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どこなんだここは。幸呼奈が辺りを見渡していると突然、パソコンの電源が勝手に入り、人が映った。幸呼奈たちを連れてきた看護師と同じようにマスクで顔を隠している。
「ようこそ諸君。私はこの病院の医院長だ」
コイツが医院長?
「は? 何だこれ!」
「ちょっと何これ! 何なの、ここ! どういう状況⁉︎」
「おい、意味わかんねーよ!」
同じように集められた人たちの色々な怒りや混乱の声が聞こえる。まずい……どんどんパニックが伝染している……いや。自分もこう見えて案外、動揺してるんだけどなぁ。色々と思考を巡らせながら話を聞き続ける。
「皆さんにはこれから数々のゲームをしてもらいます。それらのゲームを勝ち抜いた者だけに、呪いから解き放たれる権利が与えられる」
「勝ち抜いた者って?」
しばらく大人しくしていた歌華がやっと口を開いた。
「これは、命をかけた診察だ」
なるほど、と思う。アイツはこの病院の医院長ではない。このゲームのゲームマスターだ。
「つまり何をすればいいんだ?」
「『こんなとこ出てってやる』って暴れてゲームマスターに歯向かう?」
「死亡フラグ」
早速、渚冬が歌華にツッコミを入れる。確かにそれは心の底から言えることだが、初手は下手に逆らわず、おとなしくしているのはデスゲームの世論である。
「出たいなら参加しろってことだね……」
仕方なく呟く。もちろん乗り気で言っているわけではない。参加するならと綺麗なペンダントをもらった。特徴や状況から察するに所謂……。
「皆さん。ベッドにトランプが二枚一組に並べられているのが見えますか?」
よく見るとベッドにトランプが二枚一組に二四組、並べられている。
「好きなものを選んでください」
ゲームに使えということだろう。うん。適当だがハートの六とダイヤの五にしよう。言われた場所へ向かおうとすると、誰かがドッジボールのボールのように吹っ飛んできた。磨輝が誰かに突き飛ばされたのだと理解するのにそこまで時間はかからなかった。
「ちょっと! やめてください!」
「おい! それ、よこせ! エースとか絵札なら大体、どのゲームでも強いだろ!」
磨輝からカードを取り上げたそいつはさっさと部屋へ行ってしまった。そういえば他の絵札やエースを選んだ人はもう行ってしまっている。そういえば兄姉がもう一人もいない。怖くないのかときょうだいながら少しドン引く。
「磨輝。これ」
「とう姉〜ありがとう」
陶瑚が磨輝に誰にも言うなというオーラを出しながら何かを渡した。何はともあれ全員がカードを選ぶことができた。その場所に行ってみると四枚のトランプの七が一列に並んでいた。それより気になるのは部屋がゲームマスターと参加者の数だけ壁で仕切られていた。参加者はゲームマスター以外とは話せないし、ゲームの場以外は見えない。
「ではこれから七並べを始めます。好きな席についてください」
やることはようは自分たちが知っている七並べだ。七を中心に同じマークの連続した数字のカードを並べていくゲーム。二つだけついた補足は一つだけ。パスは三回まで。それを過ぎたら失格。
「着席しましたね? それではスタート!」
やること自体は単純だからかさっさかと進んでいってしまう。そして第二ターンの途中。
「文月陶瑚、トップ通過!」
嘘だろう。マジか、自分の妹。と思う。しかし焦る必要はない。これで終わりだ。
「幸呼奈、お先」
「待って、陶瑚!」
「二番手は文月幸呼奈だ!」
終わったら次の場所で待っているのがルール。ここへ来て最初の部屋とあまり変わらない。ベンチが置いてあるだけ。
「陶瑚はカード何取ったの?」
「ダイヤとクローバーの九」
しばらくすると渚冬も部屋へやってきた。
「なぎ兄ちゃん何のカードを取ったの?」
「スペードのジャックと六」
陶瑚が尋ね、渚冬が答える。さらにしばらくしてやってきた茉津李。
「カード何取った?」
「スペードの八とダイヤのクイーン」
渚冬が尋ね、茉津李が答える。しばらくも経たないうちに歌華もやってきた。
「何のカードを取った?」
「ダイヤのキングのスペードのクイーン。パス二回しちゃった(笑)」
何故、笑えるのかと。しばらくして初めて触れる狂気に怯えきった顔で磨輝もやってきた。
「皆さん、お疲れ様でした。これにて第一ゲームクリアです」
「ちょっと待って……一人いないよ!」
「牛鼻……山護さん……」
あー。あの磨輝からカードを取り上げようとしていた人だ。待合室にあった名簿を見る。
「あの人が持ってたカード何!」
「エースとジャック。僕もエースとジャックだった……」
取り上げなければ負けたのは彼ではなかった。おそらく生き残れば呪いから解放されるというのは本当だろう。ゲームに負ければ命を落とすことも。何故、非感染者の自分たちも巻き込まれているのか。自分たちはこれからどうなってしまうのか。不安でならない。