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深夜、ふと目が覚める。枕元に置いたスマホには、照からのメッセージが届いていた。
『明日、俺の車乗ってリハ行く?』
いつも通りの何気ない誘い。それだけなのに、胸が高鳴る自分が情けなかった。
(大丈夫って断れば、諦められるのか?)
だけど、そんな選択肢は最初からなかった。
『うん、ありがと』
短く返したメッセージを見つめながら、ため息をついた。
(届かなくても…側にいたい)
そう思うことしか、今の自分にはできなかった。
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リハーサルが終わり、メンバーが次々と帰っていく中、俺は一人でストレッチをしていた。
「ふっか、まだ帰らねぇの?」
照の声がした。振り返ると、いつも通りの無表情な顔。
「……もうちょい。身体固まると明日しんどいし」
「そっか」
照は荷物をまとめながら、軽く笑った。
その何気ない仕草に、胸がまた苦しくなる。
(俺だけ、こんな気持ちなのがバカみたいだろ)
好きになっちゃいけない。届かない気持ちなのに、どんどん募っていく。
「……ひかる」
無意識に名前を呼んでいた。
「ん?」
「……なんでもない」
「なんだよ、それ」
照が軽く笑いながら近づいてくる。
ふと、俺の手を掴んで引っ張った。
「ふっか、疲れてんのに無理すんなよ」
その優しさに、張り詰めていたものが一気に崩れた。
「……ずるいよ、照」
「え?」
「そんな何気なく優しくすんなよ……。期待したくなるだろ」
言葉が止められなかった。
「俺、照のことずっと……ずっと……」
声が震える。照が驚いたように目を見開いた。
「……ふっか?」
「……っ、もういい」
振り払おうとする手を、照が離さなかった。
「それ……どういう意味?」
「……わかんねぇなら、それでいいよ」
「いや、ちゃんと言えよ」
「言ったって、照の気持ちは変わらねぇだろ!」
手を振り払って、俺はそのまま楽屋を飛び出した。
抑えていた想いが、とうとう溢れてしまった。
(どうしよう……もう、引き返せない)
ただ走るしかなかった。
――背後で、照が何か言おうとしていたことにも気づかずに。