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ともとも
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あの日は雨が降っていた。
今まで生きてきた中で、一番ドキドキした日。
バイト終わりの帰り道、私は自分の車に向かって歩いていた。
雨粒がアスファルトを叩く音だけが静かに響いている。
ふと前を見ると、また颯太さんの車が私の車の隣に停まっていた。
「また隣だ。」
思わず小さく笑う。
最近、不思議とこういうことが多い。
颯太さんは私のバイト先の先輩だ。
六つ年上で、誰にでも優しい。
私が困っているとすぐ気付くし、何か失敗しても怒ることはない。
少し意地悪で、よく私をからかう。
でも本当に嫌なことは絶対にしない人だった。
だからみんな颯太さんのことが好きだった。
もちろん。
私も。
ただ、その「好き」が先輩としてなのか、それ以外なのか。
この頃の私はまだよく分かっていなかった。
颯太さんと話していると楽しい。
DMが来ると少し嬉しい。
シフトが被る日は、なんとなく機嫌がいい。
そんなことを考える自分がいることには気付いていたけれど、その理由までは考えないようにしていた。
だからこの日も、いつもと同じだと思っていた。
ただ少し話して帰るだけ。
そう思っていた。
車の前まで来ると、颯太さんが運転席の窓を開けた。
「〇〇、お疲れ。」
「颯太さん、お疲れ様です。」
私はそう返して、颯太さんの車へ近づいた。
颯太さんは車の中。
私は車の外。
それなのに、なぜかその距離が近く感じた。
この時の私はまだ知らなかった。
この日が、私の心臓を何度も何度も振り回すことになるなんて。
コメント
1件
わあ、第1話からもう胸がきゅっとなりました……!雨の日の静けさと、颯太さんの車が「また隣」に停まっているという偶然の積み重ね、すごく素敵です。主人公が自分の気持ちをまだ認めたくない感じ、すごく共感しました。「シフトが被る日はなんとなく機嫌がいい」って一文、めちゃくちゃ刺さります。これからどうなるんだろう、続きが気になります!