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あれは、中学二年の終わり頃だった。
輝がずっと想っていた子――隣の席で笑ってくれた、何気ない会話で頬を染めてくれた、そんな大切な子が、ある日ぽつりと漏らした。
「……最近、おじさんが、やたら家に来るの」
冗談交じりに笑ったその顔は、どこか怯えていて、でも「怖い」とは言わなかった。言えなかったのだ。
それが、自分の父親だったと知った時の衝撃は今でも忘れない。
俺の好きな人に手を出さないでくれ…。
助けたい…助けたいのに方法が分からない…。この子が何をしたっていうんだ…!
妨害なども何回はした。
だけど、彼女はどんどん思い詰めていく。
違う。君が悪いんじゃない。
やめてくれ…そんなふうに自分を責めないでくれ…!!!
ただただ無力感がそこにあるだけだった。
彼女は明らかに嫌がっていた。泣きながら、震える声で訴えた。
「助けてよ……輝くん……」
でも――輝には、何もできなかった。
ただの中学生に、父親を止める力なんてなかった。何を言っても、大人たちは取り合ってくれなかった。彼女は、結局そのまま引っ越してしまい、再婚の報せだけが届いた。
「お前に守れるわけがないだろ、ガキが」
「…!俺の大切な人を返せ…!返せよ…。ふざけるな…」
父の言葉が、今でも耳に焼きついている。
泣くことしか出来なかった。
今でも顔を見るだけで怒りが湧いてくる。
だから、輝は誓った。
二度と、大切な人が泣いて頼ってきた時に、無力でいたくないと。誰かを守れる自分になるために、強くなろうと決めた。
筋トレは、ただの趣味じゃない。悔しさと罪悪感の積み重ねなのだ。