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仕事終わりまで、あと数時間。
——のはずなのに。
「無理だ……」
ジョン・ドウはデスクに突っ伏していた。
(今日デートって何!?急すぎるって!!)
頭の中がぐるぐるしている。
(場所!?パンケーキ!?服!?会話!?)
「全部わからん……」
その時。
「はいはい、落ち着きなって」
椅子を引いて座る
シェドレツキー。
「予想通りだな」
隣に立つ
デュセッカー。
「助けてください……」
即土下座レベル。
「まず深呼吸しろ」
「はい……」
「で、状況整理」
デュセッカーが指を立てる。
「①相手から誘われた」
「はい」
「②“試す”段階」
「はい」
「③場所は落ち着いたところ+飯」
「はい……」
「——勝ちだな」
「早い!!」
シェドレツキーが笑う。
「じゃあ具体的にいくよ〜」
勝手に講義開始。
「①場所」
「はい!」
「社内でもいい」
「え?」
「無理に外行くより、慣れてる場所の方がいい場合もある」
「なるほど……」
「人少ない会議室とか、休憩スペースとか」
「確かに……」
「②料理」
デュセッカーが続ける。
「パンケーキは確定」
「はい!」
「でも“ちょっとだけ特別感”出せ」
「特別感……?」
「トッピングとか、盛り付けとか」
「なるほど……!」
(やれる……かも……)
「③会話」
シェドレツキーが真顔になる。
「これ一番大事」
「はい……!」
「頑張ろうとしすぎるな」
「え」
「普通でいい」
「普通……」
「むしろ無理に盛り上げるな」
「……」
「昨日の続きみたいに話せばいい」
——それが一番難しい気もするけど。
でも、一番しっくりくる。
「④距離」
デュセッカーがぼそっと言う。
「焦るな」
「はい」
「でも、引くな」
「またそれ!?」
「バランスだ」
「難しい!!」
「最後」
シェドレツキーがニヤッと笑う。
「楽しめ」
「……」
「お前が楽しんでないと意味ない」
「……はい」
少しだけ、肩の力が抜ける。
「よし、行ってこい」
「いけるいける」
二人が軽く背中を叩く。
「……ありがとうございます」
今度はちゃんと、落ち着いた声で。
―――――
同じ頃。
別のフロア。
ジェーンは一人で資料を閉じていた。
「……」
手が少しだけ止まる。
(今日)
頭の中に浮かぶ。
(デート……みたいなもの)
自分で言った言葉。
「……」
小さく息を吐く。
「……らしくない」
分かっている。
普段なら、こんなことはしない。
必要ないと思っていたから。
でも——
(……試すって言ったし)
言い訳みたいに考える。
でも、それだけじゃない。
「……」
ふと、思い出す。
パンケーキの味。
一緒に歩いた帰り道。
手が触れた瞬間。
「……」
ほんの少しだけ、心臓が早くなる。
「……なにこれ」
小さく呟く。
よく分からない感覚。
でも、不快じゃない。
むしろ——
「……」
ほんの少しだけ、頬に手を当てる。
(……楽しみって思ってる?)
一瞬、自分で驚く。
すぐに視線を逸らす。
「……別に」
否定するけど。
完全には消えない。
窓の外を見る。
夕方。
もうすぐ仕事が終わる。
「……」
少しだけ考えて。
「……ちゃんとしないと」
ぽつり。
髪を軽く整える。
服の乱れも直す。
——普段より、少しだけ意識している。
「……」
そして小さく。
誰にも聞こえない声で。
「……悪くない」
ほんの少しだけ、笑った。