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・コミックスの内容を参考にしている箇所があります。
⚠痛いどころではない描写があります。
最終決戦 1
・・・・・・・・・・
晴れて恋人になった僕と茉鈴。
でも、生活は今までと大して変わらない。強いて挙げるならば、ふとした時にぎゅっと抱き締め合ったり接吻するようになったこと。昼間の稽古も夜の柱同士の稽古も続いていて疲れちゃう時もあったけれど、茉鈴と抱擁したり唇を重ねれば、それも不思議とあっという間に解消されてしまった。
稽古の合間に差し入れてくれる梅ジュースも、普段から作ってくれているごはんも、やっぱり僕の恋人が作ったものが世界でいちばん美味しい。
『…ねえ、無一郎くん』
「どうしたの?茉鈴」
ある日、昼の稽古の休憩中に茉鈴から話し掛けてきた。
今は勤務中なので隠の格好をしている。
『なんか最近、誰かに見られてるような感じがしない?』
「えっ」
辺りを気にするように見回す茉鈴。
「いつから?」
『うーん…。ここ3日くらいかな……』
結構最近だけれど、3日くらいその感覚が続いているから僕に聞いてきたのだろう。
「気持ち悪いね。いつも?」
『ううん。お昼間は感じないの。日が落ちて暗くなると見られてる気がするんだよね…』
気にし過ぎかな、と茉鈴が困ったように笑った。
「茉鈴、時々勧がいつも以上に鋭くなるもんね。他の隠は何か言ってる?」
『一応ここで働く皆さんにも聞いてはみたんだけど、分からないって。お屋敷を四方から警備してる人たちも、怪しいものは見てないって言うの』
「そっか……」
夜は鬼に対して警戒心を強くするから。誰かに見られているかもしれないという考えになるのも納得はいく。でも本当にそれだけだろうか。
茉鈴は昔から“何か”を感じることが時々あった。
僕と兄さんが夜、鬼に襲われたあの日も、“泊まっていって”と食い下がってきたし、上弦の伍がこの屋敷を襲撃したあの時も、仮眠中にふと目が覚めて“何か”来ると直感したそう。
『……ねえ、無一郎くん。私ね、なんだか嫌な予感がするの…』
茉鈴の表情は曇ったまま。
『…たくさんの人が命を落とすような。大事な人たちを失うような。…そんなのただの気のせいであって欲しいけど……』
「無惨との戦いが近いのかもしれないね。僕も気をつけておくよ。みんなにも言っておく。茉鈴も気をつけて」
『うん。……あのね、さっきの、見られてる気がする話なんだけどね…』
「うん」
まだ何かを感じるのかな?
『どこからか一点で見られてるんじゃなくてね、…その…、自分を360度、縦からも横からもぐるっと監視されてるような感じなの。だから余計に気味が悪くて』
360度!?
人間を上下左右から囲むように監視することなんてできるわけない。でも茉鈴が感じているものを否定したくない。
『…だから無一郎くんも気をつけて。私の気のせいならそれはそれでいいの。ああよかった、で終わればいいんだから。でも、どうしてもやっぱり見られてる感覚が拭えなくて』
「分かった。僕も周りを気にしとく。教えてくれてありがとう、茉鈴」
『…うん!』
ようやく茉鈴が笑った。いつもの笑顔に安心する。
僕は周囲を一度確認してから、そっと茉鈴を抱き締めて、稽古の続きに戻った。
《襲撃!襲撃!産屋敷邸ガ襲撃サレタワ!!》
茉鈴の話の次の日の夜。柱同士の稽古に出掛けようとした僕のところに、銀子が今まで見たことないくらい慌てて知らせにきた。
刀を差し、大急ぎで屋敷を出る。
『無一郎くん!』
「!茉鈴」
茉鈴が僕を呼び止めた。手には薙刀仕様の茉鈴の日輪刀が握られていた。
『気をつけて』
「うん!屋敷を頼むね!」
『分かった!』
産屋敷邸に向かって全速力で走る。
お館様!どうか、どうかご無事でいてください…!
ドンッ!!!
お館様の屋敷がある辺りで爆発が起きた。火薬と生き物の焼ける匂いが鼻につく。
大急ぎで駆けつけると、そこにはうねうねと蠢く触手のようなものを背中から生やした男がいた。でも大きな棘のようなものに固定されて動けないらしい。
周囲には他の柱と炭治郎の姿もあった。
「無惨だ!鬼舞辻無惨だ!奴は頸を斬っても死なない!!」
悲鳴嶼さんが叫ぶ。
あいつが!?鬼舞辻無惨!?
一斉に仲間が斬り掛かる。
“霞の呼吸・肆ノ型 移流斬り”
僕たちの攻撃が届くその瞬間、無惨がニヤリと笑った。
足元の地面が口を開け、僕らを飲み込んだ。
ものすごい勢いで落ちていく。
何だここは。上下も左右も目茶苦茶。産屋敷邸の周辺に、外にいた筈なのに、室内のように空がないし無数の建物がひしめき合っている。
「うわあぁっ!!」
「ああああぁぁっ!!」
声が聞こえたほうを見ると、鬼殺隊の隊服を着た人たちが僕たちと同じようにこの目茶苦茶な空間を落ちていく。ここに連れて来られたのは柱だけじゃないのか。ひょっとしたら、茉鈴も…!?
茉鈴!どうか無事でいて…!
悲鳴嶼さんも僕と同じところから落とされたようで、2人で行動することにした。その途中、お館様が無惨を倒す為に自らを劣りにして屋敷に爆薬を仕掛け、あまね様やお嬢様2人とこの世を去ったことを聞いた。
お館様…!僕を鬼殺隊に迎え入れてくださったお館様。今際の際の僕の手を握ってたくさん励ましてくださったお館様。今は亡き父のように優しく力強く。あの温かくて大好きな人が、もうこの世にいないなんて。
許せない!許せない!許せない!!
「あいつ…無惨!嬲り殺しにしてやる!地獄を見せてやる…!!」
涙で視界がぼやける。
「…安心しろ。皆同じ思いだ」
静かだけれど、激しい怒りを含んだ悲鳴嶼さんの低い声。顔にはいくつもの青筋が浮き上がっていた。
泣くのは今じゃない。
お館様…!絶対に無惨を倒しますから!見ていてください!
僕は隊服の袖で涙を拭い、悲鳴嶼さんと共に、次から次に周囲から湧き出てくる鬼を一心不乱に討伐していった。
ここはどこだろうか。霞柱邸にいた筈なのに、おかしな空間に連れてこられた。
とんでもない速さで落ちていく中、自分は運よく建物の一部を掴み体勢を整えられたが、それが叶わなかった仲間が何人も、何十人も、地の底に叩きつけられて死んだ。
仲間の死を悼むのは後だ。儚く散っていった仲間たちの為にも、自分は戦わなければならない。
茉鈴は滲んだ涙を拭い、日輪刀を手に、生き物のように蠢く建物をひたすら走った。
「ここは俺たちが食い止めます!柱のお2人は先に行ってください!」
「怯むな!行けーっ!今こそ柱稽古の成果を発揮する時だ!!」
そう威勢よく言い放ち、岩柱と霞柱を送り出したのはいいものの。苦戦を強いられる隊士たち。負傷者もいる。
グアア〜ッ!
気味の悪い液体を振り撒きながら襲ってくる鬼たち。
あ、もうだめかもしれない…!
隊士たちがそう思った次の瞬間。
“霞の呼吸・弐ノ型 八重霞”
“参ノ型 霞散の飛沫”
ズバアアァン!!
ビュンッッ!!
鬼たちを斬り、撒き散らされていた液体も吹き飛ばした1人の剣士。
…いや、背中には“隠”の文字。
『皆さん無事ですか!?』
「!宝生さん…!」
「助かりました!」
『よかった!私が進路を作りますから、皆さんは敵に注意しながら進んでください!』
そう言って一目散に鬼の群れへと突っ込んでいく茉鈴。霞柱の屋敷にいた隠が戦っている。覆面をしているが、稽古の時に見せた凛とした顔と同じだ。
「宝生さんに遅れをとるな!俺たちも続けーっ!!」
「「「おおおおおっ!!」」」
強い!俺たちに稽古つけてくれた時は木剣だったけど、彼女の日輪刀は薙刀なのか。
時透さんと同じ時期に柱候補の話が上がった程強いって本当だったのか!
茉鈴の戦いぶりに呆気にとられながらも進んでいく隊士たちだった。
《カァーッ!カァーッ!死亡!蟲柱・胡蝶シノブ死亡ーッ!上弦ノ弐トノ戦闘ノ末、死亡ーッ!》
《カァーッ!水柱・冨岡義勇、竈門炭治郎、上弦ノ参、撃破!撃破ーーッ!!》
《カアァッ!シノブ、カナヲ、伊之助!3名ニヨリ、上弦ノ弐、撃破!撃破!!》
鴉たちがつけてるあの紙は何?伝達が異様に速い。
しのぶ様……。もうあの笑顔が見られないなんて。
水柱様、炭治郎くん。“意識保てず失神”って。壮絶な戦いだったんだろうな。どうか目を覚まして…!
しのぶ様、カナヲちゃんと伊之助くんが敵にとどめを刺してくれましたよ…!
他の仲間は?蛇柱様や蜜璃さんは?岩柱様は?風柱様は?
無一郎くんは、どこにいるの?どうか無事でいて…!
「おい、そこの隠の女!」
『えっ!?』
「薙刀持ったお前だ!」
この人は誰?なんか気配が違う気がする。
手招きされてそちらに行くと、善逸くんが手当てされていた。
『善逸くん!』
「……………… 」
「とりあえず応急処置はしてる。…いいか、よく聞け。俺は鬼だが敵じゃない」
『!』
「あるお方に頼まれて鬼殺隊の手伝いをすることになった。俺は負傷した奴らを手当して回る。だが戦えない。お前、見たところ強そうだし、俺の護衛を頼みたい」
鬼だけど鬼殺隊の味方?でもみんなを手当てしてくれてるし、嘘は言ってなさそう 。
『…分かりました。しばらく一緒に行動するわ』
「よろしく頼む。強い鬼と戦うことになったらそっちを優先してもらって構わない。俺は愈史郎という」
『私は宝生茉鈴です』
善逸くんを他の仲間に託して、私と愈史郎さんは先を急いだ。彼が負傷者を手当てしている間、それを襲ってくる鬼をひたすら倒す。
広い空間に出た。
そこで僕は上弦の壱と出会った。
獣のような金色の瞳が6つ。腰には刀のような武器を差して、侍のような格好をしている。
これが…上弦の壱……。他の上弦とは比べものにならない。重厚な様。威厳すらある。
刀を握る僕の手が震える。怖気が止まらない。身体が戦闘を拒否している。こんなこと初めてだ。
僕を自分の子孫だと言う上弦の壱。
動揺するな。心を鎮めろ。
弐ノ型と伍ノ型を繰り出すけれど、相手には会話する余裕さえあった。
「なかなかに良き技だ。…霞か…。成る程、悪くない。無一郎。歳の頃は14あたりか。その若さで練り上げられた剣技……。私に怯みはしたものの、それを抑え込み斬り掛かる胆力。流石は我が末裔。血は随分薄くなっているだろうが、些末なこと…。たとえ名が途絶えようとも、私の細胞は増えて残っていた……」
感慨深そうに言う上弦の壱。それがなんだか不愉快に思える。
体温が上がる。脈が速くなる。全身が熱くなる。
「おちょくってるのかな?もし仮に末裔であったとしても、 何百年も経ってたらお前の血も細胞も僕の中にはひとかけらも残ってないよ」
ズズズズ……
あ、この感覚。刀鍛冶の里で戦った時の身体の感覚だ。ということは、今、僕には痣が出現しているのか。
僕は漆ノ型を繰り出した。けれどそれも簡単に躱されてしまう。
「…こちらも抜かねば…、無作法というもの…… 」
そんな声が聞こえた次の瞬間、僕の左手はあっという間に斬り落とされてしまった。
破れた布で腕を縛り、止血する。
“霞の呼吸・肆ノ型 移流斬り”
すぐに次の攻撃を仕掛けたが、自らの日輪刀によって柱に磔にされてしまった。
「ぐっ…!」
あまりの痛さに視界が歪む。
「我が末裔よ…、あの方にお前を鬼として使っていただこう……」
続く