テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
仕事終わり。
社内の一角、少し静かな休憩スペース。
簡単なテーブルと椅子。
人もほとんどいない。
(ここでいいよな……)
ジョン・ドウは、準備した材料を並べながら深呼吸する。
(落ち着け……普通に……普通に……)
手が少し震える。
でも。
(楽しめ、だよな……)
思い出す、
シェドレツキーの言葉。
(……よし)
「……来た」
小さな声。
振り向くと——
ジェーンが立っていた。
「お待たせ」
「いえ!全然!!」
(声!)
「……うるさい」
「すみません!!」
でも。
ジェーンはほんの少しだけ、表情が柔らかい。
「……ここでやるの」
「はい、あの……落ち着いてるかなって……」
「……いいと思う」
短く頷く。
(よし……!)
焼き始める。
ジュワッ、と音がする。
甘い匂いが広がる。
「……いい匂い」
ジェーンがぽつり。
「ほんとですか!?」
「声」
「すみません!!」
でも嬉しい。
少しして。
「……できた」
皿に盛り付ける。
いつもより少し丁寧に。
フルーツと、少しだけトッピング。
「どうぞ」
「……ありがとう」
受け取る。
一口。
「……」
少し間。
(どうだ……!?)
「……美味しい」
小さく、でもはっきり。
「よかった……」
心から安堵する。
静かな時間。
向かい合って座る。
昨日までと違う。
“デート”としての時間。
「……」
ジェーンはゆっくり食べながら、
「……これ」
「はい」
「前より好きかも」
「……っ」
(好きって言った!?)
脳が一瞬止まる。
「……味が」
「ですよね!!」
危なかった。
「……ジョン」
「はい」
「昨日の話」
少しだけ空気が変わる。
「……はい」
「まだ、答えは出てない」
「……はい」
分かってる。
でも、少しだけ緊張する。
「でも」
フォークを置く。
「こういう時間は」
少しだけ間。
「嫌じゃない」
「……」
昨日と同じ言葉。
でも、意味が少し違う。
「むしろ」
視線を少しだけ逸らして、
「……もう少し、続けてもいい」
——それは。
「……っ」
ほぼ答えに近い。
「……はい」
静かに頷く。
その時。
ガサッ。
「!?」
物音。
二人が同時に振り向く。
物陰から——
「やば、バレた?」
ひそひそ声の
シェドレツキー。
「お前が動くからだ」
呆れる
デュセッカー。
「えっ」
ジョンが固まる。
「なにしてるんですか!!」
「いや〜偶然通りかかってさ〜」
「嘘ですよね!?」
そして——
そのさらに後ろ。
ギィ……
ゆっくり開く扉。
そこに立っていたのは——
ビルダーマン。
「……観察していた」
「社長まで!?」
完全にアウト。
「いやだって気になるじゃん?」
シェドレツキーが開き直る。
「重要案件だぞ」
デュセッカーも真顔。
「社内の士気に関わる」
「関わらないですよ!?」
ジェーンはしばらく無言で三人を見る。
「……邪魔」
一言。
空気が凍る。
「はい撤退〜!!」
「失礼した」
即撤収。
ビルダーマンも頷く。
「……続けろ」
普通に去る。
「なんなんですかあの人たち……」
ジョンが呆然。
静けさが戻る。
少しだけ気まずい。
でも。
ジェーンは小さく息をついて、
「……続ける」
そう言って、またフォークを取る。
「はい……」
ジョンも座り直す。
少しして。
「……さっきの」
「はい」
「“好き”って言ったの」
「……っ」
心臓が跳ねる。
「……覚えてる」
「はい……」
「……味、だけじゃない」
小さく。
でも確かに。
「……っ」
夜の静かな空間。
邪魔は入ったけど。
それでも。
二人の距離は、確実に前に進んでいた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!