サイド キノ
こいつ、すっげー嫌いだっ!!
俺を子供扱いしやがって、許せん!!
俺はこれでも中三だってのに!
「キノ、落ち着け。そして会ったばかりの人を殴ろうとするな」
マオがそう言いながら拳を作った俺のジャージの襟を引っ張った。
「ぐえっ」
「あははっ!マヌケですわね、だ・ん・ちょ〜?」
「あったばかりのレディに、手を出すなんて、やっぱキノはこうでなきゃねーwww」
「確かに、レンより子供っぽい……」
こいつら!ユメ、ルネ、キリ、後で覚えとけよ!
「ま、まあまあ、それくらいにしておこう?それで、僕たちもいろんな人に聞いたりとかしてみるから、とりあえず名前と住所くらいは教えてくれないかな?」
トキはそう言いながら、その女と目を合わせた。
しばらく考えた後、女は低い声で淡々と言った。
「渋谷 亜美(シブヤ アミ)。高一」
……………………。
えっ、それだけか?
「私、胡散臭いやつらに個人情報言うつもりないから」
うわっ、こいつ「ウサンクサイ」ってハッキリ言いやがった!!
「っ、し、しっかりしてる人、だね……」
電柱の後ろに隠れながら、タエは言う。
そんなタエを、アミはギロリと睨みつけた。
「家族が殺されて、しっかりしない以外にどうしろっていうの?!」
「ひっ……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…………!」
ああ、もう!だから俺らも手伝うって言ってんだろ?!そんな怒んなくてもいいじゃねぇかよ!
「私はあんたたちを信用しない」
アミはハッキリそう言った。
すっ、と真っ直ぐにマオのことを指差しながら。
「犯罪者と連んでいる奴らと、手を組むなんてまっぴらごめんよ」
『──────!!』
タエとトキが息を呑んだ。
レンとユメが目を背けた。
マオが目を見開き、ルネはアミをじっと見つめた。
そして、俺とキリが拳を握り締めた。
……何も、知らねーくせに。
その言葉を口に出せなかったのは、マオが、それを望んでないとわかっているからだ。
考えることは苦手だ。どう頑張っても、悪い方へ転がり落ちてしまうから。
蝉の鳴き声が今は煩わしかった。
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