白い鳥は風と共に舞い
黒い鳥は白い鳥を眺めて舞う
88羽の想いは君に届くだろうか。
〖第1章 放課後の第2音楽室〗
どこかにある小さな学校、静けさに囚われた教室。
そして、白と黒の鳥が歌い舞う第2音楽室。
ドアに耳を傾ければ……ほら、聞こえてくるでしょう?
ここだけは絶対に色褪せない。
白いカーテンが夕焼けに染まる頃、時間に気づいた風が強く、強く音楽室にやって来る。
それを受け入れるかのように僕は今日もそっと鍵盤に指を置く。
指を置いてしまえばそこからは、風と鳥達の舞台だ。
白の鳥は、黄色や水色、赤色……色々な色に姿を変えて飛ぶ。
黒い鳥は、姿は変えぬものの、そっと白い鳥を支えているのだ。
風は鳥達を上手く飛ばし、歌わせてくれるのだ。
気がつくと、いつの間にか風は止んでいて、自然と辺りは暗くなっていた。
鍵盤を拭き、窓を戻し、音を立てないようにドアを閉める。
今日はいつもより少し早い時間。 見たいモノがあるからだ。
誰もいない家に帰宅。
荷物を置き、足早にあそこへ向かった。
屋根の上の更に上。光に身を任せた先にあるその景色には、満天の星空、淡い雲に川が流れているのが見える。
年に1度だけ見られる最高の景色だ。
「願い事……あれでいいか」
この日は、願いを星に宿す『セイカ』という簡単な儀式のような事をする。
昔、祖母に教わったのだ。
「ずっと、手が動きますように」
僕は毎年決まってこれだ。
手が動かなければ鳥と舞うことも本を読むことも出来なくなる。
そんな事になれば僕はあまりのショックにピアノを見ることさえ出来なくなってしまうだろう。
部屋に戻り数十分。
窓の外に向かって今日も願っている。
コメント
2件
通知見た瞬間えげつないぐらい口角上がりました( 語彙力やっぱ凄いですね!!!!!! 手が動きますようにって素敵な願いですね! 投稿ありがとうございますっ!