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その日、全ての仕事が終わり、メンバーが帰り支度を始める中、阿部は静かにその時を待っていた。そして、ターゲットである佐久間が一人になったのを見計らい、声をかける。
前回のようなロマンチックな誘い方はしない。そんな隙は、もう見せない。
あくまで、事務的に。冷静に。
「佐久間、この後30分だけ時間いい?君に、どうしてもプレゼンしたいことがあるんだ」
「ぷ、プレゼン!?」
佐久間は目を丸くした。聞き慣れないカタカナの響きが、彼の好奇心を強く刺激したらしい。
「なにそれ、超面白そう!聞きたい聞きたい!」
「ありがとう。じゃあ、こっち来て」
(よし、食いついた…!)
阿部の狙い通り、佐久間はこれが自分へのリベンジマッチだとは微塵も思っていない。
ただ、楽しいイベントが始まるかのように、ワクワクした足取りで阿部の後をついてくる。
阿部が彼を案内したのは、静かな廊下の突き当たりにある、小さな試写室だった。
部屋の中は薄暗く、大きなスクリーンの前に、ポツンと椅子が一つだけ置かれている。
その異様な光景に、佐久間は「え、なに?ドッキリ?」と少しだけ身構えた。
「ドッキリじゃないよ。さ、ここに座って」
阿部は、佐久間をその“観客席”に座らせると、自分はスクリーンの横に立ち、手元のノートパソコンを操作した。
部屋の明かりが、完全に消える。
いよいよ、阿部亮平の、雪辱を懸けたプレゼンテーションが始まろうとしていた。