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緑山 紫苑
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目の前の魔法使いに突撃するフィニス。
その魔法使いが無数の雷の槍を生成し、フィニスに向かって撃ち出すも、気にせず突進する。
フィニスの後方より、魔法使いの術式構築を観察していたニティアが、魔力のこもった杖を地面に突き刺す。
バチチチッ!
フィニスの目の前に突如現れた光る粒子が、雷の槍を強制放電させ、四散させる。
進行の妨げがなくなったフィニスは剣を振りかぶり、魔法使い斬りかかった。
ヒュッ
斬りかかった剣が空を切る。目の前にいたはずの魔法使いが突如消えていた。
その時……
「キャッ!!」
後ろからニティアの小さな叫び声が聞こえ、慌てて振り向くと……
「油断しましたね?」
消えたジャヌスがニティアの首を腕で押さえながら、魔力の込めた杖をフィニスに向けている。
「剣を捨てなさい。さもないと……ニティアには少し痛い目を見てもらいます」
そう笑顔で言うジャヌス。
フィニスは小さなため息をつき、手に持っていた剣を離した。ニティアも同じく杖を手放す。
それを見たジャヌスが、ニティアを解放した。
「2人とも、いい連携でした。ですが……意識が前に向きすぎです」
その場に座り込むフィニスとニティア。
「フィニス。ニティアを信じて突撃しているように見えましたが……やはりどこかで信じきれていませんね」
「いや、作戦通りちゃんと信じて突撃したんだぜ!?」
苦笑いをするジャヌス。
「恐怖のあまり、意識が目の前の魔法に行きすぎており、もうひとつの”起こり”を見逃していましたよ。魔法が打ち消される前に、私の足の”起こり”が見えていれば……私の足に移動速度向上の魔法がかかったことが予測できたはずです」
「そんなんできるかぁぁぁ!」
目の前に座り込んでいるニティアの頭を杖で軽く叩くジャヌス。
コツン
「いたっ」
「貴方も、フィニスを守るため……魔法の先読みをしようと術式構築を見過ぎです。構築している術式がひとつとは限りませんよ」
「ぶー……」
頬を膨らませて口を尖らせるニティア。
「相手に見せつけるように、目立つような術式を組み込み、その影に隠れてもうひとつの術式を組む。それを見逃してしまうと……こう言う状況にもなりかねません」
「そんな器用なことできるのはジャヌスさんくらいな気がします……」
くすりと笑うジャヌス。
「まぁ、私は少しだけ強いですから」
そして、くるりと身体を回転させ、2人に背を向ける。
「それでも、守れなかった人がいます。目の前でただ死んでいくのを……見ていることしかできなかったことも……助けたかったのに助けられなかった人も」
座り込むニティアの近くに歩いてきたフィニス。
「先生……」
「ジャヌスさん……」
一瞬の間。
顔は見えないが、すごく昔のことを思い出しているかのような……。
「なんかすごい昔の事のように言ってるけど……そういえば先生って今何歳なの?」
ピクッ
ジャヌスの肩が僅かに動いたのをニティアは見逃さなかった。
「あ、あんた!どのタイミングで聞いてるのよ!それに、女性に年齢を軽々しく聞くな!」
「いや、だって先生昔から全然見た目変わらないし!気になったから!」
ジャヌスがゆっくりと振り返った。
「フィニス」
笑顔のジャヌス。
「聞きたいですか?」
ジャヌスの全身から漂う冷たい空気。
全身から発生している”起こり”にフィニスは鳥肌がたった。
「あ、大丈夫です!先生はいつまでも若くて綺麗です!!」
「そそそそそうですよ!そんなの気にしたことありません!ジャヌスさんはジャヌスさんです!」
ジャヌスが指をパチンと鳴らすと、2人がの肩がピクッと大きく震える。
次の瞬間、3人の周りに張られていた結界が消えていた。
「さて、今日はこれくらいにして帰りましょうか」
そう言って歩き出すジャヌス。
その背中を見つめる2人。
「死ぬかと思った」
「2度とその話題は出さないでね」
そう小さく呟く2人。
「何か言いましたか?」
遠くを歩いていたジャヌスが振り返る。
「何も言っていません!」
「は、早く帰りましょう!」
小走りでジャヌスの背中を追う2人であった。