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マシュー目線


夜遅くにメールを送った。

【明日、朝早くに貴方の家へ行ってもいいですか?】

返信は意外にも早くかえってきて早朝6時に会うことになった。


朝早くなので、使用人の数はいつもより少ない。できるだけ小さな物音で階段をあがり、アーサーさんの部屋へ向かう。トントントンとノックすると、「入れ」と中から声がする。カチャっと音がなり部屋に入るとベッドの上に座っているアーサーさんがいた。

「おはようございます。すみません、体調良くないんですよね?」

「いや、ちょっとだるいくらいだが体は起こせるから。マシュー。こっちに来い。」

隣をぽんぽんと叩き呼ばれた。ちょこんと座ると頭を一撫でされる。

「え,,,?」

「クマができているぞマシュー。かくいう俺も昨日編み物をしていたから少し寝不足気味でな。」

「す、すみません。やっぱり日を改めて、」

「よって、俺はただ【静かに】していようと思う。マシューは好きにすればいいぞ」

「,,,え?」

顔を見ようと思ったが、グルンと前に位置を戻されたので仕方ないがそのまま話し始めよう。


「,,,僕は別に違和感とか感じたわけじゃないんです。気持ち悪いとかも。でも、一つだけ突っかかるように嫌悪感を抱いてしまうことがあります。」


「あの日、敵だった2人がなんで今更アーサーさんに構うのかって。散々、人のプライドを虐げてきたのに,,,今更自らの欲でかつて壊した人に近づくだなんて。,,,,,,あの時の、今でも残っているんでしょう?アーサーさん。」

「,,,,,,知ってたのか」

「寝てたんじゃないんですか?アーサーさん」

「静かにしてるだけだからな」

「,,,ただの僕のわがままだと思って聞いてください。忘れても構いません。」

撫でていた手が止まり、もう離れなければいけないのかと立ち上がると、キュッと手を握られた。

「,,,昨日は少し暑くてな。汗をかいたみたいなんだ。拭いてくれないか?」

上半身のシャツのみを脱ぎ、背中をこちらへ向ける。左肩に【撃たれた跡】が残っていた。

スーッとなぞりながら触る。

「,,,痛いですか?」

「いや?そんなだな。たまにしか痛まねぇよ」

「,,,そうですか。」

黙々と少し湿ったタオルで拭き、終わって片付けようとするとまだ時間はあるか?と聞かれる。まだありますと答えるとアーサーさんは1人歩き出す。

その先は暗く、使用人でも通らないようなホコリが溜まってそうな廊下。そこにはアーサーさんの絵画が壁に飾られている。

「,,,菊が、言っていたんだ。「マシューさんといたんです」ってな。それだけ言ってたんだがどこか素っ気ない顔だったから。なんとなくお前から連絡は来るだろうなと思ってたぞ」

「,,,あははやっぱり?」

「ここに,,,来たんだな。すこしほこりっぽさが薄い。」

そこには僕とアルフレッドを膝に乗せ少し頬を緩ませたアーサーさんが描かれた絵画があった。しかし、アルフレッドの顔には何か赤黒いものがあり塗りつぶされている。

僕はなぜそうなったのか、知っている。


独立戦争が終わり、アルフレッドの荷物を全て破棄したあとのことだ。アーサーさんは酷く荒れていた。ベッドから動かないと思えば嵐の日に突然剣を持ち外に出ていたり包帯を変えなければいけないのに血が滲んだままどこかへ行っていたり。このアルフレッドの顔に被さる赤黒いものはアーサーさんの血だ。

元々、アルフレッドが出ていった頃に顔自体に穴が空いていたのを発見した。恐らくアルがやったんだろうけど。そのあとアーサーさんは全て塗りつぶした。


「,,,この絵も出産したら捨てようって思ってるんだ」

「,,,アーサーさんがそう言うなら。」

「友人が描いてくれたが、まぁ墓に行って謝ってやるよ。」

くるりと僕の方を向き頬に手をかざす。細い指だけれど暖かい。目を閉じる。


「,,,ありがとうマシュー。お前は最高の弟だ。愛してるぞ。」

「,,,こちらこそ。大好きですアーサーさん」



13時

ルートヴィヒが出席をとる。しかし、アーサーさんの名は呼ばなかった。いくつかの国は違和感を感じてザワザワとしたが、その後デジタルで用意されたアーサーさんの画面を見て会場内は静まり返った。

「アーサーは体調の問題からしばらくこの状態で参加する予定だ。」

「よろしく頼むな」

すると、どこからともなく、「どうして?」「イギリスの情勢はそんなに悪いの?」という声が漏れ出してくる。そこにピシャッと言葉が放たれる。


「実は子供が腹の中にいてだな。あっ俺の腹だぞ?出産まで近いし、だいぶ大きいから大事をとってあまり外に出ないようにしてるんだ」


ほらと言ってお腹を出してみせる。異常なそのお腹の大きさに他の国は認めざるを得なく、ざわめきが頂点に達する。アーサーさん自身は少し笑っているが落ち着いている。その混乱を横目に僕はあの日あそこにいた人達の表情を見ていた。

オランダさんはいつも通り落ち着いていたけれど、他の本田さん、フランシスさん、ベルギーさん、ルクセンブルクさんはニコニコと頬が緩んでいた。フランシスさんもアーサーさんと話したのだろう。いつの日かの禍々しい暗い顔はしなくなっていた。


所々でおめでとうや、男・国でも妊娠できるんだなという声が出ている中、1人会場で呆然とアーサーさんの画面を見ている男がいた。


アルフレッドだ。

米仏英(Bl 男性妊娠)

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コメント

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アル.....そんな奴だったか.....そっかそんな奴だったか

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