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ゆうき あきや
4,132
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#心理描写重視
第134話:大豆ミートと夏野菜の極上無水カレー。凶悪な飯テロの匂いに一千万人が発狂する
神獣シロのお昼寝(チート級の大地の錬金術)によって、一夜にしてジャングルと化した限界集落の休耕田。
そこで収穫されたのは、成人男性サイズの巨大スイカや黄金に光り輝くトウモロコシだけではなかった。
古民家の土間には今、太陽のエネルギーを限界まで溜め込んだ規格外の『夏野菜』たちが、山のように積み上げられていた。
「すごい……! このトマト、赤を通り越してルビーみたいにピカピカ光ってますよ! ナスなんて、私の腕より太いです!」
小春ちゃんが、顔のサイズほどある巨大なトマトを両手で持ち上げて目を輝かせている。
「あぁ。これほどの極上な兵站物資(野菜)が揃ったのだ。これより、部隊の士気を最大限に高めるための『野外炊具1号運用テクニック(大量調理)』を応用した、究極の糧食生産(カレー作り)を開始する」
俺は首に巻いたOD色のタオルをきつく結び直し、調理台の前に立った。
使うのは、超特大の寸胴鍋だ。
本日のメニューは、規格外の夏野菜の水分だけで煮込む『完全無水カレー』。
そしてメインのタンパク源は、もちろん俺の相棒である『大豆ミート(ブロックタイプ)』である。
「よし、まずはベース作りだ。水は一滴も使わん。このルビーのように熟したトマトの水分だけで煮込む」
俺は元・需品科の正確無比なナイフ捌きで、巨大トマト、玉ねぎ、ナス、そして黄金のトウモロコシを次々とカットし、寸胴鍋に放り込んでいく。
最後に、お湯で戻して下味をつけた大豆ミートをたっぷりと投入し、鍋に火をかけた。
グツグツ……。ジュワァァァ……。
鍋に熱が入ると共に、とんでもない現象が起き始めた。
シロの『豊穣のオーラ』をたっぷりと吸い込んで育った夏野菜たちが熱でとろけ出し、強烈なまでの旨味成分が蒸気となって立ち昇り始めたのだ。
そこへ市販のカレールーと、独自に配合した数十種類のスパイスを投入する。
その瞬間。
フワァァァァッ……!!
「うわぁっ……!? な、なんですかこの匂い!!」
小春ちゃんが、たまらず両手で口元を覆った。
暴力的なまでのスパイスの香気。
そこに、ルビートマトの極上の酸味、黄金トウモロコシの恐ろしいほどの甘み、そして大豆ミートから溢れ出す(はずのない)芳醇な脂の匂いが複雑に絡み合い、古民家中に『凶悪な飯テロの匂い』として爆発的に広がったのだ。
『ミャウ(いい匂いね。早く食べたいわ)』
普段はキャットフードしか食べない(設定の)シロでさえ、神秘的な『オッドアイ』の瞳――左目のサファイアブルーと右目の琥珀色――をきらきらと輝かせながら縁側からキッチンへと歩み寄り、鼻をヒクヒクさせている。
庭で待機している体長3メートルの巨大ヒグマに至っては、「グルォォォ……」と鳴きながら、滝のようなよだれを縁側の床板に垂らして正座していた。
キツネ兄弟も、鍋の周りを「ごはん! ごはん!」と踊り狂っている。
ジンバルに固定されたiPhone miniのカメラを通じて、この匂いは直接届かないはずなのに、画面の向こうの一千万人のリスナーたちは完全に狂乱状態に陥っていた。
『あああああああ!! 画面から匂いが伝わってくるうううう!!』
『ヤバい、マジで胃袋が鳴った!! 胃酸がヤバい!!』
『ただの市販ルーと大豆ミートなのに、なんで三ツ星レストランのカレーみたいに見えるんだよ!!』
『匂いだけでご飯3杯いける(幻覚)』
『誰か早く、スマホから匂いを転送する技術を開発しろ!!』
リスナーたちが視覚と聴覚の刺激だけで『共感覚的な飯テロ』の直撃を受け、身悶えしている。
そして、この世界を牛耳るVIPたちもまた、画面越しの極上カレーに完全に理性を焼き切られていた。
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)=”Master! I’ll pay 100 million yen for that recipe! No, I’ll send my private chef there right now to learn it!“(主よ! そのレシピに1億円払おう! いや、今すぐ私の専属シェフをそっちに向かわせて学ばせる!)』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)=”This aroma must be patented immediately! It’s an asset that will move the world economy!“(この香りは直ちに特許を取得すべきだ! 世界経済を動かす資産になるぞ!)』
『(ハリウッド女優シャーロットからの$5,000MeTubeギフト)=”Akiya! Don’t eat it yet! I’m getting on my private jet right now! Keep it warm for 10 hours!“(アキヤ! まだ食べないで! 今すぐプライベートジェットに乗るわ! 10時間保温しておいて!)』
極彩色のスパチャが、カレーの沸き立つ泡のように画面を埋め尽くす。
「よし、煮込み完了。……実食とする」
俺は深皿に完璧な炊き加減の玄米を盛りつけ、その上にドロリとした黄金色の極上カレーをたっぷりとかけた。
「いっただっきまーす!!」
待ちきれなかった小春ちゃんが、スプーンですくって一口、口に運ぶ。
その瞬間、彼女は雷に打たれたように目をカッ!と見開き、全身を震わせた。
「んんんんんんっ!? な、なんですかこれぇぇぇっ!?」
「どうした、毒でも入っていたか?」
「違います! 美味しすぎます!! 野菜の甘みが信じられないくらい濃厚で、スパイスが弾けて……それにこのお肉! 大豆ミートって言いましたよね!? なんで高級な和牛のスネ肉を三日間煮込んだみたいな、口の中でホロホロとろける旨味がするんですかっ!?」
小春ちゃんが涙目になりながら、猛烈な勢いでカレーをかき込み始めた。
ヒグマやキツネたちにも専用の皿(塩分・スパイス抜きバージョン)を与えると、巨大な獣たちが顔を突っ込んで「グゥゥゥ……」と感動の唸り声を上げている。
「……どれ」
俺も自分の皿のカレーを一口、ストイックな無表情のまま口に運んだ。
(……!! な、なんだこれは……ッ!)
脳内で、大輪の花火が爆発した。
ルビートマトの旨味成分と黄金トウモロコシの甘みが、大豆ミートの繊維の奥深くまで浸透し、俺の知っている『陣地食』の限界を遥かに超越していた。
シロのオーラがもたらした大地の錬金術は、大豆ミートを『神話の肉』へと昇華させてしまったのだ。
だが、俺は元・需品科の『どんな極上メシにも動じない鋼のポーカーフェイス』を維持し、ストイックに咀嚼を続けた。
「お、お兄さん……! 一口食べて一瞬だけ目が見開いてましたよ! 素直に美味しいって顔に出してくださいよ!」
小春ちゃんがスプーンを握りしめたままツッコミを入れるが、俺は熱いほうじ茶で喉を潤し、涼しい顔で答えた。
「何を言うか。これはあくまで指揮官のエネルギー補給、カロリーの摂取行動に過ぎない。野菜の水分と大豆のタンパク質が融合した、極めて合理的な兵站物資だ。美味いかどうかは二の次だ」
俺はカメラの前に向き直り、キリッとした真顔でいつもの『限界言い訳タイム』を発動した。
「世界中の皆さま。シロの魔法で育った野菜のおかげで、大豆ミートが高級和牛のような極上カレーに化け、暴力的な匂いで飯テロを起こしていると思われているかもしれませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『一千万人の胃袋を破壊しておいて、まだ言い訳する気かこの男は!!!』
『主の限界言い訳タイム・無水極上カレー編ww』
『さあ、この画面越しに伝わる凶悪な匂いをどう論破するんだww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これは神獣のバフによる極上カレーではありません。トマトに大量に含まれる『グルタミン酸』と、大豆ミートの『アミノ酸』が加熱により強力なメイラード反応を起こし、脳が勝手に『和牛の旨味』だと錯覚(プラセボ効果)しているだけです。匂いが異常に強いのは、台風一過の急激な気圧変化により、香気成分の揮発速度が限界まで高まっているからです。ええ、ただの『食品化学の相乗効果』と『気象条件の悪戯』が重なっただけですね」
「んなわけあるかあああ!!!」
小春ちゃんが、調理台に残っていた『俺の腕より太い規格外の巨大ナス(ヘタ付き)』で、俺の後頭部に完璧な紫色のスマッシュを見舞った。
「気圧の変化で画面の向こうの一千万人がよだれ垂らすわけないでしょうが!! メイラード反応だけで大豆ミートがホロホロの高級和牛に錯覚するなら、世の中のカレー屋は全部大豆使ってますよ!! どう見たってシロちゃんの神がかったオーラが染み込んだ野菜が、規格外の美味さを生み出してるんでしょうが!! 素直に『俺のカレーは世界一だ』って叫びなさいよ!!」
『小春ちゃんの巨大ナス・スマッシュ炸裂ww』
『メイラード反応とプラセボ効果(シロ様のチートバフ)』
『気圧変化による香気成分の揮発(ただの凶悪な飯テロ)』
『適応力バグおじさん、ついに極上カレーを食品化学と気象学のせいにするww』
『言い訳が理系すぎて、カレー食いながら腹痛いww』
俺の理不尽極まりない生化学的な限界言い訳と、小春ちゃんのキレキレのナス・ツッコミに、一千万人の視聴者たちは空腹を抱えながら、腹がよじれるほどの大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(おかわり頂戴な)』
シロが空になった自分のお皿(スパイス抜き)を前足で押しやると、ヒグマも「グルォ!(俺も!)」と巨大な鍋の前に正座して待機している。
「……まぁ、理由はどうあれ。部隊の士気が上がり、兵站が完璧に消費されるなら、言うことはない」
俺は苦笑いしながら、十勝の青空の下に漂う極上のカレーの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
限界集落の夏は、VIPたちの発狂とモフモフたちの食欲、そしてどんな奇跡の美味にもブレない『需品科の言い訳』によって、世界一騒がしく、世界一美味しい大爆笑に包まれながら更けていくのだった。
コメント
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あああ、読んでるだけでお腹が鳴りました……!😭✨ もう完全に飯テロの被害者です。 今回も小春ちゃんのツッコミが冴えてますね。「んなわけあるかあああ!!!」って巨大ナスでスマッシュするところ、脳内で鮮やかに再生されました(笑)。それにしても、シロのオーラで育った野菜が規格外すぎて、大豆ミートが和牛の味になるって……どんなファンタジーカレーだよって思わずツッコミたくなりました。 そして何より、主人公の「鋼のポーカーフェイス」で平然と限界言い訳するスタイル、今回も完璧に決まってますね。「メイラード反応と気圧変化のせい」って、理屈で押し通そうとする姿勢に笑わせてもらいました。一千万人のリスナーと一緒に、私もお腹を抱えて笑いながら、カレーが食べたくなってます🍛