コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ミランダ王女殿下の暗殺を受けまして緊急貴族会議をします」
リリアンの言葉と共に緊急貴族会議が始まる。
真夜中の呼び出しにも関わらず、王宮の要職についている貴族は2時間ほどで集まった。
私はエイダンと天井裏に潜んで、覗き穴を作り貴族会議の様子を伺った。
私が実は生きていることは国王陛下と、リリアンだけに告げてある。
キースには私は殺されたということにしてある。
私はキースを疑っているわけではなく、純粋な12歳の男の子である彼に演技はできないと考えたのだ。
「国王陛下、キース王子殿下、心中お察し致しますが、ミランダ王女の暗殺受け明日より国内が混乱するかと思われます。何しろ、殿下はエスパルの人間によって殺されています。エスパルの平民というのは恐ろしいですね。何でも、隣人同士で殺し合うような普通では考えられない訓練を受けているそうではないですか。リリアン様、やはりあなたはエスパルのスパイだったのですね。王宮の内部に入り込んで、王族を根絶やしにするおつもりでしたか?」
ルアー公爵がまるで用意してたかのような言葉を連ねている。
やはり、彼は自分が宰相職をおろされたのが不満だったのだろう。
リリアンによると暗殺者のエスパルの人間と彼女は面識はないとのことだった。
「暗殺者と私は何の面識もございません。推測で物事を言うのは控えてください」
リリアンは至って落ち着いた様子でルアー公爵を制した。
私はリリアンの言葉を信じた。
なぜなら、彼女は私と同じ我が子が愛おしくて仕方がないお母さんだからだ。
今、整った環境で教育を受け幸せに暮らしている娘の幸せを揺るがすような選択をするはずがない。
単一民族国家で水色の髪と水色の瞳を持った人間は一目でエスパルの民とわかる。
そして不気味で情報が少ないエスパルの民による王女の暗殺は、エスパル出身のリリアンと人々は結びつけるだろう。
エスパルから亡命して来た人間にルアー公爵が、私を暗殺するよう唆したと私は予想していた。
「失礼ながらリリアン様、事実は重要ではありません。危険国家と見做されてるエスパルの人間が我が国の王女を暗殺したのです。国民は当然、エスパルの民を受け入れたことを非難するでしょう。責任をとって宰相職を辞任した方がよろしいのではないでしょうか?」
スルガ伯爵が淡々とリリアンに辞任を促す。
王女が暗殺された現場がすぐ近くにあると言うのに、落ち着きすぎている。
普通、暗殺者の仲間がまだ潜んでいるのではないかと怯えたりはしないだろうか。
彼は一夫一妻制や他国の女性が政府の中央に進出して来ている現状に不満を持っていた。
彼も今回の暗殺計画に関わっている可能性が高い。
「では、スルガ伯爵はミラ国民の誰かが罪を犯したら、その責任を負って辞任するのですか? 暗殺者は私には関係のない方です」
リリアンは10年前、ラキアスの前で震えて立ち去った人間とは別人のように強くなった。
その強さの理由は彼女の娘がミラ国で今幸せに生活をしていて、その生活を彼女が守りたいからだと知っている。
「なぜ、みなさん平気な顔をしているのですか? 姉上が亡くなったのですよ」
キースは顔を覆いながら必死に声を振り絞って皆に訴えていた。
突然、真夜中に起こされて姉の死を告げられ明らかに動揺している。
彼の悲しむ姿に胸が痛くなる、私は今生きていることを早く伝えたてあげたい。
でも、そのためには多くの証人の前で犯人あぶり出し、暗殺の目的を明らかにしなければならない。
エイダンが私の心中を察したのか、私の手に手を重ねてきた。
今、エイダンの指示により、ルアー公爵邸を王宮騎士団が侵入し捜索している。
私の暗殺を計画した証拠を隠滅される前に獲得するためだ。
「キース王子殿下がお姉様をお慕いしていたことは存じ上げております。でも、殿下には今こそ立ち上がって頂きたいのです。国王陛下、僭越ながら申し上げさせて頂きます。今回の暗殺の件はやはりミランダ王女主導による急速な改革によって、利点ばかり見て危険因子を多く王宮に入れてしまったことかと思われます。護衛騎士にミラリネという猛獣を飼いながら、今回の暗殺はどうして防げなかったのでしょうか? 暗殺者がすでに部屋に潜んでいるというところまで、獣の頭では考えられなかったのでしょう。暗殺者であるエスパルの民は自害を図ったようですが、彼とリリアン様の繋がりがないとどうして言い切れますか? ミラリネもエスパルも受け入れてはいけなかったのです。明日からミラ国民は安全と思われた王宮での王女の暗殺に恐怖するでしょう。この責任はどなたが取るべきだと思いますでしょうか」
ルアー公爵の自白が取れた。
暗殺者はエイダンが始末したのであって、自害したのではない。
おそらく私を暗殺次第、自害するように暗殺者には指示していたのだろう。
「余が国王の座を退くことで、この責任を取ろう。ミランダの改革を最終的に許したのは余だからな。娘可愛さに国民を危険に晒した愚かな選択をした王は退いて、ミラ国を共和制にでもしようか?」
淡々と言ったミラ国王陛下の言葉にルアー公爵がほくそ笑んだのが見えた。