もう逃げ場のない俺を嬉しそうに見て、覆い被さってくる。
やだ、やだ、こんなのやだ。
首を舐められて気持ち悪くて涙が出た、その時。
インターホンが連打され、母親が起きたようだ。
いつも身なりを整えてにこやかに出る。
そして『翔太ぁ、お友だちよ』と猫なで声で呼ぶ。
俺は力の限り壁を蹴ったりして暴れ、ここにいるとアピールした。ヤツは慌ててドアを閉めようとしたが、そこに岩本が現れ、その出で立ちに萎縮して動かなくなった。
俺の無様な姿を岩本が見下ろす。
きっと幻滅されただろう。
💛「行きましょう」
岩本が俺をトイレから出し、担ぎ上げてそのまま家を出る。
人気のない所で一旦テープを外して、『歩けますか』と聞かれたけどホッとして腰が抜けていたので首を横に振った。
岩本におんぶされて、そのまま岩本の家まで運ばれた。
💙「幻滅しただろ」
💛「どうして」
💙「言わせるな、バカ」
岩本は県外から来ていて一人暮らしをしているらしい。
俺の家と同じように整頓されているけど、居心地の良さはこっちの方が格段に良い。
ベッドに横になっているけど、それだけで寝てしまいそうだ。
💛「何か飲みますか」
そう言って開けた冷蔵庫には甘い飲み物がぎっしり詰まっていた。
途端に力が抜けて笑ってしまい、それを見た岩本もまた安心したように笑った。
ちょっと勉強するんでゆっくりしててくださいと言われ、退屈だったので机に向かう岩本を覗きに行く。
タイマーをかけ、問題集の間違えたところをもう一度解いているようだ。
💙「ちゃんとしてんじゃん」
💛「勉強の仕方教えてもらったんです」
💙「へぇ、誰に?」
💛「生徒会長です、こないだの生徒総会の後に」
💙「あぁ…」
品行方正を絵に描いたような、俺とは住む世界が違うあの生徒会長か。
💙「生徒会長と言えば、最近1年のサッカー部のやつと仲良いって噂だけどどうなの」
💛「目黒ですよね、クラス同じです。仲良いというか目黒が生徒会長にぞっこんな感じですね」
俺らと一緒、と岩本がつぶやいた気がしたけど、一瞬目をやったサイドボードに並ぶファンシーな動物の人形に気を取られた。
💙「…へぇ、青春してんなぁ」
💛「俺らもしましょうよ」
💙「見ただろ、あんな家にいて普通の青春なんて」
💛「関係ないですよ」
タイマーが鳴って、岩本が手を止める。
💛「俺、渡辺さんの事もっと知りたい」
💙「知らない方がいいよ」
💛「でも」
💙「しつこい。俺なんていいんだよもう」
頼んで助けてもらったくせに、お礼も言わないどころか悪態をついてしまう自分が嫌になる。
でも、そうしないとズカズカ踏み込まれて自分の心を守れない。
俺は岩本から離れてまたベッドに戻り、頭まで布団を被って全てをシャットアウトした。
コメント
8件
照が勤勉で、なんか、いいわ💛
ん?しょっぴーはまだ照好きじゃないのかなあ。めめあべ楽しみ!!
ひーくんしょっぴーを救ってあげて!!💛💙