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ちーのside
あれから俺は、ショッピに会っていない
俺はショッピを怯えさせてしまった
もうあいつも俺なんかと関わりたくないだろう
あいつが事故にあう前の話を出すだけで息苦しい
本当に俺という存在”だけ”が抜け落ちているんだと思うと
どうしようもない虚しさと喪失感が浮かぶ
気が付けば俺は意気地なしに成り下がっていた
これでいいんだ。ショッピもきっと、俺が嫌だから忘れたんだ
俺は諦めたんや
ショッピside
あれから、ワイは割と早い段階で役所に復帰できた
デスクには承認待ちの書類が積まれていた
鞄を乱雑に机の下に足で押し込む
そのまま椅子に座って、一番上の書類を手に取った
部屋にはワイ以外にトントンさんしかいなかった
ワイが紙をめくる音しか聞こえない
時折ペンが走って、キーボードがたたかれている
こんな些細なことも、ずっと忘れてないのに
なんでちーの君だけは思い出せないんだろうか
書類の隙間から、ひらりとオレンジ色の羽が一枚落ちる
夕日を連想させるような鮮明なオレンジ
ただの羽なのにやけにそれが宝物みたく思えた
これはしまっておこうと机の引き出しを開けると中から数本、同じようなオレンジの羽
その奥にあのちーの君とやらと俺が映ってる写真があった
大先生がいる写真もある
それを手に取り眺めていると、すこし温かい気持ちになったと同時に
コイツのことは、意地でも思い出さなくちゃならない気がしてきた
あいつもあんなに取り乱すほど仲が良かったのに
ワイが忘れててどないするんや
「トントンさん、ちょっといいっすか?」
そう声をかける
「なに~?」
画面から目を離さず体を軽くこっちに向けるトントンさん
「ちーの…さんと、ワイって、どんな仲でしたん?」
トントンside
正直驚いた
ショッピがいきなりちーのと自分の仲を聞いてくるとは、思ってもいなかった
でも、考え直すと必然なのかもしれない
「二人は…せやなぁ…」
何かいい言葉はないかと頭の中を探ってみる
「まぁ、なんや…類友やった気ぃはするな」
類は友を呼ぶ、そんな言葉を体現しているかのような仲ではあった
チーノもショッピも愉悦タイプやし、強かやったし
二人とも後輩的なポジションとしてそれらしくしっかりやっていたし…
どういう仲かと改めて聞かれると、わからない気もする
親友とかきれいな言葉ではおさめてはいけない気もするし
だからと言って、不仲というわけでもなかった
「腐れ縁って、お前らは言ってたな」
飲みの席でのそこまで確かではない言葉だったが今はそれがしっくりきた
「くされえん…」
そう俺の言葉を反芻するショッピ
「まぁ割と似てた気ぃするで、知らんけど」
ショッピside
腐れ縁…そんなことを言った記憶が全くない
トントンさんが言ってた日数に飲みに行った記憶もあるし
べろんべろんに酔った大先生を家に送った覚えもある
ただあのちーのさんだけが思い出せない
大先生とちーのさんとワイが映ってる写真
確かに行ったことのある場所やった
でもあの目立つオレンジ頭がいたかの確証がない
いたと思えばいた気もするし、いないと思えばいなかった気もする
「…お前は一体なんやねん…?」
忘れ切ったはずのワイの頭にこびりついて離れへん
煙草の箱を手に取り、オレンジの羽をつまんだまま席を立つ
「…たばこ休憩行ってきます…」
「おう、いってらっしゃい」
ふらふらとした足取りですぐそばにある喫煙所に向かった
頭の片隅に居座り続けるこいつを、煙草で燻しでもしないと仕事に集中できない
喫煙所の扉を開けると、件のちーのさんがいた
「あ…ちーの…さん」
まだ慣れなくて、敬称をつけてしまう
何か声を掛けなくちゃ
昔のことを聞かなくちゃ
思い出そうと、していることを
伝えなきゃと思うたびに、喉がから回って声が出なかった
後ろめたいことなんて一つもないはずなのに
そうしていると、ちーのさんは手に持っていた
つけ始めたばかりであろう長い煙草を
灰皿に押し付けて消してしまった。
シケモクにもなりやしないほどめいっぱい
「……あの…」
声をかけようとしたワイの横を無言で過ぎ去っていく
帽子で顔が隠れてよく見えなかったが、その顔は少し暗かった
まさか、三編仕立てになるとは…
コメント
1件
ちーのとショッピ、それぞれの視点が切なくて苦しい…。オレンジの羽が宝物みたいに思える気持ち、分かる気がする。トントンさんの「腐れ縁」って言葉がしっくりきた。最後の喫煙所で、ちーの君が煙草を消して去っていくところ、胸がぎゅっとなった。次が気になるよ…!