寒い雪空の中を走る。
それはもう、ひたすらに。
体力がただでさえない癖に、俺は上着も何もかもを羽織らずに外に出た。
それほど、嫌だった。
君の怒った顔を見るのは。
ーーー
「はぁ、はぁ」
雪も水っぽくなってきて雨に変わろうとしていた。
俺は体力が尽きて、とりあえず進むことだけを目的に歩いていた。
その時に、ある公園を見つけた。
もう、こんなに知らないところまで来たならアイツも見つけれはしないだろう。
俺はそう考え、その公園に入ることにした。
ーーー
キィと軋む音がするブランコへと身を預ける。
冷たい風が頬を叩く。
ふと、あることに気づいた。
そっと、自分の顔を触る。
俺の顔は雪がかかったこともあり、濡れて乾いていた。
それと同時に瞼が重い。
「泣いて…たんかな…。」
走りながらだったからわからなかったが、泣いていた。
そう思うと、また罪悪感と涙が込み上げてくる。
どうにかして罪悪感だけ吐き出して、涙は飲み込むことは出来ないのだろうか。
俺はどちらもぎゅっと堪える。
それでも、なんとか罪悪感だけを吐き出してしまいたくて状況整理をすることにした。
ーーー
今回のことは…確かに俺が悪い。
だけど、あいつにあんな顔をさせる女性はどんなことでも受け止めてくれるはず。
そう思ったから……俺は叩いて
怒った。
だって、あいつには借りがある。
うっしーや、ガッチさんなどの人と繋げてくれた。
それで俺は幸せになれた。
だからさ、キヨ君を今度は幸せにしないとって思ったんだよ。
「けど…伝わらなかったかぁ……。」
そりゃまぁ、本気のことを罵倒されたら誰だって怒るだろう。
けど、それほど俺はお前から受け取った。
君が怒る位の幸せを。
雨がだんだんと激しくなってくる。
あぁ、これはあの人を怒らせた、悲しませた罰なのだと思った。
俺よりかも人気があり、可愛げがあり、愛されている。
そんな奴を俺が…あんな知らない顔にさせた。
雨と共に考えが流れては落ちて、流れては落ちてを繰り返す。
繰り返すたびに消えそうな声です呟いてしまう。
「ごめんなさい」
何度言っても届かない。
いっそのことこのブランコに勢いをつけて後ろに倒れてしまおうか
その方がずっと楽だしね。
そう思い、地面を蹴ってブランコを揺らす。
うん、ここからなら。
消えることができる。
俺はぱっとチェーンから手を離す。
ばいばい、キヨ君。
ーーー
ガシッと急に捕まれる。
「ぅえ…?!」
そのまま傘とともに引き寄せられる。
「は…?」
ぎゅっと力強く。
離さないとでも言わんばかりに。
俺は突然の出来事に急いで顔を上げた。
「え……キヨ君…?」
ーーー
顔は見えなかったが俺よりも高い身長。
そして俺の家の薄く汚れがついたビニール傘。
彼は俺を離そうとしない。
「……なに…」
「…ん?」
「……何しようとしてたの」
「え、あ……いや…なにも…」
咄嗟に誤魔化すとそれを見透かしたかのように更に力を強めた。
「嘘でしょ。」
「あのね、このまま聞いて?」
周りの雨の音なんて聞こえない。
キヨ君の声だけ。
「レトさん、好きです。」
「俺は、レトさんのことが大好きです。」
「ごめんね。確かに、レトさんはそんなことしないよね。」
「だって、俺の選んだ人だもん。」
「くひひ」と軽く笑って言葉を綴るキヨ君の耳は真っ赤だった。
「別にね、押しつけようとはしてないよ。気持ち悪いもんね。」
「あ…」
そう言う…ことだったの…?
キヨ君の言葉を聞いている時、俺は自分自身の鼓動が早く、体温が上昇しているのが分かった。
「キヨ君……あの、ね…」
なんで、こんなやつなんかに、動揺してるんだろう。
「なに?」
子どもをあやすかのように低いトーンだが優しく話してくれる。
おれ、こんな気持ちはシラナイ。
けれど、口から出た言葉はいやに簡単で。
「わ、かんない」
「…そっか。」
「………あー…もう…。駄目もと…だけど………えっとー……レトさん、付き合って下さい」
もごもごと俺の肩に顔をうずめて聞いてくる。
その仕草がちょっと、ほーんのちょっとだけ年下な感じがして可愛くて。
耳元で小さく返事をした。
キヨ君はそれを聞いて、土砂降りの雨の中
傘を落とした。
「知らない。シラナイ。」 end.
ーーー
コメント
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うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ末永くお幸せに
うぎゃぁぁぁぁ!!!!!続きありがとうございます!!!!!発狂しながら見てました(( これは完全にOKですね、キヨレト誕生おめでとう!!!(頭がおかしくなっているので気にしないでください)