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【能力者名】影踏架空恋慕
【能力名】 ハイドアンドシーク
《タイプ:友好型》
【能力】 米津学園内の影を自由に移動できる能力、及び米津学園の生徒達を自由に影の中に出し入れできる能力。
【以下、細菌達の記録】
《放課後、米津学園の生徒指導室にて。》
「すまねぇロカ先生!!!俺は次の悪鬼退治で姉ヶ崎先輩達のチームに着く!!!恩を仇で返すような真似をして
本ッ当にすまねぇッ!!!!!」
痛見はそう言ってロカ先生に深々と頭を下げた。
ロカ先生は痛見をじっと見た。
ロカ先生は目を閉じて言った。
「……別に構わないわ。今回の悪鬼退治はこれまでにない数の参加者が応募してきたわ。痛見君、貴方は
その能力で皆を守る盾になりなさい。
…….それに、誰が相手だろうと私は手加減なんて一切しないわよ?」
ロカ先生はそれだけ言って生徒指導室を出た。
「……もっと強くならなきゃな。皆を守れるぐらいもっと強く……!!!!」
痛見はそう言ってぐっと拳を握りしめた。
《放課後、影踏先生が生み出した影の円卓にて。》
影の円卓にロカ先生、影踏先生、神野まにまに先生、無量大数那野彦先生、切名旅行先生が集まった。
職員会議の時間である。
今日の議題は学校の怪談について、そして
あと一週間になった体育祭と悪鬼退治についてである。
「最近、トイレの怪談や七不思議の噂聞かなくなりましたねー。」
平凡なる教師切名旅行はそう言いながら珈琲を啜った。
「そうですねぇ、最近の話題は専ら体育祭、
それと悪鬼退治に
関することが殆どですよねぇ。はーあぁ、めんどくさ……。」
ビーカーに注がれた熱々の珈琲を冷ましながら影踏先生は言った。
「本当に…….すごい執念…….独絵転々と…… 黒尾場じゃんね……….。」
那野彦先生はぼんやりしながらそう言った。
転々達が体育祭を乗っ取り悪鬼退治で何かを仕掛けようとしてることは先生達にはバレバレであった。
「毎年体育祭は怪我人や揉め事が起こるから
やなんですよねー。はーぁ、台風でも来て中止になんねーかなー。」
駒込ピペットで珈琲入りビーカーにシロップを入れながらめんどくさそうに影踏先生は言った。
「何故…..人は歴史から学ばんのじゃろうのぉ?」
神野まにまに先生は弓の手入れをしながらそう言った。
「まぁ、生徒達のストレス発散的な側面もありますしね……体育祭も、悪鬼退治も……..。」
平凡なる教師切名旅行はそう言いながら苦笑いをした。
「まずは生徒達の安全を最優先に動きましょう。今回は那野彦先生の能力も使用するかも
しれません。」
そう言ってロカ先生は無量大数那野彦先生の
方を見た。那野彦先生はこくっと頷いた。
那野彦先生は《擬態型》の能力者である。
那野彦先生の能力は、ごく一部の先生達しか
知らないまさにロカ先生達の奥の手であった。
「…..あーロカ先生ー。一年生の転々から提案があったんだが…..今回の悪鬼退治、俺は観戦する生徒達が危なくないように《ハイドアンドシーク》の影で観戦用の空間を作って戦いには不参加ってことでいいかな?おじさんはもう年だから高校生達と戦闘とかマジでやりたくねーんだわ。」
影踏架空恋慕先生はビーカーに入った珈琲を
飲みながら言った。
「…..たしかに、その方が確実に安全に観戦する生徒達を巻き込まず戦えますね。」
ロカ先生は頷いた。
「あの地獄の警備からやっと解放されるのか
…….。」
心底安堵した顔で苦労人の旅行は言った。
「まぁ、あの最初にポップコーン蒔くやつ?
だけはやらせてあげましょうや。あれやらせないと文句言う奴らがいるし。まっじでクソみたいな風習だよなー。もともとシトラス共和国?ってとこのお祭りだったんだっけ?」
お祭りとかイベントがマジで嫌いな陰キャ おじさん影踏先生はそう言った。
「元々は私の故郷のシトラス共和国に代々伝わるお祭りを米津学園の生徒の能力者達の
反乱を防ぐために活用したのが起源ですからね。」
ロカ先生はそう言いながら上品に紅茶を啜った。
ロカ先生の故郷シトラス共和国では毎年、悪鬼退治という無病息災を祝う行事があった。
そこで《悪政のロカ》というシトラス共和国の歴史に残る大悪女が大嫌いだったとされるポップコーンを外に投げる風習が今でも残っているのだった。
余談だが米津学園版の悪鬼退治を考案したのはロカ先生の夫の
雨守春里である。
とてつもなく治安の悪かった米津学園の生徒達を分からせるために腕に自信のある能力者達を悪鬼退治募り、ロカ先生の《エンプレス•ディスコ》で心をへし折り屈服させる。
悪鬼退治を行うようになったことで世紀末のような治安の悪さだった米津学園は一般生徒も通えるぐらい表面上は治安の良い学園となったのである。
(しかし転々さん、思った以上に頭の回る子のようね。我々先生達が納得する形で、私達の 特記戦力の内の一人、影踏先生を戦うことなくリタイアさせるなんて……。)
ロカ先生は転々という参謀の存在を改めて
危険視した。
ロカ先生は米津町最強の能力者として、他の先生達に指示を出した。
「一応、旅行先生は警備員の皆さんと共に
影の中で観戦する生徒達が興奮して暴れないように見て貰えると助かります。」
「分かりました。まぁ、例年の警備よりは
大分ましでしょう。」
真面目で勤勉で平凡なる教師切名旅行はそう言って頷いた。
「神野先生は例年通り体育祭中や悪鬼退治中に不審者や能力犯罪者達が入らないよう警戒をお願いします。」
「相分かった。」
月を射た男、弓道の技術を能力にまで昇華させた《まにまに》の能力保持者、神野まにまに先生は静かにそう頷いた。
「目標は完全勝利です。生徒達に大怪我をさせずに彼らの作戦を凌駕し我々が勝ちます。」
ロカ先生はまっすぐな目でそう言った。
「でもロカ先生?大丈夫ですか?
影踏先生は戦線から離脱して、ロカ先生の天敵の痛見君は敵チームの手に渡っちゃいましたが……。」
切名旅行はそう言ってロカ先生を心配した。
「問題ありません。米津学園の生徒全員が束になってかかってきても私は余裕で勝てます。それに私の天敵となりうる半田緋色はすでに私のチームに引き入れてます。そして私のチームには秘密裏警羅さんを始めとする優秀な生徒がたくさんいます。生徒達に現実を教えるのが先生の役目です。彼らにしっかりと現実を教え込んであげましょう。」
そう言ってロカ先生は冷ややかに笑った。
運命の体育祭まで、あと3日である。
(最後まで読んでくださりありがとうございました。)