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やっほ!
いってらっしゃい!
放課後の校舎は、夕日でゆっくり色づいていた。
窓から差し込む橙の光が、廊下を長く照らす。
「ふぅ……今日もいろいろあったな。」
ちぐさが小さく息をつく。
その隣で、らおが静かに頷く。
「こちらの世界の学校生活、思っていたより騒がしいな。」
その様子を横から覗き込みながら、あっきぃが笑う。
「チグちゃんとラオってさ、ほんと落ち着いてるよな~。見ててバランスいいというか。」
その時――
「おつかれ。」
静かな声が後ろから降ってきた。
振り返ると、赤い腕章をつけた あっと が立っていた。
その後ろでは、桃色の髪の けちゃ が紙袋を抱えてばたばたしている。
「お、あっと!」
あっきぃが手を振る。
あっとは軽く会釈して近づき、
ちぐさたちを見るとふわりと柔らかく笑った。
「今日、学校どうだった?慣れた?」
「うん。なんとか。」
ちぐさが答える。
らおも続く。
「こちらの人間は皆、気さくで助かる。」
「そっか。よかった。」
あっとの声は落ち着いていて、どこか心地よかった。
すると、けちゃが横からひょこっと顔を出す。
「ちぐちゃん、ラオくん、今日も元気そう~。よかったぁ。」
その直後、勢いよく紙袋を落とした。
「……わっ。」
カサッ、と音を立ててプリントが散らばる。
あっとがすぐ膝をつき、拾いながら呟いた。
「けちゃ、大丈夫?もう少しゆっくり持てば落とさないよ。」
「えへへ……つい……よいしょ……」
「“よいしょ”って今必要?」
あっとは笑いながら紙を整える。
ちぐさはそんなやり取りを見て、
(……仲いいな)と心の中で思った。
「あっとたちはどこに行くの?」
あっきぃが尋ねる。
「どこにも行かないよ。 ……一緒に帰る?」
とあっと。
「帰る!」
あっきぃが即答した。
ちぐさたちも自然とその後ろに続く。
けちゃがちぐさの横を歩きながら、ぽつりと言った。
「なんかね、ちぐちゃん……風の匂いするね。」
「……前も言ってたけど、どういう意味?」
「えへ……なんとなく。」
にこっと微笑む。
あっとは少しだけ考える顔をして、
「ちぐさ、特別なことは感じてない?」
と優しく問いかけた。
ちぐさは一瞬だけ目を伏せる。
(……言えない。まだ。)
「特に、ないよ。」
そう答えると、あっとは「そっか」と微笑んだ。
疑っている様子も、追及する気配もなく。
――ただ、優しかった。
その空気に、ちぐさの胸が少しだけ熱くなる。
部活帰り
階段を降りていく途中、
「おーい!ちぐ!!」
黄緑の髪が夕日に反射する。
ぷりっつが廊下の向こうから走ってきた。
「見て見て!今日の練習、あっきぃむっちゃ調子よかったで!
なんかもう“光ってる!?”ってレベルや!」
「ちょ、光ってねぇよ!!」
あっきぃが真っ赤になる。
その後ろから、まぜたがゆっくり現れた。
腕を組みながら、らおを見てぽつり。
「……今日も、炎っぽい。」
「今度は何が見えてる?」
らおが呆れ半分で言う。
「知らん。気のせいやろ。」
ぷりっつが笑って肩を叩く。
すると、けちゃがまぜたの隣に歩み寄り、
「あんまり言いすぎると、ちぐちゃん困るよ~。」
と小声で言う。
まぜたは少しだけ眉を下げる。
「……悪い。」
ちぐさは首を横に振った。
「ううん。大丈夫。」
また、風がひとつ揺れる。
あっとがその揺れを見て、ふっと目を細めた。
けれど、問いは投げず、ただ優しく言った。
「……明日も、案内してあげるよ。なんでも聞いて。」
その声は、夕暮れの光のようにあたたかかった。
校門までの道を歩きながら、
あっきぃが両手を頭の後ろに組んで言った。
「今日さ、転校初日って感じしなかったな。なんかもう、前から一緒にいたみたい。」
ぷりっつが笑う。
「それは多分、あっきぃがおしゃべりやからやで!」
「しゃ、喋ってないと死ぬのか俺は!?」
「死なんけど……喋らないあっきぃは“別人”や。」
「別人!?」
みんなが笑う中――
ちぐさは夕空を見上げた。
――この世界、悪くない。
そう思えたのは、きっと。
今日、みんなと笑えたからだ。
風がまた、少しだけやさしく流れた。
おかえり~
どうだった?
またね~