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暗闇の中、スクリーンにぱっと白い光が灯る。そこに映し出された荘厳な明朝体のタイトルに、佐久間は息を飲んだ。
【佐久間大介が阿部亮平に与えるポジティブな影響に関する定量的考察】
「…え?」
佐久間が呆気にとられているのを尻目に、阿部はまるで大学教授のように、落ち着き払った声でプレゼンを開始した。
「本日は、僕の研究発表に参加していただき、誠にありがとうございます。早速ですが、議題1『笑顔の増加率』について、ご説明します」
スクリーンには、二つの円グラフが並んで表示される。
「こちらは、僕がSnow Manに加入してからの膨大な写真データを基に算出した、『阿部亮平の単独写真における笑顔率』と、『佐久間くんと二人で写っている写真における笑顔率』を比較したものです。ご覧の通り、君といる時の僕の笑顔率は、単独時に比べ、実に180%も上昇していることが、データで明確に示されています」
レーザーポインターの赤い光が、グラフを的確に指し示す。
佐久間は「へ、へぇ…」と声を出すが、どう反応していいか分からない。
阿部は構わず、次のスライドへ移る。
「続いて、議題2『発言内容のポジティブ化』。こちらは、僕の過去のブログや雑誌インタビューのテキストデータをAIで解析した結果です。スクリーンをご覧ください。これは、『佐久間』という単語と共に使われる形容詞のトップ10です。『楽しい』『面白い』『最高』…。これは、僕の語彙が、君によってポジティブに書き換えられているという、明確な証拠です」
「最後に、議題3『ストレス値の軽減効果』。これは僕のスマートウォッチで計測した心拍数データです」
スクリーンには、ある多忙な一日の心拍数が、激しく乱高下するグラフが映し出される。
「この日、僕のストレス値はピークに達していました。しかし、見てください。このタイミング。君から送られてきた『今日のアニメも最高だった!』という、何気ないメッセージを受信した直後、僕の心拍数は、急激に安定を取り戻しています。つまり、君の存在は、僕の自律神経に直接作用する、極めて有効な鎮静剤であると、科学的に証明されたのです」
最初は面白がって聞いていた佐久間の顔から、どんどん笑顔が消えていく。
これは、愛の告白ではない。
あまりにも膨大で、緻密な、「事実」の暴力。
ロマンチックな言葉の隙間など、どこにもない。ただ、冷徹なデータが、スクリーンに映し出されては消えていった。