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赤×水
紅葉の時期になると.
水「ん、あさ……?」
赤「おはよ、水。ご飯もうすぐで出来るから顔洗ってきな~…?」
水「はぁ~い……」
赤ちゃんと同棲を始めてから早2年と1ヶ月。
お互い慣れた関係だったからか、
遠慮とかそういう他人混じりな感情はゼロに等しかった。
だがしかし………
水「ねぇ、赤ちゃんッ…、僕の眼鏡知らない…?」
水「って、洗濯物いつ干したの…?」
赤「ん?さっきだよ?笑」
水「言ってくれれば手伝ったのに……」
赤「水はお姫様だから何もしなくてい~の」
赤「あと眼鏡は俺の鞄の中にあるよ~」
水「あ…うんッ、ありがと…‼︎」
お姫様、ね…
随分とまぁ僕は可愛らしく見られてること。
水「あ~…体痛い……」
赤「水、薬飲んだ?」
水「さっき飲んだよ~、心配してくれてありがとね‼︎」
赤「そっか、それなら良かった」
そんなに安心した顔しなくても、
僕はまだここに居るのに。
赤ちゃんがこ~なったのは、高校2年生の春の日が始まりだった。
元々体調が優れない日が続いた僕は、
軽音部での活動を控え、病院に行った。
『高校2年生の春』
「…非常に言い難い事なのですが、持って3年半程でしょう。」
水「…そ~ですかッ…、」
体調が悪いのを季節の変わり目だから、
という理由で診察をサボった天罰が降ったのだろう。
水「あのッ…、音楽は続けられますか…?」
「勿論です。限られた命、制限なんて出来ませんよ」
水「ありがとう…、ございますッ……」
“限られた命”という言葉を聞いた瞬間、
再度、これは治るものじゃ無いんだと認めた。
今度のライブを最後に、部活を引退しよう。
僕が抜けたとしても、沢山の頼もしい仲間がいるのだから。
そう決心していたはずなのに……
赤「沢山の歓声ありがとうございますッ、」
水「ありがとうございますッ、‼︎」
赤「そして、約2年間ドラム専門で軽音を支えてきてくれた水が、」
赤「今日のライブを最後に、引退します」
赤「水、一言頼める?」
水「僕は今日まで軽音部でいれて、本当に楽しかったです…‼︎」
水「最後に、〇〇を演奏してこのライブを終わりたいと思いますッ…」
ラストは、僕のお気に入りの約3分半の曲。
3分半演奏し切った後、会場は拍手と歓声で包まれる。
やり切った。
人生でラストかもしれないライブ、最後まで出来て良かった。
僕は頬に涙を伝らせながら、精一杯のお辞儀をして、その場を後にした。
水「楽しかったぁ~‼︎」
みんなと抱擁した後、部長である赤ちゃんに声を掛ける。
水「赤ちゃん、2年間ありがとッ…‼︎」
赤「んッ…、ありがと……」
水「泣き過ぎだよ~…?笑」
赤「だってッッ……」
普段滅多に泣かない赤ちゃんが、その時は涙を流していた。
それに釣られて、僕も涙を流す。
2人の涙がおさまった時に、赤ちゃんが僕に声を掛けた。
赤「…やる事終わったら、俺の家来て」
水「へッ……?」
赤「話したい事あるから…」
赤ちゃんに…、片想い中の相手にそ~言われて胸がどきっとする。
やる事を急ピッチで行い、足早に赤ちゃんの家へと向かった。
赤「水さ…、俺に隠してる事あるでしょ」
水「へッ……?」
僕は一瞬頭の中が真っ白になった。
嫌な予感が頭を過ぎる。
僕は部員達にも、親友の赤ちゃんにも、病気の事を打ち明かしてい無い。
バレてしまったのだろうか?
迷惑を掛けてしまっていたのだろうか?
そんな自分を責める言葉だけが頭の中に浮かび、
僕はその場で硬直してしまった。
そんな僕を見兼ねた赤ちゃんが、僕の頭をそっと撫でる。
赤「大丈夫、俺は水を責めたいんじゃないよ…」
赤「ただ、俺ってそんなに信頼性無かったかな~って」
赤ちゃんのその言葉を聞いた途端、無意識に涙がこぼれ落ちて来る。
赤ちゃんの信頼性がなかったんじゃ無い。
ただ、僕の”人に頼る”力が変に低下していた。
僕が頑張れば、僕がこ~すれば、なんて
己の弱さを痛感しながらも、その場その場で立場を変えている自分が見られる。
病気だと判明する前からそんな事は多々あった。
その度に、赤ちゃんが同じ立場で慰めてくれていたのを覚えている。
あぁ、僕は熟馬鹿だ。
隣にはいつも、頼り甲斐のある素敵な友が居たというのに。
水「全部話すねッ……、今まで黙っててごめんっ、……」
赤「うん、ゆっくりでい~からねッ…」
僕は赤ちゃんに全てを打ち明かした。
何ともないよ、と言っていた病院帰りは、
余命宣告をされて心身共に弱っていた事。
赤ちゃんとドームでライブを行うっていう夢は、
ど~頑張っても叶えられない事。
赤「気付いてあげれなくてごめんッ……、」
水「いやッ、言ってなかった僕が悪いんだしっ…」
赤「…良かったらさ、高校卒業した後一緒に住まない?」
水「そしたら赤ちゃんに迷惑が……」
赤「最後ぐらい水の隣に居させてよッ…、笑」
いつも通りの笑顔で、少し涙を浮かべながら、真剣そうな顔で問いかけてくる赤ちゃん。
僕、勘違いしちゃうよ?
水「じゃあ、一緒に住むっ…‼︎」
赤「ッッ…‼︎」
後3年半しか生きられないんだし、少しくらい甘えてもい~よね。
という事があって、今に至る。
勿論、赤ちゃんを好いている気持ちはそっと保存してる。
これからも伝える気はないし、特別そんな関係を望んでいるわけでもない。
赤「…水、顔色悪いよ…?今日は寝ときな…?」
水「ん~…今日は赤ちゃんと外行くって決めてるから拒否します…」
赤「俺のお姫様は我儘だね~?笑」
水「俺のって…笑」
水「まぁ、我儘な所も可愛いでしょ?」
赤「うん、可愛いよ」
余命宣告を受けた日から約3年。
僕に残された時間は、半年あるかないかぐらい。
病気は順調に進んでしまっているらしく、
最近は赤ちゃんと手を繋がないと歩けなくなってしまった。
水「ある意味幸せかなぁ……」
赤「あ、見てよ水。紅葉が綺麗に色付いてる‼︎」
水「本当だ~‼︎綺麗っ…‼︎✨」
赤「…また来年も見たいね、」
水「その時は赤ちゃんの好きな人と見てねッ、お空の上から応援してるッ!笑」
その時は本当に驚いた。
僕なりの冗談を言ったつもりだったのに、
まさか赤ちゃんが、その場で涙を流すなんて思ってもいなかったから。
水「えッ…、冗談だよッ、!?」
赤「ごめんッ…泣くつもりなかったんだけど、やっぱ寂しくてさ…」
水「まだ僕はここに居るよ~」
水「ほら、お墓は銀杏の木の近い所にしてよッ、僕も見たいし…‼︎笑」
赤「うんッ、任せて…」
3年。
普通の人からすれば遅く感じる年月が、
僕にとっては凄く早いものに感じた。
月日が経つにつれて、赤ちゃんへの想いは募る一方。
だけど伝えるわけにもいかない。
だってもう僕は死ぬ人で、赤ちゃんは未来が待ってる人だから。
水「ね、赤ちゃん…、最後のお願いしてもい~い…?」
赤「勿論ッ…、言ってみな…?」
水「紅葉が今みたいに色付いた時、僕に話しかけてねッ、‼︎」
赤「うんッ、了解…、笑」
その3週間後、3年半にも満たない年月で、僕はこの世を去った。
赤side
水には部活で知り合った時から、一目惚れみたいな恋をした。
これまで男同士の恋愛を見てこなかった事もあり、
その時改めて、男同士での恋愛もザラではないなと思った瞬間だった。
だから、余命宣告の話を聞いた時、
まるで全ての神経を切られたかのように痛んだ。
本当に大好きで、でも気持ちを伝える勇気なんかなくて。
そんな勇気がない俺を、水は最後まで隣に居させてくれた。
せめてもの償いで、お墓はちゃんと銀杏の木の近くにしたよ。
水はこの銀杏、見えてるのかな。
赤「水…、今年も銀杏が綺麗だよ…」
ちゃんと望み通りにしたよ、水。
赤「…ねぇ、水。俺さ、水の事ずっと好きだったんだよ、勿論今も。」
赤「水はど~だったのかな…、」
同じ気持ちなら嬉しいな。
どれだけ笑顔を作ろうとしても、目からは大粒の涙が溢れてくる。
水に気持ちを伝えれなかった後悔。
あの時言えば良かったな、なんて今更思う。
水『ね~ね‼︎赤ちゃんはさ、好きな人いる?」
赤『ん~…一応、いる…』
水『えッ、誰!?✨』
赤『言うわけないじゃん…笑』
赤『そ~いう水は?』
水『僕もいるけどッ…‼︎』
赤『ッ…誰~、?笑』
水『恥ずかしぃ…から、言わないっ、‼︎』
赤(かわいい、…)
“可愛い”とか”好き”だとか、あの時は恥ずかしくて言えなくて…、
今更告白するのは、少しずるいかな。
赤「…ねぇ、水。大好きだよ…、?」
赤「また声聞かせてよッ、…」
また”赤ちゃん”って、隣のクラスまで聞こえる声で呼んでよ。
せめて、俺の事は忘れないで欲しい。
だって俺は絶対水の事、忘れられないから。
ずっと水に想いを寄せて離れられないけれど、これくらいは許してよね。水。
だって、毎年この銀杏を見る度、
水の事を思い出しては、まだ水の事大好きだよ…なんて、
水の前で涙を落とすのだから。
end_.
感動系書くの難しいです…🥹