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控え室の扉が、音を立てずに開いた。
「……涼ちゃん?」
元貴と若井だった。
ベッドに横たわる涼ちゃんの頬は、熱を持ったように赤い。
若井がそっと近づき、
手の甲で額に触れる。
「……熱あるな。しんどい?」
その声は、現場で聞くよりずっと低くて静かだった。
涼ちゃんは、少しだけ目を開けて、
何も言わずに小さく頷く。
それ以上、言葉が出てこなかった。
元貴が何か言おうとした瞬間、
涼ちゃんは布団を引き寄せて、
そのまま頭まで被ってしまった。
外の音が、遠くなる。
「……ごめん」
布団の中から、かすれた声。
誰に向けたのかは、分からない。
若井は無理に布団をめくらなかった。
代わりに、ベッドの横に腰を下ろす。
「謝らなくていい」
低く、はっきりした声。
布団の中で、涼ちゃんの呼吸が少し速くなる。
顔を見られたくなかった。
弱っているところを、
これ以上、知られたくなかった。
元貴が静かに言う。
「無理してるの、もう隠れてないからな」
布団の中で、涼ちゃんはぎゅっと目を閉じた。
何も返せない。
熱のせいなのか、
張りつめていたものが緩んだせいなのか、
胸の奥がじんわり痛んだ。
若井の手が、布団越しにそっと頭の位置に触れる。
撫でるわけでも、押さえるわけでもない。
そこにいるだけ、という触れ方。
「今日は、ここまでにしよう」
「監督とも話す」
その言葉を聞いた瞬間、
涼ちゃんの喉が小さく鳴った。
安心と、
怖さと、
申し訳なさが、全部一緒に押し寄せる。
布団の中で、
涼ちゃんはまた小さく頷いた。
逃げたみたいで、
でも、少しだけ救われたみたいで。
赤い頬は、まだ冷めない。
でもその日は、
“頑張らなくていい時間”が、確かにそこにあった。
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