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6つの星、それぞれの光る空

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6つの星、それぞれの光る空

11 - 流星群 ~イヴニング・スター~

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2023年08月31日

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広いリハーサル室には、俺らの音楽と6つの足音がうるさいくらいに響く。

それをしっかり聴いているつもりなのに、さっきから身体はついてこない。

遅れてるな、というのは感じていた。

歌のパートが終わり、間奏に入る。ここではみんなでポジション移動をする、はずなんだけど。

ドン、と誰かにぶつかった。

「うあっごめん!」

それは北斗だった。

「マジでごめん、俺よそ見してた。怪我してない? 大丈夫?」

そう心配してくる北斗だけど、ミスしたのはこっちのほう。

「違う、俺のせいだから」

そんなことない、と大我が入ってくる。

「そうやって自分のせいにするのダメだって言ったでしょ?」

大我にとがめられる。でもこれは本当にメンバーの責任じゃない。俺の出来なさ。

俺には小さい頃から、「発達性協調運動障害」というのがある。不器用で、運動が苦手。でも俺の場合は今こうしてダンスもやっている。だから軽いほうではある。

だけど、それのせいでみんなのパフォーマンスのレベルを下げているんじゃないか、というのは俺の永遠の不安。みんなには絶対言えないけど。

だってそんなこと言ったら、あいつら全員で全否定してくるから。それは嫌なことじゃないけど、申し訳ない。

みんなより出来ないことが、悔しくて申し訳ないんだ。

しかもこれからはライブが始まる。今日はその練習。

今までは何とかこなしてきたけど、いつ何が起こるかはわからない。俺の不器用さでそんなことに5人を巻き込みたくない、というのが一応の最年長としての思い。

「あっ、靴紐ほどけてんじゃん」

樹が言って俺の足もとにしゃがみ込んだ。いつの間にやらほどけていたようだ。

そう、靴紐を結ぶのも俺の苦手分野。だからみんなに頼りっぱなしだ。

「高地、まさかこれでコケかけたんじゃないの?」とジェシーは笑う。

「違うって」と意地を張る。

出来た、と樹が立ち上がる。俺がやったら2、3分はかかる作業を数秒で済ませてしまう。

「そんな悲しそうな顔すんなって」

顔を上げれば、眉をひそめた慎太郎。てっきり苦笑いでもされてるのかと思った。

「別に俺らは高地のサポートすることを苦だと思ってないし。それは結成したときに約束しただろ? どんなことがあっても支えるって」

グループを結成するときに、それまでは言っていなかった俺の特徴のことを告白した。

「そんなやついらない」と言われるかも、と怖かったけど、みんなは今までと同じように笑って俺を輪に入れてくれた。いつもみたいにイジってくれた。不器用さも苦手なことも、楽しい笑いにして。

慎太郎は俺を見たまま続ける。

「俺ら、メンバーだからそんなの当たり前だろ?」

でも、これ以上頼ったらきっと迷惑になる。みんなだって忙しいし、俺にわざわざ構っていたら時間なんてなくなる。

そんな心の内を見透かしたように、北斗が口を開く。

「いつになったら全部託してくれんだよ。いつになったら、もっと気軽に頼ってくれんだよ。俺らは高地を信頼してるの。だからお前も俺らを信頼してほしい」

してるよ、と口を動かしたが声に張りがない。

後ろめたさが心にはあった。

みんなはどうやら諦めたのか、静かになる。

「…ライブ、頑張ろうな」

そう言ったジェシーの声は、少し寂しげだった。


続く

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