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夢原さんが帰ってこない。夢原さんが居なくなってから3日たった。でも、夢原さんは帰ってない。私はあの後少し休んでたら復活できただけでほかはなんの変わりはない。
「黒葛原さん?あ、駄目ですよ、まだ休んでてください。」
少し休んだら、のところに訂正がある。正確には少し休んで復活出来たのに、だ。この起きようとする私を頑なに拒む美少女こと、八神さん。てか八神さんってこんなキャラだったの?あれか、恋愛ゲームで言うと主人公の妹キャラてきな?マジか。
「大丈夫です。」
しかーし!妹キャラだからって私は引かんぞ!
「駄目です。」
何か背景から黒いモヤが出てるのは気の所為ですかね?しかもゴゴゴッて感じの効果音が聞こえるのも気の所為ですかね?
「でも、」
「駄目。」
実は妹キャラが世紀末のヒャッハーだった件。本が出せそう、因みに主人公は八神っち。
「………で、」
「駄目ですよ?」
まだ、で、しか言ってないよ?もしかしたら、でも以外かも知れないじゃん!……まあ、でもって言おうとしたけど。でもだよ!でもでも!このまんまなの?え、そんなのやだ。なら逃げよう!私達、まずこの狭い部屋から出られないので動いても動かなくても変わりないです。
「黒葛原さんは安静にしててくださいね。夢原さんも帰ってこないのに、黒葛原さんが倒れたりしたら心が折れちゃいます。」
え、ホントこの子こんなキャラだったっけ?もっとオドオドした感じだと思ってたんだけど。結局その後強制的に寝かせられた。でも、夢原さんが帰ってくることは無かった。
サルヴァトール王国セイレン町セインの森にて、大規模な遺跡探索の依頼があった。その依頼に応じた冒険者の数は、109人。しかもそのうちの3人がSランク。他にもAランクやBランク等の強者揃いだ。
「噂によると、今回の依頼人は伝説の冒険者カインらしーぜ?」
「ふふっ、もしそうだとしたら、伝説の冒険者は相当気前が良いそうね。」
「まあ、Sランクの俺らにかかればこんな依頼ちょちょいのちょいよ。」
この方々はこの大勢の冒険者の中で最もランクの高いSランクパーティーの「ミスリルナイト」。そして、俺はこのパーティーの下っ端。アレルと言う名前で、通称ゴミ拾い。戦闘もろくにこなせず、出来るのは解体と料理ぐらい。後は唯一のユニークスキル、ゴミ拾いで物をゴミを見極める事が出来ることかな?
「おい!ゴミ拾い!お前ぼさっとしてないで動け!」
痛っ!ミスリルナイトのリーダー、ロバートから背中を蹴られる。くそぅ、あの野郎。
「ああ?お前その目は何だ?お前を養ってるのは俺らなんだぞ?」
「……申し訳ございません。」
くっそ、腹立つがここは素直に引き下がる。逆らって勝てる相手でも無いしな。
「ロバート、そいつの事はもう良いから、早く行きましょ。それに、もし依頼人があのカインだとしたら、私達Sランクの知名度はうなぎ登りよ?ここで遅れるわけには行かないわ。まあ、どうせハッタリでしょうけど。」
「そうだな。冒険者カインが依頼する理由もないだろーし。さっ、行くか。」
俺たちは遺跡へと急いだ。遺跡周辺に着くとそこには地方から集まった様々な冒険者がワイワイと休憩地点でテントを張っている最中だった。
「じゃ、俺らもテントはるか。何処かいい場所あるか?フラン、どうだー?」
フランとはこのパーティーの魔法使い。そして、ロバートの婚約者でもある。
「んー、無いわね。ちょっと、ゴミ拾い。あんたも探しなさいよね。」
へいへい。分かってますよぉーだ。ん?あそこは、中々良いんじゃないか?丁度日陰で魔物よけの結界を貼りやすそうだ。
「お、あそこが良いんじゃないか?」
俺が言う前にこのパーティーのタンク役のボロヌが空き地を指差す。
「いいな、彼処にしよう。おい、ゴミ拾い、テントをはれ。」
へいへい。俺は無言でテントを張る。こんなのはもうお茶の子さいさいだ。ササッとテントを組み上げた俺は木に魔物よけの御札を貼った。これはその名の通り魔物を近づけないようにするすぐれものだ。
「ふぅー、終わった。皆さ、」
「ちょっと君いいかい?」
俺があの3人を呼ぼうとしたとき、横から若い男の人の声がし、俺が振り向くと彼は俺にペコリとお辞儀をした。
「何でしょうか。」
「ちょっと君らSランクの人と話がしてみたくてね。お仲間さんも呼んでくれるかな?」
一瞬で俺は悟った。こいつはヤバいと。かなりの手練れだ。俺ら、もしくはそれ以上の。
「んだよ、ゴミ拾い。何か…ん?お前は誰だ?」
ロバートが彼を指差す。
「あ、彼が俺らと話がしたいって。」
「はあ?お前俺が誰か分かってるのか?どうせお前もSランクに憧れて来たんだろ?帰れ、ここは見習いが来る場所じゃあ無い。」
いかにもな態度で彼に帰れと言うロバート。そして、血の気が引く俺。
「うーん、まあ、ちょっと違うけど話と言うのは別の事だよ。僕はこの遺跡探索の依頼人だからね。」
その途端、3人の顔色が俺と同じかそれ以上になった。分かる、そうなるよね。だって、この依頼を提示した御本人だもんね。あはは。
「と、取り敢えずテントの中で話しましょう?ね?」
この空気の中、言葉を出せた俺偉い。超偉い。そうして、俺らは気まずい雰囲気のまま、テントに入った。
「先程は申し訳ありませんでした。まさか、依頼人とはつゆ知らず。」
「いえ、突然お仕掛けたのは僕です。それにそこまで気にはしてませんので。」
少しは気に触ったよ、と言う皮肉を言われる程やっぱり頭にきてるらしい。ヒエッ、怖っ。
「あ、あの、どのようなご要件で?」
フランが汗をダラダラ流しながら彼に問う。
「ああ、特には無いですよ。ただ、依頼人として顔を見ていないとと思いまして。でも、そろそろお暇します。」
ほっ…どうにか危機は、ま逃れそうだ。良かった。ここでこの人が機嫌を悪くしたら…
「では、僕はこれで。失礼しました。あ、後…」
彼がもう一度俺らの方に目を向け、その仮面の下を覗かせる。
「このことはくれぐれも黙っててください。色々と面倒なので。」
仮面から覗かせたその顔をニコリと笑いテントから出ていった。
「……ほぅ。」
フランが頬に手をつけ、うっとりとした目で彼の出ていった方向を見つめる。まあ、気持ちは分からなくはない。藍色の綺麗な瞳に思ってたよりもパッチリとしてるのに何処か鋭い棘のような目、その他全部含めての整った顔立ち。認めよう、かなりのイケメンだ。
「チッ、何だよあいつ。」
だというのに、悪態をつくロバート。婚約者が取られたのが気に入らなかったんだろう。ひひっ、いい気味だ。
「でも、案外可愛かったじゃない?私は好みよ。まあ、ロバートが一番だけどね。」
ロバートが一番とフランから言われて満更でもないロバートは機嫌が良さそうに鼻を鳴らす。何だかんだ言ってお似合い何だよな、この二人。
「そんな事より三日後に遺跡探索だろう?取り敢えず今日は寝て体力を回復させよう。」
ボロヌがパンパンと手を叩き寝袋を取る。それを見た二人も同じ寝袋を取り、中へ入る。うん、え、俺のは?
「あ、後ゴミ拾い、お前は見張りな。」
結局そうなるんですね、あはは。俺は内心悪態をつきながらテントの外へと出る。空を見上げると半月でも無いし、満月でも無い微妙な形の月が目に入った。そして、その月に照らされる俺。
「しっかし、誰も見張りしてないな。まあ、それも……」
ふと、視界に入った青年に目が行く。その青年は先程のような仮面やマントは無く、木の枝に立ちながら月を眺めている。
「……シーナ、さん。」
ボソリと青年が何かを呟く。でも何だか聞いたらいけなかった様な気がしてふいっと視線を下に降ろす。その途端、俺に猛烈な睡魔が襲ってきた。あ、く…そ……このま…ま、ねた……ら…。
「まさか人が居るなんて。……まあ、聞かれてもそう問題は無いか。…元気にしてるかな?シーナさん、サゴンさん。」
青年は夜空を見上げ、一人静に呟いた。