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 目覚まし時計のけたたましい音で目が覚めた。

 慌てて飛び起きてアラームを切り、時計に目をやれば朝7時。

 カーテンの隙間からは朝日が差し込み、部屋の中を明るく照らしている。

 妙にスッキリした気持ちと身体の軽さに上半身を起こし、けれど昨晩見た夢の続きが気になって二度寝を試みるものの、残念ながら眠気そのものがキレイさっぱり取れていた。

 まさか、真帆とあんな濃厚なキスを交わす夢が見られるだなんて思いもせず、そのまま夢の中で幸せを満喫してやりたかったのだけれど、眠れないのであれば仕方がない。

 僕にできることはただ一つ、朝ごはんを食べてさっさと登校し、遅刻してくるであろう最愛の彼女|(仮)の真帆を待ち構えるのみだ。

 昨日思い悩んでいた自分を思い返して、辿り着いた結論はたったひとつしかなかった。

 真帆に今のこの気持ちを告白して、改めて彼氏にしてもらうのだ。

 僕は勇んでベッドから飛び起きると、暑さの為か脱ぎ捨てていたパジャマを拾い集めて畳み、制服に着替えた。

 一階に降りると例の如く両親は仕事に行ってしまっていたが、ありがたいことに朝ごはんが用意されており、玄関には例の魔術書を詰め込んだ紙袋が4つほど準備されていた。

 母さんと父さん、それぞれに感謝しつつ朝ごはんを食べ、とりあえず魔術書は帰ってからで良いだろうと、通学鞄を肩から掛けて家を出た。

 世界はいつもと変わらなかった。

 真帆が空を飛んでいるのを目撃したのが先週の初め辺り。そこから色々あって、真帆が魔法使い……魔女であることを知って、記憶を消されかけて、でも仮の彼氏として付き合うようになって。

 そういえば、まさか井口先生まで魔法使いだったなんて本当に驚いたな。そのうえカウンセラー室でよく見かけていた榎先輩まで魔女だったし、何なら黒幕?がそのカウンセラー室の緒方先生だったり……

 なんか怒涛の一週間だったな、と思うと、なんとも感慨深かった。

 にも関わらず今目の前に広がる光景は今までと何一つ変わらなくて。

 唯一の変化は、きっと僕と真帆の関係と、真帆に対する僕の気持ちくらいだろうか。

 学校に到着し、教室に向かおうとしたところで不意に気になってまずカウンセラー室に行ってみたが、灯りはついておらず鍵も掛かったままだった。

 結局、緒方先生はどうなったのか気になって、一足先に聞いておこうと職員室に行くと、

「おう、シモハライ。今日は早いじゃないか」

 と嘲るような声で井口先生に言われ、

「おはよう、シモハライくん」

 その隣に座る榎先輩から挨拶された。

 なんで、こんな朝っぱらから井口先生のところに榎先輩が……?

「お、おはようございます」

 僕はとりあえず二人に挨拶してから、

「榎先輩、何書いてるんですか?」

 榎先輩は、井口先生に見守られるようにして先生の机に向かい、何やら一枚のプリントに文字を書き込んでおり、

「これか? 全魔協への入会手続き書いてもらってんのさ」

 と答えたのは井口先生だった。

「入会手続き?」

「そ。上の爺さま方に聞いてみたら、昔は榎のひい爺さんも全魔協の会員だったらしいんだよ。というより、実はむしろ協会発起人の中の一人だったらしくてな。息子さんやお孫さん……つまり、榎の爺さんや親父さんが全く魔力がなく魔法使いでもなかったから、ひい爺さんが亡くなって以降、全く付き合いもなくなったそうでな。爺さま方に榎の話をしてみたら"おぉ! あの榎さんのひ孫さんか! よし、協会に入れとけ入れとけ!"って言われてな。朝から呼び出して書類書いてもらってるんだ」

「……へぇ」

 僕が返事すると、不意に榎先輩が書類から先生に顔を上げて、

「先生、ここの魔法指導員の欄はどうしたらいい?」

「ああ、そこは俺の名前を書いといてくれ。あとでハンコ捺しとくから。ちなみにそれ書いたら、その時から榎は俺の弟子な。魔法使いの弟子」

「いいねぇ、魔法使いの弟子か。なんかカッコいいじゃん」

「だからって、箒バラしてコピー作って、辺りを洪水にしたりするなよ?」

「? なにそれ、どういう意味?」

「…….ごめん、なんでもない」

 そんな会話を聞いていると、なんとなくこれからの二人の様子が容易に想像できるようだった。

 僕は改めて口を開き、

「それで、緒方先生はどうなったんですか?」

「ああ、それな」

 と井口先生はひとつ頷き、

「元々緒方先生のお婆さんは、榎のひい爺さんの家でお手伝いさんとして働いていたんだそうだ。そのお陰でひい爺さんの、例の魔法の腕を知っていたんだとさ。けれど気持ち悪いって理由で埋められて、埋めるくらいなら自分のものにしてやろうと婆さんは考えたらしい。でもすぐに掘り返すことも出来ないまま、あっという間に跡地にこの学校が建ってしまった。諦め切れずに婆さんは孫である緒方先生にまでその魔法の腕を語り継いで、って感じだな」

「ふぅん? で結局目的は何だったんです?」

「知らん」

「……は?」

 どゆこと?

「いや、これが全く口を割らなくてな。どう問い詰めても答えなかったんだよな、。まぁ、何となく想像はつくような気はするけど、事情は人それぞれだし、プライバシーに踏み込むのもアレなんでな、都合の悪い部分は記憶を閉じさせてもらったよ。今、彼は記憶障害って事で知り合いの医者のとこで様子見てもらってる。まぁ、明日からは普通に仕事に戻るだろ。何事もなかったみたいにな」

「……そうですか」

 と何となく納得した僕は、

「じゃぁ、教室に行ってます」

 言って職員室をあとにしようとしたところで、

「あ、もう知ってるかもだが、今日明日は楸、休みな」

「……え」

 僕は思わず言葉を失う。

「そう、なんですか?」

 井口先生は軽く頷き、

「体調不良でな。今朝早くに加帆子さん……お婆さんから連絡があった」

「そ、そうですか……」

 言い知れぬショックを受けながら、けれど僕はなるべくそれを表に出さないように、職員室をあとにした。

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