テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
14話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
うっしーが去った後、部屋の中には急に静寂が落ちた。
まるで嵐の後のような空気が漂う。
キヨはソファに座ったまま無言。レトルトもその横で俯いていた。
どちらからも言葉が出ないまま、時間だけがじりじりと過ぎていく。
やがて、レトルトがふっと小さく息を吐き、ぽつりと呟くように口を開いた。
「……ごめんね、びっくりしたよね。うっしー、ちょっと怖かったでしょ?」
キヨはゆっくりとレトルトの方を見て、小さく首を横に振る。
『別に。……ただ、レトさんが俺以外と楽しそうに笑ってると思うとさ….ちょっと…』
キヨは微かに震えていた。
レトルトは少しだけ目を見開いて、それからまたそっと視線を落とした。
「でもね、うっしーは……本当に大事な親友なんよ。俺のこと、いつも見ててくれて……」
そう言いながら、レトルトの声が少し震える。
「俺、キヨくんといると、今まで感じたことない気持ちになる。嬉しかったり、ドキドキしたり……でも、時々、すごく不安にもなる」
キヨの目が柔らかくなった。
『俺も同じだよ、レトさん。初めてだから、うまくいかないことだらけだ。だけど――』
と、言いかけたところでキヨは手を伸ばし、レトルトの頭を優しく撫でた。
『だからこそ、ちゃんと伝えていきたい。
ちゃんとレトさんと向き合いたいから。レトさんの事、大事なんだ』
レトルトは、少し涙目になりながらも笑って、小さく頷いた。
「ちゃんと、向き合いたいから」
キヨのその言葉に、レトルトはそっと顔を上げた。
いつもの調子でからかってくるキヨではなくて、今はまっすぐ、自分を見つめる目。
その真剣な表情に、胸がぎゅっと締めつけられる。
「……俺ね」
レトルトがぽつりと口を開いた。
「怖かったんだ。キヨくんとこうして仲良くなって、俺なんかでもこんなに大切にしてもらえてるって思ったら……今度は、それを失うのが怖くなって」
レトルトは、ソファに座ったまま膝を抱えるようにして、ぽつぽつと心の内を吐き出した。
キヨは黙って、それを最後まで聞いていた。
「……かっこ悪いな、俺」
レトルトが苦笑したその瞬間、キヨはそっとその手を取った。
『かっこ悪くなんかないよ、レトさん』
キヨの声は、思ったよりも柔らかくて、優しかった。
『俺だって、レトさんが他の誰かと笑ってたら、胸がきゅーってなった。うっしーに睨まれて、正直焦ったし、ムカついたし、でも……それって俺、ちゃんとレトさんのこと、好きだからなんだって思った』
レトルトの目が潤む。
『好きだよ、レトさん。真面目に。本気なんだ、俺。だから、誰にも渡したくないって思った。俺、独占欲強いんだよ』
レトルトの顔が赤くなった。
「……俺も、だよ。俺も、キヨくんが他の誰かに優しくしてるのとか、見たくない」
少し泣きそうな顔で、でも笑いながら、レトルトは言った。
「俺も、キヨくんが好き。すごく、好き。……不安になるくらい、好き。」
その言葉に、キヨの頬がわずかに赤くなる。
『俺たち、なんか似ててるな笑』
「……うん////」
2人は自然と向き合い、見つめ合って
照れくさそうに笑い合った。
キヨはレトルトの手を引き寄せ、そっと抱きしめた。
肩の力を抜いたレトルトが、自然とその胸に顔を埋める。
しばらく、ふたりは何も言わず、ただお互いの鼓動を感じていた。
言葉よりも、ぬくもりで伝え合う愛情が、そこにはあった。
キヨの腕の中、レトルトは穏やかな表情で目を閉じていた。
そのあたたかさを感じるたびに、安心して、自分がここにいていいんだと思える。
だけど。
キヨの脳裏には、ふとした光景がよぎる。
――ゲームに夢中になりながら、楽しそうに笑っていたレトルト。
その隣には、当然のような顔で座っていた男――うっしー。
(……俺だけのレトさんなのに。誰にも渡さない。俺だけが知ってればいい。)
胸の奥でちりちりと燻るものがある。
それは、自分でも持て余すような独占欲であり、嫉妬だった。
『……レトさん』
耳元で低く囁くと、レトルトが「ん……?」と小さく返事をする。
気の抜けた、甘えたような声に、また胸が苦しくなる。
『さっき……うっしーに、どんな顔で笑ってたの?』
レトルトが、ぱちりと目を開ける。
「え?」
『…なんか、やだ。俺、今までレトさんのそういう顔、たくさん見てきたつもりだったけど……他の人にも見せてると思うと。なんか、嫌だ』
レトルトはすぐに言葉を返せなかった。
キヨは軽く息をつくと、少しだけレトルトの髪に顔を埋める。
『俺、めんどくさいよな。嫉妬深いし、独占欲も強い。……今も、本当は、どんや顔して笑ってたんだろうってもやもやしてる』
ぽつぽつと、けれどはっきりと語るキヨの声。
レトルトは、少し驚いたように黙ってそれを聞いていた。
そして、小さく笑った。
「……そんなに見てくれてたんだ、俺の顔」
『……だって、好きだから』
即答するキヨに、レトルトの胸が熱くなる。
「あほ。そんなの、うっしーに見せる笑顔と、キヨくんに向ける笑顔じゃ全然違うよ」
『違う?』
「うん。……キヨくんに向けるのは……好きな人にしか見せない顔、だもん」
その言葉に、キヨの目が細くなる。
『……そっか。じゃあ、あの笑顔は……俺だけのやつ、なんだな』
「当たり前でしょ!」
レトルトがむくれてみせると、キヨはくすりと笑って、今度はしっかりと唇を寄せた。
やわらかくて、確かなキス。
レトルトの手が、キヨのシャツの裾をぎゅっと掴む。
『…レトさん、やっぱ好きすぎるわ』
「……俺も、だよ」
夜が明けても、気持ちはますます深く絡まり合っていく。
嫉妬も、独占も、不安も全部まとめて――愛しさの証。
レトルトの言葉に、キヨの腕がまた少しだけ強くなる。
髪に口づけながら、ぽつりとこぼした。
『……俺にヤキモチ妬かせた責任、ちゃんと取ってもらうからな』
低く腰に響くような声。
レトルトが思わず身体を引こうとすると、すかさずキヨが腰を引き寄せて逃がさない。
不安と期待が入り混じった顔のレトルトに、キヨは悪戯っぽく笑った。
その目は、野獣のように鋭くレトルトの心を揺らした。
嫉妬と独占欲が渦巻くその瞳は
“絶対に逃さない。俺のものだ”
と語っているようだった。
この目に囚われたら逃げられない。
レトルトは小刻みに震えながら、抵抗する事も出来ずキヨに身を委ねた。
つづく
コメント
1件
はぴゃぁぁぁぁぁ!!ホント素晴ら過ぎる!!最高です!