―side晴美―
最近の私は毎朝仕事に出かける彼が羨ましくて仕方がなかった。大人を相手に、大人の問題を語り合う事が出来る。
残された家で子供の機嫌を取り、「正美は偉いわね」と他の子達よりも優れていると褒めちぎってなんとか機嫌を取り幼稚園に通わす、そして何かと身に着けているものや、有機野菜や無添加物を食べているとマウントを取ってくる幼稚園のママ友に愛想を振って子供の夜泣きや歯科矯正の話をするよりよっぽどいい
今朝の斗真は内緒にしているのに私が入院で、いなくなるのを察知したのか、幼稚園のバスの前で乗らないことに決めたらしい、私の足にしがみついて大泣きして暴れる
苦笑いをする幼稚園の先生に両脇を抱えられバスに乗せられた、帰りのお迎えは母が来てくれる、その頃には私の帝王切開の手術は終わっているだろう
家に帰ってシャワーを浴びて入院準備品の最終チェックをする
キンコン♪とLINEがなった真希ちゃんからだ!
「わぁ!産まれたのね!やっぱり男の子ね」
青い帽子の小さな赤ちゃんを抱いて真希ちゃんは微笑んでいる
「疲れている感じだけど、とっても良い笑顔をしてるわ」
すかさずLINEの画面をタップする
キンコン♪「4日前の午前中に生まれたの、3000グラムちょっと、全然寝かせてくれない」
私は笑いながら返事を打つ
クスクス・・・「ようこそ、万年寝不足の世界へっ・・と・・・」
私は今から入院して午後の3時に帝王切開の手術をするとLINEを打つ
すると真紀ちゃんから頑張ってねと可愛いスタンプが届いて、お互いスタンプを送り合って、それからまた連絡すると送った
LINEを送り終わって、しばらくソファーに座って大きなおなかをこれで最後だと撫でてお腹の子に話しかける
「ねぇ・・・最後まで逆子だったわね・・・その体制が気持ち良いの?あなたが出来たってわかってからこの10か月色々あったけど・・・
あなたが健康で大きい事は検査でわかってる、そしてあなたを待っている家族はみんな愛情豊かで優しいわ、沢村家の末っ子としてうまくやってほしいと思っている・・・あなたのパパもママもあなたを愛しているわよ 」
壁時計を見つめる!康夫ったら遅いんだから!