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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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夏が過ぎて、紅葉が赤く染まった頃。

私は、いよいよ

本番目前まで来ていた。

「今日は皆に、転校生を

紹介すっぞ〜。」

先生が言うと、見たことのある子が

入ってきた。

「えっ、梨央奈?」

「え、もしかして、味蕾!⁉︎」

「何だ仲良しか?

じゃあ席は隣でいいか?」

「あ、は、はい……。」



「えっ、じゃあ、カウンセラーに

なるために幹兎君のところに⁉︎」

「うん、あっちで

やりたいことがあるんだ。」

梨央奈は昔から私達の仲良しで、

事故があったのは知ってたけど、

それ以降、

何があったかは知らなかった。

「え〜夏休み帰ってきてたんだ〜。

二人にも会いたかったから、

もう少し早くこっちに

きてればよかったな〜。」

「多分冬休みにも

帰ってくるだろうから、

また会いにおいでよ!」

「うん!そうする!」

そんな話をしているとき、

ある先生が私の目の前で止まった。

「お、味蕾いた。」

「久弥先生、どうかしました?」

「これ、拓人によろしく。」

「私の担任じゃないし……

私2年でもないんですけど……

てか職員室に行けば解決……。」

「……行くの面倒。」

「馬鹿にしてます?」

その時、梨央奈は驚いた目をしていた。

「久弥って……。」

私はそれを聞いて止めようとした。

「あ……梨央奈あのね……!」

「覚えてる?私梨央奈だよ!」

「えっと……転校生……だっけ。」


─どちら様ですか?


「……梨央奈行こ!」

「え、ちょっと!」



放課後。

暗くなるのが少しずつ早くなり、

夕陽の低さに眩しさを感じていた。

「味蕾……。」

「……どうしたの?梨央奈。」

分かっていた、何を聞きたいのか。

よく、分かっていた。

「久弥って……。」

「……久弥は、

あの事故で、記憶を無くしたの。」

「嘘……何で……?」

「……。」

何も言えなかった。

怖くて、辛くて。

恐怖が私を覆った。

「あんたのせいじゃん……。」

聞きたくもない言葉が、

脳の中に入ってきた。

それが脳内で回って回って、

私を絶望に陥れた。

「あんたがあの時……

一緒に帰ったり、公園にいたりしたら、

無事だったじゃん!」

私はもう何も話せなかった。

「返して……あの時の久弥を、

返して‼︎」

「私のせいじゃない!」

「……!」

「私がいようがいなかろうが……

久弥は……久弥は‼︎」

それ以上は言いたくなくて、

教室を飛び出た。

すると出た瞬間。

「味蕾?」

「久弥……。」

彼は居た。

「どうしたんだよ泣いて……。」

「久弥……。ごめんね。」

軽く笑って、私は走り去った。

「おい味蕾!」

校門から出て、道路を渡るところで

力が抜けた。

横からは、猛スピードで

やってくる自動車の音が聞こえた。

まるで、あの日みたいに。

どうか、どうかいっそ、


__私を、居なかった事にして。


すると、後ろから強い勢いで押される。

目を開いた時。

あぁ、目なんて開かなきゃよかったって、

そう思った。

あの日の光景が、私の目にまた映った。

「久……弥……?」

あぁ、神様。


人生は、残酷ですね。



「味蕾!」

「拓人……?」

「あぁもうほらこんなに泣いて……。」

「どうしよう……久弥が……。」

「大丈夫、大丈夫だよ……。」

「私の、私のせいだ……!」

「味蕾……!」

「拓人!味蕾!」

「瑠狗……。」

「瑠狗……先生……。」

「味蕾、落ち着いて座って?」

私は深呼吸して、瑠狗の言う通り

そこにあった椅子に座った。

「今、誰か他にいる?」

「睦月先生が……今話を……。」

「じゃあそれが終わるまで、

味蕾は何も考えちゃダメ。

久弥が居なくなったら、とか、

自分のせいだ、とか。

思うことはたくさんあるけど…

今は、ね?」

少しだけ考えた。

そんなこと、考えずには

居られない。

でも、今だけは……。

私は頷いた。

「幹兎と霧矢も今向かってる。」

「あいつら仕事は?」

「電話したら、すぐ来るってさ。

話を聞いて校長が許してくれたって。」

あぁ、私本当に迷惑かけて

ばっかだなぁ……。

また涙が込み上げてきた。

「あ〜味蕾泣かないで〜。」

「……瑠狗が泣かせた。」

「え?拓人?」

「せんせー瑠狗君が味蕾泣かせた〜。」

「二人は来たならせめて言って?」

「……味蕾、大丈夫?」

「……ごめんなさい。」

「謝らなくていいよ。

味蕾の方が辛いもんね。」

「でも……私が飛び出したから……。」

「気にすると辛いでしょ?」

「だって……。」

「だってじゃない。」

「……はい。」

そんな話をしていると、

睦月が話を終えて部屋から出てきた。

瑠狗はすぐに駆け寄った。

「睦月!久弥の容態は⁉︎」

「……命に問題は無いって。」

安心した。何も問題がないなら……

「でも、」

その一単語に、私は恐怖を感じた。

「で、でも……?」

睦月は悲しい顔をした。

「……いつ目を覚ますか、

分かんないんだって。」

「え……?」

睦月は言うには、

脳への衝撃が強く、

植物状態もありえるって言ってた。

私は全身の力がその場で抜けた。

私のせいで……久弥は長く

眠りにつくかもしれない。

皆が私を慰める声を

かけてくれたけど、

私には、慰めには聞こえなかった。

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