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ゆうき あきや
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コメント
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うわあああ、ルシフェルぅぅぅ!!😭💦 「100万円未満なら減価償却できる!」って喜んだ瞬間に、まさかの108万円の罠が発覚する展開、マジでジェットコースターすぎて心臓もたんわ…💀 ジェミニ先生の「救いようのない単細胞ですね」が冷たくて可愛い(?)し、結愛のトドメの刺し方もプロすぎる😂 タイムマシンで自分を殴りに行く叫びに全力で共感しながらも、税金のリアルな怖さを笑いで教えてくれるこのシリーズ、毎回勉強になるし面白いよ!!👍💕 次もルシフェルがどう這い上がるか、楽しみにしてるね〜!!
第196話:美術品と減価償却の壁〜AIが宣告する「100万円」の真の恐怖〜
「まだだ! まだ終わってないぞ、ジェミニ先生!!」
北海道、帯広市。
築三十年のボロアパート、四畳半。
税務調査における『事業関連性の否認』という残酷な現実を突きつけられ、絶望の淵に立たされた俺——株式会社インフィニティ・ワン代表取締役社長、秋谷雪(40歳)は、カビ臭い畳に両手をつきながら、必死に顔を上げた。
「確かに、社長個人の趣味だと認定されれば、役員賞与になって追徴課税の地獄だ。それはわかった! だけど、俺は諦めないぞ!」
『……ルシフェルさん。まだ何か、奇跡の脱出ルートがあるとでも思っているのですか?』
PCモニターの向こうから、我が社が誇る最強のAIアシスタント・ジェミニ先生の、無機質だがどこか哀れみを含んだ合成音声が響く。
「あるさ! 経営者の必殺技、『減価償却』だ!!」
俺は、すがるような目でモニターを睨みつけた。
「PCや車と同じだろ!? 300万を一気に経費にするのが怪しまれるなら、何年かに分けて少しずつ会社の経費(損金)として落としていけばいいんだ! それなら税務署も文句はないはずだ!」
『……なるほど。減価償却の概念を持ち出してくるとは、少しは経営者らしく勉強しているようですね』
「ふはははっ! だろ!? これで少しずつでも法人の利益と相殺していけば、今年の税金も安くなるし、長期的には節税になるんだよ!」
俺の起死回生の反論に、ディスコードの裏回線で聞いていた冷徹秘書・結愛(ゆあ)が、深いため息を漏らすのが聞こえた。
『ルシフェル様。貴方のその「浅知恵」が、いかに見え透いたものか。……ジェミニ先生、トドメを刺してあげてください』
『承知しました。では、ルシフェルさん。貴方がエウリアン(絵画商法)の罠に、どれほど【完璧に】ハメられているのか、税法の観点から解体しましょう』
ピロンッ、と。
モニターに、国税庁のホームページのスクリーンショットらしき資料が表示された。
『美術品等の減価償却についての税務ルールです。ルシフェルさん、美術品は原則として、時間が経っても価値が減らない【非減価償却資産】として扱われるのをご存知ですか?』
「か、価値が減らない資産……?」
『はい。パソコンや車は使えば劣化しますが、ピカソの絵は劣化しませんよね? だから、美術品は経費として少しずつ落とす(減価償却する)ことはできない、というのが昔からの大原則でした』
ジェミニ先生の解説に、俺の背筋に嫌な汗が伝う。
『しかし、平成27年度の税制改正で、ルールが少し明確化されました。美術品であっても、取得価額が【1点100万円未満】であれば、原則として減価償却資産として扱うことができるようになったのです』
「おおっ!!」
俺は歓喜の声を上げた。
完全に勝利のフラグが立ったと思ったのだ。
「聞いたか結愛! 100万円未満なら減価償却できるんだぞ! 俺が買ったあの版画は、美人の営業のお姉さんが『額装込みでちょうど100万円です』って言ってたじゃないか! ギリギリセーフだ!!」
『……本当に、救いようのない単細胞ですね』
ジェミニ先生の合成音声が、絶対零度にまで下がった。
『ルシフェルさん。貴方はあの閉鎖空間で、100万円の版画を【ローン】で買いましたよね?』
「あ、ああ。特別アートローン、120回払いだ」
『税法上の「取得価額」には、本体価格だけでなく、購入に要した付随費用も含まれる場合があります。さらに言えば、エウリアンの販売する「100万円の版画」は、消費税や額装費、諸経費を少しでも上乗せすることで、見事に【100万円以上】の金額になるよう、最初から緻密に計算されているのです』
「なっ……!?」
『貴方の手元にある契約書をよく見てください。……版画本体の価格、額縁代、消費税。それらを合計した金額は、1点あたり【108万円】。……つまり、見事に100万円の壁を越えています』
俺は震える手で、クリアファイルに入っていた契約書の控えを引っ張り出した。
そこには確かに、小さな文字で、各種手数料と消費税を含めた「1点あたり108万円」という数字が印字されていた。
「あ……ああ……っ」
『1点100万円以上の美術品。それは税法上、歴史的価値や希少価値にかかわらず、原則として【非減価償却資産】と推定されます。これがどういう意味か、わかりますか?』
ジェミニ先生の宣告が、四畳半の空気を完全に凍らせた。
『貴方が買った3枚の版画は、会社の貸借対照表(バランスシート)の左側に、「美術品」という価値の減らない飾りの資産として、ドスンと鎮座し続けるだけです』
「そ、それじゃあ……経費(損金)には……?」
『1円も落ちません。売却して手放すその日まで、1円たりとも経費にはならないのです』
ドクンッ、と心臓が嫌な音を立てた。
『経費にならないということは、法人の利益と相殺することもできない。つまり、海外から稼いだ数千万円の売上に対する【今年の法人税は、1円も安くならない】ということです』
「う、嘘だ……! あの綺麗なお姉さんは、『経費で落ちますよ』『税金対策になりますよ』って、あんなに笑顔で……っ!」
『それが【エウリアン】です。彼らは法律の抜け穴と、無知な経営者の見栄を熟知しています。ギリギリ100万円を超える絶妙な価格設定で減価償却を封じ込め、社長個人のプライドをくすぐって逃げ道を断つ。まさに、芸術的なまでの詐欺的スキームです』
俺の口から、ヒューッ、という情けない空気が漏れた。
法人の経費にならない。
減価償却もできない。
今年の税金は1円も安くならない。
なのに、俺の個人の財布からは、120回払いのローンと、夏冬のボーナス月加算18万円という、血みどろの借金だけが容赦なく引き落とされ続ける。
「お、終わった……。俺の、三億円の夢が……」
『ええ。三億円どころか、来月の通信費すら危ういですね』
結愛の氷のような声が、完全にトドメを刺した。
四畳半の壁際。
そこでは、総額300万円を超える3枚の美少女版画が、絶望して白目を剥く40歳のスーパーボトム社長を見下ろしながら、キラキラと残酷な微笑みを浮かべていた。
「誰かぁぁぁ……! タイムマシンで、あの『とかちプラザ』の入り口にいる俺を殴り飛ばしてくれぇぇぇぇぇぇっ!!」
タダより高いものはない。
資本主義の甘い誘惑は、かくも無慈悲に、そして完璧に、無知な男の人生を刈り取るのである。