日本国 緊急閣議
会議室は総理の言葉に重い空気が漂う。
国土交通大臣「総理、気象庁から氷塊の正体とデータが送られてきました。」
国土交通大臣は資料を総理大臣に渡す。
総理「…」
国土交通大臣「氷塊の大きさは全長約40メートル。総重量は約70トンにまで及ぶと想定。この氷塊が空から降って来る時のエネルギーは凄まじく…通常の戦車ならスクラップにできると…」
総理「だが…なぜこんな物が急に…」
国土交通大臣「気象庁は重度のオゾン層破壊と地球温暖化による気候変動が原因と想定しました。」
総理は資料を机に置く。外務大臣が総理の隣りに立つ。
外務大臣「総理、既にアメリカ、中国、韓国、ヨーロッパ諸国では気候変動により竜巻や津波が起こり甚大的な被害が出ています。日本も早急に対応策を練るべきかと。」
総理は席を立ち上がる。
総理「分かった…。気象庁に今後日本に上陸すると思われる雨雲を予測し政府に提示するよう伝えてくれ。」
国土交通大臣「了解しました。」
会議室は慌ただしくなる。総理は東京の街並みを眺めながらため息をつく。
総理「はァ…。人間が地球に犯してきたことが…とうとう返ってくるとはな…」
日本海北東部 海上保安庁巡視船 《かや》
乗組員「両舷前進微速ー。」
荒い風が吹き付ける。
乗組員「艦長、国土交通省から通達です。日本海北東部では気候変動により巨大な氷塊が降り注ぐ可能性大。厳重に警戒されたし…との事です。」
海上保安庁巡視船《かや》艦長 田中 雅城
田中艦長「巨大な氷塊か…確か、巡視船むらさめを一撃で轟沈(ごうちん)させたそうだな?」
乗組員「はい。そのようですね。」
田中は艦長席の背もたれにもたれ肘をつく。
艦長「人間が地球にしてきた事が…束になって返ってくるという訳か…」
その時、周囲を見張っていた乗組員が声を上げる。
乗組員「艦長!本艦から二時の方向!漁船がいます!」
艦長「なんだと…」
田中は艦長席を立ち上がりウイングに出る。
艦長「日本本土からかなり離れているぞ…いったい何をしているんだ…」
乗組員「艦長!」
乗組員が指をさす。指先の先には、真っ黒な雲が迫って来ていた。
艦長「あれは…もしや…」
乗組員「艦長!あれがおそらく氷塊を降らせる雲です!早くこの海域を離脱しなければ!」
艦長「まて!それはあの漁船の乗組員を巡視船に乗せてからの話だ!取り取り舵いっぱーい!」
巡視船は海原を漂う一艇の漁船に向かって接近しボートを下ろしさらに漁船に接近する。
乗組員は漁船に乗り込む。
乗組員「海上保安庁です!この海域で何をしているのですか!」
漁師「いや…!急に舵が効かなくなって!」
乗組員「舵が効かない…?」
乗組員は白い息を吐きながら漁師に話を続ける。
乗組員「ちょっと舵のカバーを開けてもらっていいですか!」
漁師「は、はい! 」
漁師は舵のハンドルの付け根に被さっていたカバーを開ける。すると、氷が舵の付け根部分で凍っていた。
乗組員「これは…。水をここにかけましたか!」
漁師「はい!出航前にハンドル周りを掃除しようと思いまして!」
その時、荒い風が吹き付け途端に温度が下がり始める。
乗組員「まずい…雲が迫ってきている…」
乗組員の無線がなる。
田中艦長「漁師をつれて巡視船に戻れ!早く!」
乗組員「了解…!巡視船に向かいます…。ボートに乗ってください!」
漁師「分かりました…。」
乗組員は漁師を連れて巡視船に戻る。
田中艦長「最大船速!この海域を離脱しろ!」
巡視船の両舷が急速に回り始め雲を背に動き出す。
田中艦長「!?」
巡視船の隣りに巨大な氷塊が降ってくる。
田中艦長「まずいっ!速力を上げろ!」
乗組員「ダメです!雨雲の速度の方が早いです!飲み込まれます!」
その時、巡視船が停止する。
田中艦長「何をやっている!」
乗組員「いぇ!急にエンジンが!」
巡視船の船体が急速に凍り始める。
田中艦長「なっ!?」
田中が横を見ると乗組員が凍りつき始めていた。
乗組員「かん…ち…ょ…う……」
田中艦長「クソ…!」
田中の足も凍りつき始め完全に体が凍り始める。
田中艦長「く…そ……が…a…」
吹雪が吹き付け巡視船の周りの海面は完全に凍ってしまっていた。巡視船は完全に凍りつくのであった。
コメント
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今この小説が売られていない事実に打ちひしがれています...🥹 言葉選びが神なんですよもう!!✨