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#青春
十色
319
バガラジー
41
240
京太郎@ドラマ部門1位獲得
2,162
肯定側の久条がまず口を開く。
その声は誰かを思う痛みに満ちていた。
(※以下、すべて英語でのやり取り)
「愛する人を守るための沈黙が時には最も深い正義になることもあると私は信じます」
対する否定側本田の語りに感情はない。
「感情は理解できます。しかしそれは事実の隠蔽を正当化する根拠にはなりません。正義とは誰にとっても等しく機能する原理でなければならない」
▼クロスエグザミネーション。
二人の天才の知性が激しく火花を散らす。
久条は「人間らしさ」を盾に戦う。
「例外を認めない社会に人間らしさはありますか?」
だが本田はその盾を冷徹な論理のメスで切り刻んでいく。
「人間らしさの定義が曖昧です。感情を根拠に判断を変えるその不誠実さこそが人を壊すのです」
「その曖昧さが社会を腐らせるのです。曖昧な愛で原理を歪めれば、社会は崩壊します」
そして本田のターン。
彼は久条の主張の核心を突く。
本田「あなたは誰かを守るために他者に嘘をつく権利があるとお考えですか?」
久条「嘘ではありません。伝えない選択です」
本田「その伝えないという行為が社会的に情報の操作に繋がるとは考えない?」
久条が言葉に詰まりながらも応戦する。
「私は、制度や原理も大切だと理解しています。けれど、誰かを守るために沈黙を選ぶことが、
必ずしも誤りだとは、私は思えないのです」
しかし瞬間、本田は彼女のその僅かな迷いを、完璧に見抜き、そして冷徹な言葉で被せた。
「誰が?何を持って?隠蔽すると、誤りではなくなるのですか?明確に定義できますか?」
その一言で会場の空気は完全に本田のものとなった。
彼の言葉はあまりにも冷たい。だが正しい。
「正義とは、個人の思いではなく、構造的に公平でなければならない。私はそれを、論理として断言します。」
――会場がシーンと静まり返る。まるで正解を提示されたような空気。
論理が静かに、そして完璧に、この場を包囲していた。
久条の心に、敗北という名の影が、そっと輪郭を描き始めた。
──届かない。どんなに思いを込めても、会場の空気は変わらない。
言葉が滑っていく。私の声が、意味を持たなくなっている。
これが、負けるってことなの? こんな形で、私のやり方が否定されるの?
彼女の視線がわずかに伏せられ、まつげの陰が瞳を曇らせる。
口元には迷いの色が浮かぶ。凛としていた女王の輪郭が、完全に揺らいで見えた。
奏:「まずいな。空気が完全に本田に持っていかれている」
ミラー:「ああ。女王の共感が怪物の論理に喰われている」
観客席にも明確な劣勢の空気が漂い始めていた。
結城が震える声で呟く。
「そんな。あんなに追い詰められてる亜里沙、私、初めて見た」
柴田が悔しそうに拳を握る。
「くそっ!ダメか?亜里沙」
斎藤が静かに、そして絶望的に告げた。
「万事休すか。残すは最終ステートメントのみ。だがこの空気を覆すのは不可能に近い」
その横で、山中がうろたえた表情を浮かべていた。
「こ、こんなことって!よりによって、初めて京都で全国大会が開催されるのに、京都代表が関西予選で消えるのかよ!?」
ミラー:「久条が完全に沈んでるな。まさか、あの絶対女王が」
奏:「人生初の本当の敗北が、あいつを飲み込むのか?これは目が離せないな」
司会者の非情な声が響き渡った。
「――それでは最終ステートメントに移ります!」
コメント
1件
第77話、読み終えました……。 久条さんの“守るための沈黙”って、すごく深くて優しい正義だと思ったんです。でも本田さんの「曖昧な愛で原理を歪めれば社会は崩壊する」って言葉が、冷たくて、それでいて正しすぎて、胸がギュッと締め付けられました。 あの会場の完全に本田さんに飲まれる空気、女王が初めて敗北の影を感じる瞬間…読んでて息が止まりそうでした。 つらいけど、すごく好きな回です……!