「フランシスさん。今日髪結んでらっしゃるんですね」
「うんそうだよ。イケメンでしょ?」
午後13時 イギリスの空港で待ち合わせと約束をマシューとした。マシューの持つ荷物を見ていると長居をする予定にも見える。手配したタクシーの中で慎ましく喋る。
「あいつの家に泊まるのか?」
「あぁいえ。久しぶりにイギリス観光でもしようかと。フランシスさんもいかがですか?」
「いやーいい。ごめんねマシュー。」
空気の詰まりを感じ、それ以降は話すことなくアーサー宅へ向かった。
「よぉ入れよ」
ドアまで迎えに行くと2人ともまずは俺のお腹を見て目をまん丸にしていた。
「え,,,?アーサーさんそれ,,,」
「あーまぁえっとな」
とりあえずと思い、マシューの手を掴み椅子へと案内した。その場にはオランダとルクセンブルクがいる。菊とベルギーには退出をしてもらった。
「簡潔に話すと、妊娠したんだよ。双子な」
「はぁ!?いや,,,え?国って、しかも男が妊娠できるのかよ!?」
「まぁこれを見たら分かるだろ」
「え?だってもう腹でかいじゃん。いつから?」
「9か10月ぐらいには判明してたな。予定日は 7月上旬くらいってさ」
途端にマシューの手がピクっと動いた。
「,,,父親は?2週間ぐらい前にDNA鑑定したって菊が言うよったぞ」
「オランダ」
「相手も男、まぁそっか男,,,か」
フランシスの視線が段々落ちていくのが分かる
「,,,,,,は?」
その場の4人の声が揃ったように聞こえた。ルクセンブルクでさえ困惑の表情を見せる。
「え,,,アメリカさんですか?」
「あぁ。99.8%だったっけな」
少し間が空いたあと、オランダが口を開く。
「先帰るわ。聞くことはもう聞いたしな」
「え?えっちょ兄さん!?」
「ルクセン。そこのベルの荷物とっときね。どっかキッチンにでもおるやろ」
「,,,オランダ。」
「菊から話聞いたんやろ。後はもうお前が決めるだけや」
室内にはマシュー、フランシスそして俺だけが残される。
「,,,え?そんなだって,,,僕たちはアーサーさんの弟で,,,」
「いつやったの」
困惑するマシューの前にスっと出てきて冷たい声で言う。
「,,,お前と会った月の下旬とかそんぐらい」
「,,,,,,で?それでどうすんの。そんな状態で明日の会議なんて出たらすぐ注目の的だよ。あいつなんか血相変えて来るんじゃない?」
「あぁ。知ってる」
「明日からの世界会議はリモートで参加する。そして明日は俺からこのことを伝える。世界中に」
「え!?」
マシューが肩を掴んでくる。
「世界に知らすということは危険ですよ!僕は、反対します,,,っ」
「マシュー。お前にはいつも気を使わせてしまうな。本当にすまない。でもそれでもこれ以上俺は隠したくない。 」
「,,,産まれてくる子供はどーすんの?」
「,,,国なら育てる。普通の子供なら養子に出してイギリスでも、アメリカ国籍でもない裕福な夫婦に明け渡す。」
「分かってないんですか!?」
「こればっかりはな」
マシューはなにか言い出そうとしたが堪えたような顔をしてそのまま部屋を出ていった。
「,,,本当にマシューを苦しませることが好きなんだなお前は。」
「お前とああいうことをしたって言うのは避けたぞ?」
「,,,,,,」
「,,,裏切ったと思うよお前のこと。1000年もいた仲よりも300年の仲の方を優先したからな」
「別に、そんなこともういいよ」
「お前もなんか思ってんだろ?俺の話したことについてな」
「,,,はっそんなことないよ。ただ子供にだけは罪がないんだから元気に産めば?ってぐらい」
「7月4日に苦しんでいる俺を200年も見ていて思わないことなんてないんだろ?」
バッとこちらを見てくる。
「,,,この前お前も見ただろうけど未だに左肩は癒えねぇよ傷はないけどな」
「もうここまできたら俺も何かの因果だって思ったよ?予定日は7月で?産まれてくるのは【双子】?,,,なんて憎いんだろうね」
「そうだな」
フランシスの両手を握りに行く。
「そんで、出産したらお前らとはああいう行為はしない。もう二度と。」
「,,,え?」
「,,,またもう一度犯してしまったら。それはもう命の冒涜にも並ぶ。」
コツンとおでこをぶつける。
「,,,,,,またな。フランス」
「,,,,,,,,,あぁ。またなイギリス。」
静かな廊下にマシューはいた。そこには本田菊も一緒に。
「,,,帰ろっかマシュー。またね菊ちゃん」
「はい。また。」
帰りのタクシーの中
「なにしてたの?マシュー」
「,,,絵画を。懐かしいなと。恐らく菊さんにはとてもお世話になったので菊さんにお礼を言ってました。」
「,,,明日の会議、フランスで13時からだよ 」
「,,,え?」
「観光なんでしょ?やりたいことやってきな」
「,,,,,,はい」
おまけ
「菊ーーー、」
「上手くいけましたか?」
「思ってたことは、まぁ全部っちゃ全部。」
「ちゃ?100は話せてないんですね?」
「ほんと見逃さないよなお前、」
「,,,私ももうここには頻繁に来なくて良さそうですね」
「本当に世話になったよ。ありがとう」
「いえいえ。」
「その花、オランダと一緒に帰ってきた時に持ってたよな。この季節には珍しいけど、なんでその花なんだ?」
あの日、福岡に行く前の日です。暑くて縁側でだらけているとすぐ近くに小さな畑があったのを見つけたんです。恐らく長崎さんが作ったのでしょうね。暑いのに真っ直ぐと伸びている葉の中に1輪の向日葵が咲いていました。
ちなみに、私のお腹の中に居たのは女の子でした。石墓には「ひまわり」と彫ってあるんです。オランダさんには1回だけ名付けを相談したことがあったのですが、覚えていたんですよね。
コメント
1件