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また事故ったかもしかし
「この公園は?」
「昔よく遊んでた公園です。」
「へぇ〜。」
ここのボール遊び、近所の人も
怒らない優しい人たちだったから
楽しかったなぁ〜。
なるべく事故の道には
行きたくないから、
そこだけは最後に入れておいた。
行きたくない、けど、話しておきたい。
この恋を、しっかり終わらせたいから。
その後も色々行った。
一緒に行った場所は、全部。
その後はカフェに入って、
昔何をしたか、いっぱい話した。
久弥も、楽しそうにしてくれた。
でも、結局最後は……。
「ここは?」
ここに、なってしまうのか……。
「ここは、久弥先生自身が、
事故にあった場所です。」
勿論久弥は、驚いた顔をしていた。
私はそれでも、洗いざらい話した。
一人で帰ってた久弥に追いついて
そこで二人とも自動車に
気づかなかったこと、
そこでぶつかって、
記憶を無くしたこと。
それを話している私の体は、
自分でも分かるくらい震えていた。
話したら、これから先どう接して
いこうかって。
昔の感覚を思い出して、
恐怖が私にへばりついていた。
「……教えてくれて、ありがとうな。」
その声は少し、冷たいように聞こえた。
結局、そのまま迎えた夏休み。
私はそろそろ、進路について考えた。
「カウンセラー?」
お母さんの顔は驚きに満ちていた。
「うん。」
昔から憧れはあった。
私は少しだけでも、なってみたいと
思っていた。
その為に……
「この辺なら……あら、
幹兎と霧矢君の所が近いのね。」
「うん……そうなんだ。」
少しだけこの地域から、
離れてみる事にした。
そこに住まわせて貰えば問題はないし、
母も安心できるかなって。
今思えば、事故の現場を見た時は
とても恐怖だった。
小さい頃の私も、それは
分かっているはずだから。
悔いは、無い。
久弥と離れ離れになる事以外は。
最近は数学の時間以来だし、
休み時間も、すっかり話す事も
無くなった。
何を話せばいいのか、
どう接したらいいのか、
守れなかったことを、
責められるんじゃないか。
怖くて、いつも彼を見ると
目を逸らしていた。
「そうね……じゃあ、幹兎が
帰ってきたら話してみましょうか。」
「うん、ありがとうお母さん。」
時は夕暮れ。
ジリジリと照らしている
太陽も山に隠れ、
涼しい風が部屋を舞った。
その時、扉のノック音が聞こえる。
「……はい。」
「味蕾?俺だけど……」
「兄さん!おかえり!」
扉を開けると
兄と霧矢さんが立っていた。
「久しぶり味蕾!」
「大きくなったなぁ〜。」
「霧矢さんもお久しぶりです。」
「お久しぶり。」
「……味蕾、ご飯食べ終わったら
話をしよっか。」
「……うん。」
何の話かはちゃんと分かってる。
ここでもう全てを
終わらせないといけない。
「味蕾は、何で久弥が離れていくと
思ったの?」
「……今はもう、久弥とは
先生と生徒って関係になったから……
私が卒業したら、もう話す機会すら
無くなっちゃうんだもん……。」
その言葉に兄はきょとんとした。
「多分、そんなことはないと思うよ?」
その言葉に私は驚いた。
「久弥感謝してたよ?
自分が思い出すために、色々
楽しそうに教えてくれて
嬉しかったって。」
「え?」
「だって、事故の時、
もし味蕾が居なかったら、
久弥は亡くなってたかもしれない。」
私は黙り込んだ。
確かにそうだけど…。
「それに、久弥だけじゃない。
運転手さんだって危なかったんだ。
それを味蕾が見てたから、
すぐに動いてくれたから、
二人の命が助かったんだよ。」
気づけば私は、一粒また一粒と
涙を流していた。
あの辛い現実を彼に伝えなきゃ
いけなくなった時、その先、
久弥と話すのが怖くなって、
伝えることが、すっごく嫌になってた。
でも……でも。
「久弥が、」
─辛い事、ちゃんと言ってくれてありがとう
「だって。」
これが彼のためになったなら、
すっごく、嬉しい。
「今度、遊びに来るって言ってたから、
いつも通り話しなよ?」
「……うん。」
私は、必死に涙を拭った。
次の日。
無事兄との話も終わり、
進学の話も了承を得た。
後は、私。
あたふたしてる暇なんてない。
私自信が、頑張らなきゃ。
そんな事を思っていた時、
家のインターホンが鳴る。
兄が返事をして扉を開けるのが聞こえて、
私はもう一度椅子に座った。
それからほんの数分。
私の部屋の扉がノックされた。
「……味蕾?」
「へっ、久弥……先生。」
本当に久々の会話。
数学の時間も、あれから避けていたから。
1ヶ月は一対一で話していない。
一息、深呼吸をして扉を開けた。
「久しぶり。」
「お久しぶり……です。」
今まで普通に話してたのに、
少し、ぎこちない感じがした。
「……入ってください。」
「あぁ。……ちゃんと勉強、
してるんだな。」
「……勿論です。」
「夢、決まったのか。」
「昔から憧れていた
カウンセラーに。」
「ふぅん……いい夢だな。」
「へっ?」
“いい夢”なんて、言われるとも
思って見なかった。
「あと、ごめんな。」
「え、何が……ですか?」
「辛いこと、話させて。」
「私は別に、助けになったようなら
良かったです。」
「味蕾のためにも、
絶対思い出すから。」
「……はい。」
「ところで、数学で分かんない所は?」
「……課題の多さ、ですかね?」
「それはどうもできねえな。」
「数学だけ永遠に
終わんないんですけど……。」
「じゃあ、今日は終わるまで
寝れねーぞー。」
「お、鬼久弥!」
「おいおい誰が鬼だよ。」
「……鬼久弥。」
「だからさぁ。」
その後は二人で笑い合った。
久しぶりの感覚だった。
こうやって、久弥と
笑ってられる時間が、
続いてほしいと、
“思ってた”。