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文化祭の翌日。
片付けがほぼ終わり、ホットプレートで残ったクッキー生地を焼いていた時。
「そういえば、本格的な登山はまだ行っていませんでしたね」
先生がそんな事を言い出した。
「本格的な登山って、ハイキングとどんな所が違うんですか」
「基本的には同じなんですけれどね。ハイキングでも道迷いをしたり、事故に遭ったりすることがありますから。ある程度高い山の山頂を目指して登るのが登山で、標高差300m以内の所を歩くのがハイキングでしょうか。
登山の方が高い場所に行きますし、時間も距離も長かったりするので、その分色々な装備と注意が必要です。ただその分非日常感も、達成感も大きいですよ」
「秋津の皆さんは、秋休みで北岳に登ったそうなのです。1泊2日で、確かに綺麗だったけれど、体力ボロボロになったそうなのです」
未亜さんが恐ろしい事を言う。
「小暮先輩はスパルタですからね。北岳は日本で2番目に高い山ですし、メインの登山口からの標高差が1,700メートル弱ありますから。あそこは他に本格的な沢登りもしていますし。まあ高校生主体だから、体力的には充分なんでしょう。
うちの野遊び部は中学生なので、そこまで厳しい登山はしないつもりです。まずは丹沢の塔ノ岳という山に日帰りですね。標高差1,000メートル位の日帰りです」
僕はちょっと考える。
それって……
「標高差1,000メートルの日帰りって、1泊2日の標高差1,700メートルより、数字上は厳しいような気がするのですよ」
未亜さんも僕と同じ事に気づいたようだ。
「数字上はそうなんですけれどね。登山は基本的に、行きは登りメイン、帰りは下りメインなんです。縦走だと少し変わりますけれどね。ですから、1泊2日の標高差1,700メートルですと、1日目に実は標高差1,600メートル位を一気に登ることになるんです。ですから実際は、標高差1,000メートルの日帰りの方が遥かに楽ですよ。
私の経験ですと、普通の体力があれば、だいたい1時間で標高差400メートルくらいは無理なく登れるんです。むろん実際は登山道の状態によって変化しますけれど、大体の目安として。
ですから、実際に頑張るのは全部で2時間半程度。そう思うと大した事はないです。あと景色は高いだけあって最高ですよ」
騙されていないよな。
実は、行ったのを後悔する位に辛かったりしないよな。
「今の季節の山は確かにいいよな。虫がいないしさ。空気が澄んでいて、木の葉が落ちているから見晴らしが良くなるし。あと、程良く疲れたところで景色を見ながら食べる飯は、抜群に美味しいぞ」
「乗ったのだ!」
亜里砂さんが真っ先に食いついた。
一方、彩香さんは。
「私の体力でも大丈夫でしょうか」
ちょっと不安そう。
「大丈夫、大丈夫。確かに足のリーチの分彩香が一番不利だけれど、今の彩香の体力だったら、充分に登れる」
「何か楽しみになってきました」
美洋さんがこう言い出すと、もう止められない。
つまり登山は実行、という事だ。
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