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#怪異
イキリ火の玉
946
お堂は拷問屋敷のある広場に交差している六つの道の一つ、南西に進んだ先にあった。
道は山に続き途中の切り開かれた場所に小さな寺のようなお堂がポツンと建っている。壁は他の家と同じく木製だが屋根はこのお堂だけは瓦で出来ていた。ただ、所々瓦がなくなり窪んでいた。あとは三段の石階段の先に扉があるだけのシンプルな作りのものだ。
「村がなんか綺麗な形をしていますね」
努はお堂を背に村を見下ろしながら言った。
東にあるトンネルから西に向かい拷問屋敷のある広場を通ってその先にある森までメイン通りとでもいう道が一本通っている。東から西までの一本道だ。
村の中央にある広場を起点にバッテンの形でメイン通りより少し細い二本の道が通っていて丁度村を六等分にしていた。
東西のメイン通り、北東から南西の道と北西から南東のサブ通りとすると、その三本の道の間に家や田んぼ、畑、貯水池などがあり、メイン、サブの道を結ぶように細い道がグルリと円を描くように繋がっていた。
「丸い網目の形をしていますね。何だかいかにも捕まえられているみたいな……」
村は広場を中心に五重の円に三本の道で出来ていて丸い投網のような形をしていた。
「家は20軒ほどか。案外少ないな」
梶も努の隣で村を見渡しながら言った。村長の奥原が1人暮らしだったのでもっと多いかと思っていたが、一軒に数人で住んでいることになる。たぶんみすぼらしい下位の村人が何人かまとまって暮らしているのだろう。
「この中も調べておくか」
梶はそう言うと躊躇泣くお堂の正面の扉を開いた。埃が落ち着くまで待ってから中に入ったので努もあとに続いた。
中はガランとしていた。正面の奥に50センチほどの薄汚れた木彫りの仏像があり、両端には巻物や書物が棚いっぱいに積まれている。
「人はいないですね」
努は中を見回しながら言った。梶は書物の中から適当に一冊手にとって中をパラパラとめくった。努は反対側の棚から巻物を一つとって中を見た。クニャクニャとした古い文字で何が書いてあるのかわからない。
「おい、戻るぞ」
梶は何冊か書物に目を通してその中から二冊を努に押しつけるとお堂を出て行く。努も梶のあとに続きながら受け取った書物に目を落とした。
A4ほどの和紙が20枚ほど重なっていて紐で片側を縛っているものだった。表紙も中身も達筆な文字だったがさっき巻物よりかは読めそうだった。
梶は山道を降りると親分たちのいる集会所には戻らず拷問屋敷のある広場に止めていたミニバンへ向かった。努を後部座席に入れて梶は運転席に乗り込んだ。
「これで調べろ」
梶は努のスマホを投げて返した。
「え? はい」
警察に連絡出来るかも、そんな期待があった。梶は車を降りずに自分も携帯電話で何かを調べている。
努は検索するふりをしながらメールを起動する。そして、両親のアドレスを宛名に入れたところで総てキャンセルして消した。
きっとあとで調べられる。そう思ったからだ。例え送信メールを削除しても何らかの方法で調べられるかもしれない。ITの知識のない努としてはまだそんなリスクを冒すわけにはいかないのだ。
「ふぅ……」
一つため息をつくと頭を切り換えた。そう、まずは命令通り頑張って助けを呼ぶのはもっと信頼を得てからにすればいい。どのみち助けを呼んだところでこの村を出られないと意味はないのだ。
努はまず妖怪の名前『アオ』で検索した。妖怪や村の名前を関連付けて調べてみたが参考になるような情報は見つからなかった。アオがあまりにも一般的すぎる言葉だったからだ。
名前はともかく妖怪と生け贄に関することを調べてみるといくつか昔話がヒットした。大まかなストーリーは同じで妖怪に生け贄を捧げていた村に旅のお坊さんや侍、または山伏がやってきて退治をする、そんな話しだ。
「どうやって倒した」
調べたことを話すと梶は携帯電話を見ながら訊いてきた。
「えっと、色々ですね。お坊さんとか山伏は祈祷とか。侍の場合、生け贄の代わりに動物の皮とかで人形を作って血の替わりに酒を入れて酔わせて倒すとか」
「酒呑童子とか八岐大蛇に似ているな」
「あ、そうですね。梶さんオカルトに詳しいんですか?」
「これくらい日本史の雑談やらで聞く話だろ」
「はぁ、まぁ……」
確かにイザナミの話は大人になってからどこかで知ったが、酒呑童子や八岐大蛇は気づいたら知っていた話だ。
専門的に調べたわけではなく聞きかじった知識だけでここまで推測できるのは頭が切れる人だと素直に思った。
次に村について調べたが、これは関係ありそうなものは出てこなかった。チダという呼び名の村はいくつかヒットしたがこの村に関係ありそうな情報はなかった。
不思議な力で村に閉じ込められた云々でも検索したが創作の怪談話が出てくるだけだった。
結局あまり役に立ちそうな情報は見つけられなかった。
コメント
1件
第13話読み終えたよ!村が投網みたいな形してるって描写、めっちゃ不気味で良かった。”捕まえられているみたい”って台詞がゾッとするね…。努がスマホで調べるシーンも、監視されてる緊張感が伝わってきた。この不気味な村、どうなってるんだろう。続きが気になる!