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結局、その勝負は――
「……っは」
エリオットが椅子にもたれた。
「最悪」
ほぼ、溶けた。
チップは大きく減っている。
「だから言っただろ」
チャンスは肩をすくめる。
でもその顔は、どこか満足げだった。
「――飲むか」
軽く顎でバーを示す。
断る理由なんて、もうなかった。
***
カウンターに並んで座る。
さっきまでの喧騒が少し遠くなる。
グラスが置かれる音。
氷の溶ける音。
「……こういうの、慣れてんの?」
エリオットがぽつりと聞く。
「まあな」
チャンスはグラスを傾ける。
「勝つためじゃねぇよ」
「は?」
「負けるために来てる」
その言葉に、エリオットが眉をひそめる。
「意味わかんない」
「だろうな」
チャンスは横目で見る。
「でも、お前は分かるタイプだと思ってた」
少しだけ、距離が近い。
カウンターの狭さのせいじゃない。
「……何が言いたい」
エリオットの声が低くなる。
チャンスは、少しだけ笑って。
「さっきの顔」
「……」
「全部失いそうになってる時のやつ」
一瞬、沈黙。
「綺麗だった」
その一言が、妙に重く落ちる。
エリオットの喉が、わずかに動く。
「……酔ってんの」
「かもな」
チャンスが肩を寄せる。
ほんの少しだけ。
逃げようと思えば、逃げられる距離。
でも――
エリオットは動かない。
「なあ」
低い声が、すぐ横で落ちる。
「もう一回、賭けるか」
「……何を」
チャンスはポケットからコインを取り出した。
カジノの光を反射する、あの銀色。
「次は」
くるり、と指で弾く。
「――キスするかどうか」
ゆゆゆゆ
ゆゆゆゆ
#Paycheck