。
『……んっ…』
ちゅ……、ちゅぱ…、ちゅっ…、ちゅぅ………
『…っ…ふ、…んぅ……』
茉鈴の細い喉から漏れ出る声が艶めいていく。
『……!!』
舌を入れた。茉鈴は驚いたように身体を強張らせたけれど、それも一瞬で。すぐに僕を受け入れて舌を絡めてくれた。
『…んぅ…っ……、ふ…んん…っ…』
「ん…っ…」
脳が溶けて流れ出しそう。身体の芯も熱く熱くなっていく。
息が乱れる。でも離したくない。離れたくない。もっと、もっと。もっと深く、茉鈴と繋がりたい。
ぷはっ…、と音を立ててようやく唇を離した。
『はぁっ…はぁっ……』
肩で大きく息をする姿さえ色っぽく見えてしまう。
「…ごめん、茉鈴のことが大好き過ぎて、つい…!」
『ううん。…嬉しかった。すごく幸せだったよ』
茉鈴の指先が僕の頬に掛かった髪をそっと退かした。
にっこり笑う茉鈴。とても、とても綺麗で可愛くて。
「茉鈴…っ…!」
大好きな気持ちが爆発して、僕はまた彼女を強く抱き締めた。
『…無一郎くん、世界でいちばん大好きだよ』
そう言って、茉鈴も僕を抱き締め返してくれた。
愛おしくて堪らない。大好きな幼馴染み。大切な僕の恋人。
ドサ……
気が付くと、僕は茉鈴を抱き締めたまま、自分の身体ごと彼女を縁側に押し倒していた。
僕に組み敷かれた茉鈴がじっとこちらを見上げてくる。
『…ぁ……、えっと…無一郎くん…?』
「…………」
戸惑ったような声で話し掛けてくる茉鈴。それさえ愛おしくて堪らない。でも。
「……ごめん…」
ゆっくりと身体を起こし、茉鈴のことも抱き起こす。
「…これより先はいけないや。僕はまだ14だし……」
『……いいよ…?』
「えっ…」
『無一郎くんなら…私…、いいよ…?』
茉鈴の瞳が真っ直ぐに僕を捉える。
「で…でもっ…!……その、…万が一“何か”あったら…」
『いいよ』
静かな茉鈴の声。
『無一郎くんになら、何されてもいい。どんなことでも無一郎くんとなら怖くないよ。初めても…、無一郎くんがいい。……私の身も心も全部、無一郎くんにあげる』
「……っ……!」
再び茉鈴を抱き締める。こんな僕に、なんにも持っていない僕に、そこまで言ってくれるなんて。
滲んだ涙を彼女に分からないようにこっそり拭う。
「……あんまりそういうこと言わないで。理性が保てなくなっちゃう。………でもやっぱり、今はだめだ。茉鈴のこと大事にしたいから。……その…、続きはまた改めて…。それでいい?」
『そっか、分かった。いいよ。私はずーっと無一郎くんのこと大好きだからね』
「うん、ありがとう。僕も茉鈴が大好きだよ」
本当のことを言うと、茉鈴とこの先に進みたい。もっと深く繋がって、身も心も彼女とひとつになりたい。でも、それはきっと今じゃないから。
僕たちはもう一度、お互いを強く抱き締めて、そっと唇を重ねた。
大きな金色の満月が、優しい光を僕たちに注いでくれていた。
続く