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一条先生から渡された一通の古い封筒
そこには、かつて本院で冬馬先生が担当し、そして「失った」とされるある女性患者の記録が入っていた。
「冬馬くんが、なぜあんなに完璧な執刀にこだわるのか。……そして、なぜあなたの行動を秒単位で縛りたがるのか。これを見れば、彼があなたに何を重ねているか分かるわ」
深夜、冬馬先生が緊急オペで不在のマンション
私は震える手でその資料を捲った。
そこに写っていたのは、私とどこか面影の似た、儚げな微笑みを浮かべる女性。
───そして、彼女が自ら命を絶つ直前に遺した、冬馬先生への恨み言の数々だった。
『あなたの愛は、私を殺すためのメスと同じ。もう、息ができない』
背筋に氷を流し込まれたような感覚に陥る。
冬馬先生の過剰な独占欲は、愛ゆえの暴走ではなく
かつて自分の支配で壊してしまった女性に対する「贖罪」と、同じ過ちを繰り返すことへの「恐怖」の裏返しだったのだ。
「……おま、何を見ている」
背後から、凍てつくような声がした。
振り返ると、そこには返り血を浴びた白衣を脱ぎ捨てたばかりの、冬馬先生が立っていた。
「先生、これは……」
「…やはり、あいつが渡したのか」
先生は一瞬で距離を詰め、私の手から資料を奪い取ると、それを床に叩きつけた。
その顔は、これまで見てきたどんな表情よりも、冷酷で、そして絶望に満ちていた。
「……お前も、俺を拒絶して消えるつもりか」
先生は私の両手首を掴み、壁に叩きつけるようにして拘束した。
手首が軋む。
けれど、それ以上に彼の瞳に宿る、狂気じみた「喪失への恐怖」が私を射抜く。
「……俺は、お前を完璧に管理している。食べるものも、眠る場所も、吸う空気さえも。……なのになぜ、お前はそんな目で俺を見るんだ」
「先生、苦しい…離して……っ」
「離さない、絶対に離さないと言ったはずだ。お前が俺を拒むなら、俺は……っ」
先生の指が、私の喉元に伸びる。
首を絞めるような、けれど縋り付くような、歪んだ愛撫。
彼は私の瞳に浮かぶ涙を舌で掬い取り、そのまま深く、激しく唇を重ねた。
そのキスは、今までで一番苦く、血の味がした。
彼は私を愛しているのだろう。
ただ、私を失うのをは酷く怖がっている、そんな様子だ。
「……殺して、ください」
私が喘ぐように呟くと、冬馬先生の動きが、目に見えて止まった。
「……死ぬまで離さないなら、いっそ先生の手で。……そうすれば、私はもう誰にも奪われないし、先生も安心でしょう?」
ドSな彼への、最大の反逆。
冬馬先生の瞳が大きく見開かれ、その美しく冷徹な仮面が、音を立てて崩れ落ちた。