テラーノベル
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ちーのside
ケツポケットから煙草の箱を取り出した
箱を軽く振って一本を取り出して咥える
この気持ちは煙草でしか煙に巻けないってか…?
感傷的になりつつもそのまま火をつけようと、いつもの流れでからライターを取り出した
ホイールを親指で弾くと、乾いた金属音がひとつ、喫煙所に響く
ガラス張りのこの部屋にいるのは俺一人
いつも通り端っこの換気扇の下に陣取って、壁にもたれかかっている
俺の手の中で火花だけが散って、遅れて小さな火が揺らめきだす
火のぬくもりと、ホイールを弾く感覚が、いやにリアルで、現実を感じさせた
煙草の先を軽く炙る。
火種が移ったことを確認してライターを閉じた
そのまま思いっきり吸うでもなく、ただ咥えてぼぉっとする
頭を壁の角に押し付けて上を向く
帽子ごしに感じるコンクリートは冷たくて硬い
カバーが取り外されて、ファンがむき出しになっている壊れて動かなくなった換気扇
立ち上った煙が羽の隙間から見える晴天に吸い込まれていく
そうやっているうちに口元が熱くなるのを感じた
「あちっ」
唇に何か痛みが走って、思わず口から煙草を離す
見ると煙草がずいぶん小さくなってしまっていたようだ
吸った気がしないからもう一本取り出して火をつける
今度は肺いっぱいに煙を吸い込んだ
頭がすうっとクリアになった気がして
ニコチンに染まり切ってしまったことを痛感する
ふと、喫煙所の摺りガラスのドアの前に人影
扉があくとその人影がショッピだと気づいた
いつもなら、軽く手を挙げて、「おう」とでも呼んで、
自然とショッピが俺の隣に来て、他愛もない話をして
そんな当たり前が、あったはずだったのに
「あ…ちーの…さん」
扉を開けたショッピが驚いたような、それでいてショックを受けたような顔をする
その顔と、ちーの”さん”という敬称に驚きつつも
心のどこかで納得してしまった…いや、納得させた
やっぱりそうだよな
もう二度と前みたいには戻れないんだ
疎遠になった大人が、なかなか仲直りしない理由がやっとわかった気がする
ショッピへの未練も込めた煙草を、灰皿に強く、強く押し付ける
紙巻のたばこは無残に押しつぶされて醜く形を変えていく
まだ焦げすらついていない茶色く乾燥した草が灰皿の奥に落ちていった
「……あの…」
そう俺に声をかけようとしたショッピの声に知らんふりをして
俺はその横を過ぎ去った
ショッピの顔は見れない
俺にはこいつを見るような資格さえない
これでよかったんや
こうじゃないとだめなんや
ショッピside
あれからワイはちーのさんとの記憶を探しに外に出ることが増えた
軍団で遊びに行った場所とか
行きつけのゲームセンターとか
よく言ったお店とか
店自体は覚えているけど、その店でちーのさんといたかといわれると
正直わからない。
もはや意固地になってもワイはあの人との断片を探し続けた
あんな顔をワイにしておいて、何も言わずに終わりにしておけるわけがない
とある店で会計をしていると店員にこういわれた
「今日はおひとりなんですね」
「…はい?」
そう聞き返すとお店の人は少し困惑したようにつづけた
「いえ、いつもはオレンジの髪の方と一緒だったので‥」
喉奥から漏れ出た声は情けない
店員に覚えられるほど、ワイとちーのさんはここに二人で通っていたんか?
「すごく仲がよさそうで、いつもおいしいって言ってくれていたので……ご不快でしたか?」
「いや、ちゃうんです‥すみません。ごちそうさまでした」
そのまま店の外に出る
空は憎たらしいほど変わらない晴天やった
チーノside
今日も変わらず、役所で仕事をしている
あの時はうれしかったショッピの近くのデスクも、今では苦しいものでしかない
ショッピは最近出かけることが増えた
出かける前には必ず俺の羽をもっていくことをみんな目撃している
やめてくれ、これ以上俺に期待させんでほしい
せっかくあきらめたのに、せっかく気持ちに整理をつけようとしたのに
シャツの裾を握りしめている手の輪郭がゆがんだ
嗚呼、いっそのこと、何もなかったのように消えてしまえれたら
「どれだけ楽なんやろうか…」
手の甲に生暖かいしずくが落ちた
ショッピside
今日も変わらず、役所で仕事をしている
デスクが近いのに、ちーのさんと顔を合わせることはほとんどない
ちーのさんは俺が復帰した当初よりも出不精になった
デスクワークをしているところを見ることが増えたとみんな言っていた
やめてくれ、これ以上ワイが思い出しにくくしないでほしい
せっかくあとちょっとなのに、せっかく思い出せそうなのに
オレンジ色の羽を握りしめている手の力が強まった
嗚呼、いっそのこと、あいつの首根っこひっつかんで、連れ出すことができたら
「どれだけ楽なんやろうか…」
力をこめすぎた手が白くなっていた
ふぅん…終わりが見えねぇな…(震)
おかしいな…俺は短編として出すつもりだったはずが気が付けば三話連続の続き物を書いているぞ?????
次で終わるかどうかも怪しいぞ?????
まぁどれもこれも俺の知名度不足のせいでリクエストが来ないからなんだが…w…ははw
コメント
1件
ユエツさん、第4話読みました。「ちーのさん」って呼ばれた瞬間の、距離を感じさせる敬語が本当に刺さりました。煙草を灰皿に押しつけるところ、あの無理やり自分を納得させるような強さが切なくて。お互いに「やめてくれ」って思ってるのに、羽を持ち出したり、シャツの裾を握ったりするところが逆に愛おしくて…。次がどうなるのか気になりすぎます。無理せず、ユエツさんのペースで続きを待っていますね。