シェアする
夜、雲が月を覆う。
辺りが闇に包まれる。
静寂の中、聞こえるのは己の鼓動。
別部隊襲撃の犯人、それを捕らえるために昨日の夜から森にいた。
自分「寒いな、」
カイロを用意していたがそれでも寒い。
夜なのもあるが、戦闘の為に薄着なのが問題なのだろう。
自分「これは、早く来てくれないと凍えちまうな。」などと小言を言っていると、
ザリ、ザリ
足跡が聞こえてきた。
来た、それを理解すると同時に飛び出した。
ナイフを構え、標的の首を狙う。
ナイフは確かに首元に届いた。
しかし、血は流れなかった。
ナイフの刃は首に触れると同時に消滅した。
それは驚くべきことだった。
能力は望まなければ発動しない、奇襲などを防ぐのは困難だ。
だが、それ以上に驚くことがあった。
なぜなら、目の前にいた奴の顔は、
自分「………………え?」
妹の顔をしていたのだから。
目の前にいるのは犯人だ。
犯人が妹? 妹が犯人? 犯人、なんの?
妹ってなんだ? こいつは誰だ?
あまりに衝撃のことで思考が乱れる。
自分(落ち着け、落ち着け。)
妹が手を伸ばす。 触られるのは危険だ。
その手をすんでのところで躱す。
ミユウ「…………………」
自分「未夢?」
ミユウ「…………………」
未夢は何も答えない。
妹が犯人、信じたくもない。
けれど、何もしない訳にもいかない。
僕は距離をとる。手が震える。
こんな感覚に陥るのはいつぶりだろうか。
未夢が手を伸ばす。
刹那、轟音が響き渡る。耳を劈くような音。
音だけではない。地面を抉るように進む閃光。
そのどれもが僕を襲う。
自分「っっ」
地を蹴る。右にズレる。全力で横に行くが間に合わない。 左腕が消える。
激痛が走る。 鮮血が舞う。
実感する。妹が妹でなくなる瞬間を。