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#さのじん
自分夢の中
3,722
「マジバディ、まさかのエントリーだって……!?」
増刊号での2位快挙から3ヶ月。
本誌連載が始まってからも、俺たちの勢いは止まらなかった。
けれど、編集部から告げられた次なる試練は、想像を絶するビッグイベントだった。
『創刊記念・全連載作品総選挙』
読者アンケートのハガキ、SNS連動投票、等々。
そのすべてを集計し、全ジャンルの連載陣の中で「真の1位」を決めるお祭り。
優勝作品には、「本誌表紙&巻頭カラー3号連続確約」と「アニメ化優先確約権」が与えられる。
女児漫画が少年誌や青年誌の看板バトル漫画と真っ向勝負するなんて、前代未聞だ。
舜「なぁ柔太朗……これ、マジで天下獲りに行くチャンスやん」
柔「うん。ここで1位を獲れば、文句なしの『天下』だね」
放課後の美術室。
夕日が差し込む部屋で、柔太朗はいつもの完璧な王子様スマイルではなく、獰猛なハンターのような目をしていた。
柔「……でね、舜太くん。今回の総選挙、中間発表のイベントが『コミックフェスティバル』のメインステージで行われるんだ」
舜「ステージ!? 俺ら、顔出しNGの現役高校生やぞ!?」
柔「もちろん、仮面をつけるか、音声のみの出演。でも、ファンと直接対面する初めてのビッグイベントだよ。ここで読者の心を掴んだ方が勝つ」
現在の1位は、不動の看板ダークファンタジー『グラッジ・ブレイド』。
俺たち『マジカル・バディ』は、中間集計で堂々の2位につけていた。
だが、1位との差は果てしなく遠い。
「絶対に、あの看板をぶち抜く」
そこからの修羅場は、今までの比じゃなかった。
学校の授業中は、お互いにバレないようルーズリーフでネームのやり取り。
放課後は俺の部屋に缶詰め。
柔太朗の妥協を許さないプロットに、俺の右腕が悲鳴を上げるほどの作画熱量で応える。
(柔太朗の隣に、胸を張って立ちたい。約束を果たしたい……!)
ロッカーのあの日から、柔太朗の距離感はさらにバグっていた。
原稿中、ペンを持つ俺の手の上から自分の手を重ねてきたり、「疲れた」と言って俺の肩に額を預けてきたり。
そのたびに心臓が爆発しそうになるのを、「漫画の熱量」に変えて原稿用紙にぶつけた。
そして迎えた、コミックフェスティバル当日。
会場の大型メインステージの裏側。
俺と柔太朗は、顔を隠す特製のブラックマスクを着用し、お揃いの衣装に身を包んでいた。
地鳴りのような歓声がステージの向こうから聞こえる。
舜「あかん、緊張で吐きそう……」
柔「ふふ、舜太くん、足震えてるよ」
クスッと笑って、柔太朗が俺の右手をきゅっと握った。
手袋越しなのに、柔太朗の手の温かさがダイレクトに伝ってくる。
柔「覚えてる? ロッカーでの約束。ここで1位の背中を捕まえて、最後に天下を獲ったら――」
舜「……っ、分かっとる! 覚えてるわ!」
顔がマスクの下で一気に熱くなる。
俺は柔太朗の手を強く握り返した。
舜「逃げへんよ。俺はお前の最高の相棒で、お前を男にするって決めたからな」
柔「……っ」
一瞬、柔太朗が息を呑んだのが分かった。
マスクの隙間から見える彼の瞳が、ひどく熱く潤んで、愛おしそうに俺を見つめる。
柔「本当に、舜太くんはズルいな……。よし、行こうか」
『――続いてのエントリー! 今、最も目の離せない新星、『マジカル・バディ』のやわ風先生、しゅん丸先生です!!』
MCの呼び出しとともに、ステージの幕が上がる。
凄まじい光のフラッシュと、割れんばかりの黄色い悲鳴、そして「マジバディ――!!」という大歓声が俺たちを包み込んだ。
ステージの中央、巨大スクリーンに映し出された中間順位。
1位:グラッジ・ブレイド(28,000票)
2位:マジカル・バディ(24,500票)
その差、わずか3,500票。
マイクを持った柔太朗が、一歩前へ出る。
その立ち姿は、仮面をつけていても圧倒的なカリスマ性を放っていた。
柔「皆さん、こんにちは。原作者の『やわ風』です。僕たちの小さなこだわりから始まったこの物語が、今、こんなにたくさんの人に愛されていて、本当に幸せです」
会場から地響きのような歓声。
柔「でも、僕たちは2位で満足するつもりはありません。この作品には、世界中をワクワクさせる、最強の作画担当がいます」
柔太朗が振り返り、俺に視線を送る。
俺は一歩前に出た。
心臓のバクバクは、もう恐怖じゃない。
舜「作画の『しゅん丸』です! ……女児漫画やからって、少年誌の王道に負ける気は1ミリもありません! 次回のクライマックスの作画、マジで魂削って描いてます。
俺たちに、1位の景色を見せてください!!」
会場が、今日一番の熱狂で爆発した。
悲鳴のような歓声の中、俺たちの目の前で、投票のカウンターが恐ろしいスピードで回り始める。
ステージの袖に戻る瞬間、柔太朗が俺の肩を抱き寄せ、耳元で低く囁いた。
柔「最高の宣戦布告だったよ、舜太くん。……これ、もう終わったら覚悟しておいてね?」
舜「……な、何を、や……」
耳元にかかる吐息が甘すぎて、ステージが終わった安心感なんて一瞬で吹き飛んだ。
天下獲りまで、あと一歩。
俺たちの物語は、ここからさらに加速していく。
fin
コメント
1件
いやープチ熱すぎて鳥肌立ったわ……!中間発表であの差をステージで逆転狙う宣言とか、現役高校生で顔出しNGって設定がもうドラマありすぎるし、柔太朗がステージ袖で耳元に囁くシーンで完全に持っていかれた。女児漫画が看板バトル漫画に挑む構図もアツいし、「覚悟しておいてね?」がまた滾る。続きマジで待ってる🔥