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「本日の感染者数は……」

文月幸呼奈は今日も流れているニュースを眺めている。最近、謎の呪いに感染した人たちが暴徒化しているのだ。呪いが流行り出してからもう数ヶ月は経つのだが、街はどこか不気味な静けさに包まれていた。呪いがどこからやってきて、どうやって感染るのかは分かっていない。恐怖に駆られた人々は、呪いの影響を避けるために家に閉じこもる生活を続けていた。

「幸呼奈。ちょっと行ってくるわね」

呼ばれて振り返る。そんな中でも変わらず外へ出ている者もここに。

「あれ? お姉、往診? 珍しいね」

「ああ、違うわよ。実はこの前、ある病院から手紙が来てさ。最近、呪いの感染の噂、絶えないでしょ? で、動物にも感染るのか、動物と人間の間でも感染るのか調べたいからあたしの力が必要だって」

幸呼奈の姉、文月家の長姉、歌華。獣医学部を卒業後、色々なところで修行をし、現在は実家の近くに開院した文月歌華動物病院で院長をしている。

「行ってらっしゃーい」

唐突に聞き馴染みのある声が耳に飛び込む。文月家の末弟、磨輝の声だった。まだ中学生だがSNSでぽちぽちと作家をしている。

「うわー! ビックリした! 磨輝、学校どうしたの?」

「自宅学習だよ」

幸呼奈の問いに流れ作業の如く答える磨輝。姉が感染と戦っている中で自分たちだけ何もしないなどできない。そんな訳で幸呼奈たちは全てをかなぐり捨て、車を走らせてもらうことになった。しばらく進んでいると森へ入った。ここからは歩いていこう。松林の中を歩き続けていると立派な病院が現れた。見るからに邪悪な病院。雑木林の青葉が暗く覆い被さっている。その上には黒い煙突。そこから吐き出る黒煙。大きな病院は毎日、夥しい死人が出るのか。扉のところで誰かが話している。

「ここが話であった病院ね」

「雰囲気がすごい……妖怪でも出てきそうだな……」

「妖怪の方がよっぽどいい。こっちは呪いに感染するかもしれないってのに」

三人で額を窓に押し付けて院内を覗いている。

「ねぇ」

自分たちと同じ赤い目。なんとなくツッコミを入れていたそいつに声をかけるとギロリと睨みを利かせて向いてきたが、幸呼奈たちに気づくとすぐに表情を緩めた。

「なんだ」

文月家の長男、上の兄の渚冬。高専を卒業し、現在は実家の図書館で主に機器管理の仕事をしている。他の二人もきょうだいだ。文月家の次男であり、下の兄の茉津李。高校を卒業し、診療心理士になるために大学へ通っている。文月家の三女で幸呼奈の双子の片割れ、陶瑚。高校を卒業し、今年から看護大学に通っている。陶瑚が手紙でこの病院に呼ばれたために渚冬と茉津李もついてきたのだという。そしてその兄弟姉妹に挟まれている自分が文月家の次女の幸呼奈。高校を卒業し、司書補講習を修了してからは実家の図書館で司書補をしている。歌華、渚冬、茉津李、幸呼奈、陶瑚、磨輝。何はともあれ文月家の姉弟の全員が揃った。さて、これからどうするか、と話していると近所の人であろう若いカップル? がこっちへ歩いてきているのが見える。近所ならこの病院のことも何か知っているかもしれない。皆で話しかけようとすると一つの警告をされた。この辺りでは神隠しが起きる。つい先日も人が消えたようだ。原因不明の。

「おい」

全員で振り返ると看護師? が二人、自分たちを見ていた。マスクで顔を隠している。

「君たちだな、文月家の六人姉弟は」

看護師? が何かを取り出したかと思うと首元に刺すような痛みが走った。

「何を……」

「安心しろ。麻酔銃だ」

「安心……できるか……」

それからどれほどだっただろう。眩しい光が辺りを包む。

「おい! 起きろ!」

渚冬の声で目を開けるとそこには道具らしきものは何もない。田舎の無人駅のようにベンチがいくつか置かれているだけだった。

「ここは……」

「おはよ〜ここどこ?」

「どうやら院内に連れてこられたようね」

茉津李の困惑の声と磨輝の拍子抜けた声と陶瑚の冷静すぎる声が聞こえる。奥に進んでいくとおかしな場所にやってきた。寝台には目もあてられないような患者が眠っている。鼻の潰れた男や口の歪んだ女や骸骨のように目玉のない者などが眼先にちらついてならなかった。だらんと寝台から垂れた腕。最早、男なのか女なのかさえ分からない者もいる。義手義足が転がっている。泣き声ばかりではない。痛みを訴える声も混じっている。話には聞いていたが、呪いはあそこまで人の体を食い荒らすのか。呪わしく思う。別の部屋に進んでみるとそこはよくある診察室だった。机椅子、カルテ、パソコン。ただ異様なのはたくさんの人たちが集められている。彼らが呪いに感染しているのかは分からない。感染はしたがまだ軽度なのかもしれないし、ただただ感染していないのかもしれない。よく見るとこの辺りで神隠しが起きていると忠告してきた二人もいる。怪訝な顔をしているあたり、近所の人と思っていたのは間違いだったのか。明らかに自分たちが知っている病院と様子が違う。全然、一般社会と切り離されたここでは何があるというのか。今、分かるのは何も分からないということだけ。

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