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今日は朝からとても嫌な事があった。
でも、それはぼくにはどうしようもない事で、やり場のないイライラは一日中ぼくの心をザワザワさせていた。
それでも仕事は待ってくれないから平常心を装って、やらなきゃいけない事を淡々とこなし、時計の針が12時を過ぎた頃にやっと家に帰ってきた。
玄関を見ると、先に仕事が終わって帰宅した涼ちゃんの靴が少し雑に脱ぎ捨てられていて、ぼくは溜息を付きながら綺麗に揃え直してから寝室に向かう。
電気を付けずに、廊下の明かりだけで寝室を覗き込むと、涼ちゃんはベッドの左側を空けて、既にスースーと規則正しい寝息をたてていた。
「気持ち良さそうに寝ちゃってさ。」
ぼくはそう呟くと、持っていた荷物を置いてベッドに上がり、涼ちゃんが空けておいてくれた左側ではなくて、寝ている涼ちゃんの上にのしかかった。
ぼくの重みに『う”っ』と少し苦しそうな声をあげる涼ちゃんが面白くて、少しニヤけてしまう。
苦しそうにしながらも、それでもまだ起きる様子のない涼ちゃんと重なるように寝そべり、胸に耳をあててみる。
ドクドクと聞こえる涼ちゃんの心臓の音が心地よくて、ぼくはしばらくそうしていた。
「ん、んん〜…もとき?」
数分経ってから、やっと目を覚ました涼ちゃんは、起こされた事を怒る訳でもなく、何してるの?と聞く訳でもなく、苦しさの原因がぼくだと気付くと、ぼくの背中に手を回し、ギュッと抱きしめた。
「おかえりなさい。おつかれさま〜。」
寝起きで頭が動いてないのか、むにゃむにゃしながらそう言う涼ちゃんが愛しくて、もっと涼ちゃんを感じたくなり、腕の中から抜け出すと、涼ちゃんが着ていたTシャツの中に潜り込み、今度は直に耳を付けた。
さっきよりほんの少しだけ早くなった鼓動が聞こえてくる。
「えっち〜。」
そう言って、クスクス笑う涼ちゃんが可愛くて、ぼくの鼓動も少しだけ早くなる。
「…えっちする?」
ぼくは顔を上げてTシャツの隙間から涼ちゃんを見る。
「寝起きのえっちって気持ちいいよね。」
さっきまでむにゃむにゃしてたのに、急に覚醒したのか今度は全然可愛くない事を言う涼ちゃん。
それでも、そんな涼ちゃんもやっぱり愛おしくて、これが惚れた弱みってやつなのかもしれないとふと思った。
もう一度、涼ちゃんの胸に耳をあてると、最初よりもだいぶ早くなってる鼓動に、ぼくは微笑む。
いつの間にか、朝からずっとザワザワしていた気持ちは静まり、イライラした気持ちも吹き飛んでいた。
-fin-