「小説なんて私書いたことないですよ?」
「私も分かっています、でも実際オファーが…やりますか?」
「…」
今後の活動に反映できるならやっても損は無いしいい経験にもなる。
でも私に書けるの?深琴ならできるかもしれないのに…
また深琴…?琴乃も木下さんも私も、みんな深琴ばっかり。
やれなくてもやるんだ、それがプロ。
業界が違くてもプロは完璧な仕事をする。深琴なんかに負けない。絶対に。
「やります、やらせてください!」
「でも…」
「私はプロです!完璧な仕事をします!なのでお願いします!」
「…オファー受けとくね」
「!ありがとうございます!」
とは言ったもののペンが走らない。
題名も書き出しも。
「悠一、悠一って叶わぬ恋とかしたことある?」
「いきなりだな」
「無いの?」
「あるよ。俺は死んでる、でも彼女は生きてる。毎日死ぬ気で、弱い所を見せないで周りを元気にさせる。そんな彼女が好きだ」
「誰?」
「教えるわけないだろ」
「まあ少しイメージはわいてきたかも」
「それは良かった」
「悠一ってなんで成仏してないの?」
「心残りがあるからな、」
「?そーなんだ」
少し意外に思った。
同時に少し胸がチクンそう鳴った気がした。
「私はあなた達を大切だと思ってしまったのよっ!だから今あなた達を守ることが出来る私がここを守るのよ!」
「渚…」
深琴の小説のアニメ収録1日目。
私は小説のことで頭がいっぱいだった。
「はいありがとうございました〜、そうだね、シズクちゃん、もう1回できる?」
「あ、はい何回もすみません」
「全然、いつも1回でOKでるシズクちゃんがこんなにテイクとるんだからなんかあったんでしょ」
「ほんとすみません〜!」
5テイク目。
上手く感情が込められていない。
集中しろ、集中。
落ちて、落ちて、感じろ。
「私はあなた達を大切だと思ってしまったのよっ!だから今…あなた達のことを守れることができる私、がここを守るのよっ!」
「…渚っ?」
「っ…OK!めっちゃいいよ2人とも!完璧」
「ありがとうございます!」
「あっ…ありがとうございます」
「監督っー」
何かあったのか収録が止まった。木下さんも少し焦っている。
「シズクちゃん、今すぐ帰りなさい。」
「え?でも収録が…」
「いいから!木下さん、車出して」
「はいっ!」
何事?ヒロイン役である私が居ないと収録が進まないだろう。
「あの?!何かあったんですか?!」
「シズクさん、よく聞いてください。お母さんが事故にあって…」
「え…?お母さん…が?、」
やだ、またこんな…、悠一の時もこんな感じだった。
収録中に兄さんからの電話。焦る木下さんと監督。私は車の中で焦って絶望に浸るしかない。
「お母さん!」
「シズク、」
「兄さん!お母さんは?!」
「…頭を強く打ったみたいでまだ意識が戻ってない」
「あ…」
生きてる、良かった。
そういえば、悠一は?ここ2日会ってない。
「あれ…」
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