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――まったく、おれとしたことが。
せっかくの七連休を前に。……こんなことになるとは。
ところが、ベッドサイドに座り、おれの髪を撫でる莉子は、なんだか嬉しそうだ。課長が気を緩めた顔見せるなんて珍しい、なんて言って笑う。――莉子。
おれは、本当は、きみの前では常に格好いい男でいたいんだよ。本当に。
だけれど、きみは、それを許してくれない……。おれに、素の姿をさらせと。いや、……自然と引き出されてしまうのだ。
きみのことを想うと胸が苦しい。両想いになっても、どうにも……どうにも。きみのことを想うだけで胸が張り裂けそうだ。
実を言うと会社で鉄面皮の顔を貫くのに苦戦している。きみを見るとついつい、頬が緩んでしまう。……が。公私混同など言語道断。なので、例え、会社の面子におれたちの交際が露見したとて……いや。莉子と結ばれた週明け早々に、バレそうになり、おれが交際宣言したんだっけな。やけに、あのときは、騒がれた。
騒がれた……。
「――課長」
「あんまり傍にいるなよ」しかし、おれは、きみの手を振り払えない。「……移りでもしたら大変だ」
するときみは、おれの胸板に顎を乗せ、いたずらに笑い、
「課長の風邪なら喜んで貰いたいくらいです。――キスして」
おれは首を振った。「……きみの上司としてそれは許容出来ない」
「――なら。恋人としては……?」
うるんだきみの瞳に欲情を見た。汗をかいたこのからだ。シャワーを浴びなくては、という抑制が一旦は働いたものの、魅惑的なきみの誘惑から逃れるほどの威力は持たなかった。気が付けばおれは――むき出しにされ、ほおばられていた。
「――あ。……莉子。……っ」
病み上がりと言うのも手伝ってか。やけに、感度が強い。いつもより感じる。やばい。
「課長……おっぱい、びんびん」おれのあれをはむはむしながらきみは上目遣いで、「そっちも舐めたげようか……ねえ。しこって欲しい?」
「い、い、いや……」おれは首を振ったのだが。強く――思いのほか強く握られ、顔が歪むのが分かった。苦痛とないまぜの快楽。教え込んだのは――誰だった?
見事なまでに、きみは、正確に、おれを、導いた。――きみを初めて愛しぬいた夜のことを思い起こした。きみの献身ぶりが――。
数えきれないほどに射精しながらもおれはあえいだ。「莉子……莉子。莉子。莉子。おれの莉子……。きみのなかに、入りたい……」
苦悶するおれの頬を両手で挟み込み、鼻先に熱い息を吹きかけるきみは、
「いいよ」
サイドテーブルに、いつから、あれが必需品になった? きみが――来てから。きみを知るまで、女性なんて……真に、愛したことがなかったのに。
本当に人間を愛することの尊さを教えてくれたのは、きみだ。莉子。
きみがいるからおれは――
慣れた手つきでおれのあれにそれを装着すると、きみは、おれに覆いかぶさった。――いつになく、大胆なきみが、愛おしい……。
「あ、あ、あ……莉子。莉子ぉっ……っ」
――実に、感じる。非情なまでにおれを追い込む、きみのあたたかい場所。一緒になることで……ひとつになることで、目の前に火花が散り、視界さえ滲むのだ。
「あ、あ、あ……っ。あっ……ああああっ……!」
いつもなら抑えられるのに。どうしてだろう。熱の余波か……それとも、積極的なきみに魅了されてのことか。きみの最奥に辿り着く前に、恥ずかしいことに吐きだしてしまった。しかし、きみの動きは、止まらない。
「……く。駄目だ……莉子。それ以上は……っ」
しかし、きみは、手早く引き抜き、必需品のティッシュでくるむと第二弾。さくっと装着し、ずぶずぶと、腰を……沈めていく。――ああ。あ、あ……!
頭が、おかしくなりそうだ。目の前がくらくらする。
「……む。無理だ。莉子。莉子。莉子……っ。頼む……っ」おれは涙ながらに首を振った。「駄目だ。普段より感じる。おれは……もう、止められない。止めてくれ……頼む……!」
「――舐めて」
おれの髪をやさしく掴み、見下ろすきみは、神々しかった。そして、おもむろに、自分の感じやすい部分を、おれの口に突っ込む。――容赦なく舐めてしまうこの反射神経。性とは愛だと誰が教えた? 決まっている。
この世の、神だ。
まごうことなき、おれの、女神。――莉子。
莉子は。過激なまでにおれを追い込み、何十回とも知れぬエクスタシーの世界におれを追いやることに成功した。
* * *
「……まったくきみと言ったら……」
「えへ」
あれから、一緒に風呂に入り、疲れたからだを休めている。相変わらずきみは、おれのことが好きなようで、マグネットみたいに、おれに、ぴったりと引っ付いている。……高級ベッドを買ってよかったな、とこういうとき思う。
「……にしても。ご実家に行くつもりだったのに、ごめんな。せっかくのGWなのに……すまない。おれの体調管理不足で……」
「水臭いなぁ課長」ぷに、ときみはおれの鼻を摘まむと、「風邪なんて誰だって引くんだし。こないだわたしが寝込んだときは、課長は、泊りがけでわたしの看病をしてくれたじゃないですか。恋人……なんですから。気なんて遣わないでください。実家なんていつでも行けるんですから。……それより」
ふ、と思いのほかきみは妖艶な笑みを浮かべると、
「――せっかくの七連休。愛欲の波に、わたくしと溺れるのはいかがでしょう」
結局おれは、きみのことを愛することを、やめられない。
*