テラーノベル
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こんにちわ!
あけおめ! ことよろ!
いってらっしゃい!
教室の扉が静かに開く。
担任教師が入ってくると、ざわついていた空気がすっと静まった。
「はい静かにー。今日は転校生が二人来ている。入ってきて。」
促され、チグサとラオが前へ進む。
教室の空気が、ほんの一瞬だけ揺れた。
(風の流れが変わる……)
チグサは胸の内でそう感じたが、表情には出さない。
ただ、淡く、静かに息を整えた。
先生が促す。「それじゃ、簡単に自己紹介を。」
チグサが一歩前に出て、深く一礼する。
「……チグサです。
話すのは得意じゃないですが、よろしくお願いします。」
声は静か。けれど、不思議と耳に残る。
その隣で、ラオも軽く頭を下げる。
「らおです。迷惑をかけないように努めます。よろしくお願いします。」
拍手。教室が少し柔らかくなる。
先生が尋ねる。「それじゃ、席は——あっきぃの隣と、その前な。」
あっきぃが勢いよく顔を上げた。
「えっ、ちぐちゃんが俺の横!?」
クラスがくすっと笑う。
チグサは少しだけ驚きつつ——微笑む。
「……あっきぃ。よろしくね。」
「うん!もちろん!」
ラオはその前の席へ静かに座る。
席に着いた瞬間、何人かの女子が小声でひそひそ話した。
「今の子……声、綺麗じゃなかった?」
「うん、落ち着いてる感じなのに、なんか——優しい。」
ラオは聞こえているが、振り返らない。
(俺の声か……声質なんて、気にしたことなかったけどな)
ちらりと後ろのチグサにだけ視線を送る。
それだけで、少し安心する。
窓の外では、春の風が、静かに校庭を渡っていく。
放課後の廊下。窓から差し込む光が床に伸び、金色にきらめいている。
転校したての ちぐさ と らお は、校舎を案内してくれる あっきぃ について歩いていた。
「この時間なら、まだどの部活も見学できるよ~。体育館とか行ってみる?」
「ありがたい。」ラオが礼儀正しく言う。
ちぐさはきょろきょろしながら尋ねた。
「…生徒会って、どこにあるの?」
「生徒会?あー、四階の――」
――そのとき。
「そこを曲がれば生徒会室だよ。」
静かな声が廊下に落ちた。
振り向くと、赤い腕章をつけた男子が立っていた。
空気が一瞬で静かになるような、整った視線。
「……あっと。生徒会。」
すぐ後ろから桃色の腕章の男子が走ってきた。
抱えていた紙が少し床に散らばる。
「あっ、待ってよ、あっちゃん!置いてくなんてひどい~」
「ごめん…」
あっとは一息ついて、二人に視線を戻す。
「……転校してきた人たちだよね。ようこそ。」
ちぐさが軽く頭を下げる。
「うん。ちぐさ。」
「らおだ。」
「俺はあっと。生徒会副会長をしてる。困ったことがあれば、いつでも言って。」
それだけ言うと、ふとちぐさの横髪に目が留まる。
淡く動いた髪の先。
静かな空気。わずかな風の揺れ。
――ひゅう、と。
風の音なんてないのに、
一瞬だけそんな気配がした。
あっとは目を細めた。
「……今、風が少し動いた気がしたけど……気のせいかな。」
ちぐさは首をかしげる。
「え?」
その横で、けちゃが楽しそうに笑う。
「ちぐちゃん、風まとってる感じする~。ふわふわしてていいね~」
ラオが珍しく口を挟む。
「感じたのか?何かを。」
「えへ、なんとなく」
あっきぃが急いで話題を戻す。
「そ、それより!体育館行こうよ!バスケ部いるし、面白いよ!」
けちゃも続く。
「いこいこ~。あっちゃんも、どう?」
「……書類はあるけど……少しだけなら、一緒に行こうかな。」
そう言ってあっとが一人で歩き出そうとした瞬間、
けちゃが袖をつかむ。
「また一人で先行く~。だめだよ、あっちゃん。」
あっとは振りほどこうとはせず、
少し苦笑いしながら歩調を緩めた。
「…ちゃんと一緒に行くよ。」
らおがぼそっとつぶやく。
「…仲がいいのか、悪いのか。」
あっきぃが笑う。
「仲はいいよ!多分!」
体育館。
バスケットボールの弾む音。
声。靴の擦れる音。汗の匂い。
「おーい!あっきぃー!そっち転校生連れてんの!?」
黄緑の髪の男子が、元気に手を振ってくる。
その横で、白と黒の髪がくっきり分かれた男子が、腕を組んで立っている。
「ぷーのすけ!そして、まぜ太~」
ぷりっつが走ってくる。
「あっきぃ、ナイスタイミングやん!転校生くんら、ようこそー!俺、ぷりっつ!」
まぜ太も小さくうなずく。
「……まぜ太。よろしく。」
ぷりっつがちぐさを見て言った。
「なんや、雰囲気やわらかいなぁ。風っぽい。」
「え。」
ちぐさが目を瞬かせる。
らおを見ると――
なぜか、まぜ太がじっとラオを見ている。
無言のまま、視線が揺れた。
まぜ太はぽつりと言った。
「……焔の匂い。」
「は?」ラオが瞬く。
空気が一瞬だけ、温かくなる。
ほんの一瞬。誰も気づかないくらい。
あっきぃが慌てて笑いながら話を戻す。
「まぜ太、謎ワード出すのやめて!?そしてぷりっつ!二人に部活見せてもらっていい?」
「あたりまえやろ!」
ぷりっつが胸を叩く。
「バスケ部、最高やで!一回見てみ!」
けちゃが嬉しそうに言う。
「ここ、にぎやかで好き~」
その横で、あっとは静かに言った。
「……賑やかなのも、いいね。こういう雰囲気、嫌いじゃない。」
ちぐさは思う。
この学校、
なんだか――
風通しが、いい。
お帰り!
またね
そっけない?
コメント
2件
あのさぁぁぁぁ!!さくちゃん!!あなた天才すぎるのよ…… 表現の仕方大好き🫵🏻💗 あっさくちゃん呼び失礼