家から外へ出た。
いつもの街の商店へ買い出しに行ったけど、お目当ての銀の杯は買えなかった。その代わりに、鶏の卵を買った。卵は安すぎて、たくさん買いすぎてしまった。卵焼きも好きだけど、50個もいらないよな。街の外は街路灯がぽつりぽつりと夜の街道を照らしていた。星空と月が明るく輝いている。たまに流星が地上へ落ちてくるのを眺めながら歩いた。僕は手に火を灯す。ぼわっとした炎は、ゆらゆら右へ左へ揺れながら僕の歩く先を明るくする。酔い潰れた浮浪者を避けつつ、僕は教会へとたどり着いた。夜の暗闇で、普段の白壁の教会とは似ても似つかぬ様子だ。悪魔が出てきても、不思議ではないとか罰当たりなことを考えながら。
(夜分遅くにすみません)
僕は小声で教会のドアをノックした。
少しして、女の子が顔を覗かせた。
「誰ですか一体、こんな夜更けに」
「僕です、隣町のヨブです」
その女の子は一瞬、思案して思い出したように言った。
「あれ、なにやってんのこんな時間に」
途端にくだけた口調になる。
「街で卵を買いすぎてしまったので、教会の孤児院に寄付をと思いまして」
「あらやだ、それなら大歓迎よ」
と言って、僕は卵をいくつか渡すと、家に帰った。家に帰る途中、寝ていた浮浪者の脇に卵をたくさん置いていたら、その浮浪者は起きてしまった。大きな謎の卵を僕の持っていた卵と物々交換でくれたので、明日焼いて食べようと思う。
 翌日、僕は謎の卵を割ることにした。中身を取り出せば、大きな目玉焼きが作れるから。しかし、堅そうな卵だった。
最初はハンマーで叩いて割ることにした。でも、なかなか割れない。そこで、今度は火を使うことにした。鍋に水を入れる。鍋に水を入れていたら、まな板に置いた卵が次第に動き始めた。小刻みに振動している。何か生まれるんだろうか、と思って見ていると卵の殻に亀裂が入った。亀裂から白い角が2つ生えた。
ユニコーンだろうか、いや、ユニコーンは一角獣か。なんて考えていたら、殻を破って、竜が顔を出した。黄金の瞳に、白い鱗。幼いながらも、しかし立派な白い竜だった。白い竜は、竜種の中でも珍しい。石竜や赤竜、緑竜などは見たことがあったけれど、白い竜は初めて見た。
喉を鳴らしている竜を見ながら、僕は台所にあった鹿肉の燻製を与えた。
しばらく匂いを嗅いだあと、竜は小さな口で食べ始めた。竜にしては上品な食べ方だった。牙はすでにきちんと生えていたので肉を噛みきれるようだった。
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