今年こそは…そう思いながらもう何年経ったんだろう。
今年もおれは、彼の親友枠から抜け出す事が出来ずにいる。
周りからは、本当に仲良いねやら、イチャイチャすんなよやら、おれ達の仲の良さを揶揄われる事はあれど、所詮、友達は友達な訳で。
それに、彼のスキンシップの多さは今に始まった事でもなく、おれ以外にも心許した人には誰にでもしている為、おれだけにそうしている訳じゃないのが痛いところだ。
未だに、たまに勘違いしそうになる時もあるけど、その次には同じ事を涼ちゃんにもやっていたりするのを見て、何度落ち込んだ事か。
…全く、おれの気も知らないで。
暇つぶしに見ていた動画配信アプリである動画に目が止まった。
それはだいぶ前に流行った、友達や恋人に急に歌詞を送り付けるというもの。
その中で、おれ達の曲の歌詞を送っている動画もあって、彼には色んな意味でこんなの通用しない事は分かりつつも、ほんの出来心でメッセージアプリを開き、彼のアイコンをタップした。
『今ドキドキドキが高ぶって』
先ずは1文送り少しだけ様子を見ようと思いきや、直ぐに既読が付いて、おれは心臓は歌詞の通り本当にドキドキし始める。
『勇気を持って声を掛ける』
彼はどんな反応をするのだろう。
ドキドキしながら次の歌詞を送ると、また直ぐに既読が付く。
次の歌詞が、まさしくおれの気持ちそのもので、更にドキドキしながら文字を打ち込んでいると、彼からメッセージが送られたきた。
『さすがにそろそろ貴方に恋する』
『私に気付いて欲しいのです』
ああ!おれが送りたかったのに先越された!
元ネタを元貴も知ってらしく、動画で見たような、戸惑いの反応はなく、普通に次の歌詞が送られてきて、最初から期待はしていなかったにしろ、少し残念な気持ちになる。
バレてしまっては続ける気にもならなくて、なんて返そうか考えていると、また彼からメッセージが入った。
『あなたに気づいて欲しいのです』
それは、その曲の最後の歌詞。
〝さすがにそろそろ貴方に恋する
わたしに気づいて欲しいのです
あなたに気づいて欲しいのです〟
彼が送ってきた歌詞に他意はない事は分かっているけど、自分から始めた癖に、一瞬ドキッとしてしまう。
『ちょっと!勝手に終わらせんなよ笑』
そんな気持ちを誤魔化すように、おれは変なスタンプと一緒にメッセージを送る。
『ばーか』
すると、彼からは同じく変なスタンプと共にそうメッセージが送られてきた。
『ばかって言った人がばかなんですー』
その後は小学生みたいな仕様もないやり取りがしばらく続き、持ってる変なスタンプのレパートリーも切れかかった頃、最後に、また彼から『ばーか』とメッセージが入り、おれ達のやりとりは終わった。
あーあ、やっぱり今日も彼を振り向かせる事が出来なかった。
おれは、ため息をついてソファーに寝転んだ。
-fin?-
コメント
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やば!絶対両片思いやん...!!